アスクルにとっての「完全復旧」とは、震災前に戻るのではなく、お客様のために、3.11以前より進化することです。
アスクル株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 岩田 彰一郎
インタビュー実施日:2011/7/1
  • 復旧が進んだ今、感じること
  • “3.11以前より進化するために
  • 「助け合いのきずな」をコーディネート
  • お客様とともに考える「森林のガバナンス」
  • 全国へと広がる「ECO-TURN配送」
  • オリジナル商品の環境対応は99%に

復旧が進んだ今、感じること

3月11日に発生した東日本大震災では多くの方々の命が失われ、今なお深刻な被災状況が続いております。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。私達アスクルも様々なインフラが被害を受けました。特に東京の本社社屋、仙台の物流センターの被害が大きかったのですが、従業員の安全は無事確保することができました。
仙台の物流センターは大きな揺れと津波が襲い、搬送用のエレベーターやコンピュータ、在庫商品まで大きなダメージを受けました。東京の本社もほとんどの機能は失われ、業務の継続は不可能になりました。そんな状況の中で、非常時に必要な物資、毎日使う日用品・消耗品へのお客様からのオーダーは続々と入ってきます。震災直後は、それにお応えできなかったかったことが何より申し訳なく、復旧が進んだ後もその悔しさは消えることはありませんでした。
私達が一番恐れていたのは、お客様との信頼関係が崩れてしまうことです。だからこそ、本社機能を移し、物流センターでは24時間体制をとり、平常時とは違う、被害がなかった大阪名古屋の物流センターから配送を試みただけではなく、刻々と変わる配送の経過報告と、納期の遅れに対するお詫びを毎日のようにお客様へメールやFAXでお伝えしました。そういったことの積み重ねにより、ギリギリのところでお客様との関係性を保っていたような状況だったのです。

震災直後の仙台物流センター

震災直後の仙台物流センター

3.11以前より進化するために

私達はお客様が必要としている商品を「明日届ける」ことを使命として、事業を展開している企業です。それはお客様との大切な「約束」です。その約束をいつも通り、1日も早く守れるようになりたい――この1点に私達の復興に向けたモチベーションはありました。その後、本社社屋は辰巳から豊洲へ移転が決まり、現在(2011年7月)は平常通りの稼働に近づいています。仙台の物流センターは同じ場所で、設備の一つひとつを補強し、立て直し、8月の完全復旧に向けラストスパートに入っています。
もともとアスクルの本社オフィスは、私達のテーマである「社会最適」を反映させた、ユニークなオフィスとして、皆様から評価をいただいていたものでした。それをゼロから再構築する以上、単に震災前に戻るのではなく、新たな価値観を提示して、さらにお客様のために進化しなくてはいけないと考えています。
内側から見れば私達も被災者かも知れません。「それだけ大変なダメージを受けたのだから……」と寛容に考えてくださるお客様もいらっしゃるかも知れません。しかし、物流のインフラを持ち、お客様に商品をお届けする使命を持った企業だからこそ、震災後の厳しい現実を正面から受け止め、これからも反省し続けなくてはいけないと思っています。

新オフィス 豊洲キュービックガーデン

新オフィス 豊洲キュービックガーデン

「助け合いのきずな」をコーディネート

今回の震災を経験して、やはり自分達は自然環境の中で生活しているのであり、企業も社会とともにあるべきだと改めて感じました。私はよく「内なる自分」という言葉を使いますが、一人ひとりの心の中にある日常的な感覚が、ごく自然に世界とつながっている状態こそ、本来の在り方なのだと強く思います。皆がつながることで逆境を乗り越え、より良い社会を目指す。間違いなく今は、お互いが助け合う時代なのではないでしょうか。
2008年に、大企業のお客様を対象とした間接材一括購買サービス「SOLOEL(ソロエル)」という事業を始めましたが、このサービスにはクライアントであるお客様の会があり、そちらに出席させていただくと、企業の方々の間に「これからは間接材も共同で買って、コストや環境負荷の低減も一緒にやっていきましょう」という機運が根づき始めていることを確かに感じます。近年は、競合する企業でもお互いのインフラをうまく利用し合って、ビジネスや環境問題に取り組む例が増えてきましたが、やはりキーワードは「皆で一緒に、助け合って」なのだと思います。私達は、お客様とお客様、企業と企業をつなぐ「ミドルマン」として、これからも様々な立場の方々の社会に対する思いを理解し、皆様の間にある「きずな」をコーディネートするような役割を担っていきたいと考えています。

お客様とともに考える「森林のガバナンス」

1 box for 2 trees」は、昨年スタートさせたプロジェクトですが、これはインドネシア産のアスクルオリジナルコピー用紙1箱(A4サイズ、5000枚入り)をお客様にご購入いただくと、購入代金の一部が2本の植林につながり、紙の原材料の持続的な調達を実現する試みです。開始より約1年が経ちましたが、実際に植えられた木が約1000万本を超えています。植林については、天然林の伐採につながらない、合法で適切な地域であることなどをこちらから条件として出し、インドネシアの現地製紙メーカーに責任を持って実施してもらっています。 このプロジェクトで大切なのは、植林をガバナンスする過程を、お客様に対してきちんと明瞭化することだと思っています。そのためにアスクルのスタッフが現地に足を運び、この条件を順守した植林が行なわれているかを確認し、お客様にお買い上げいただいたコピー用紙が、どこの地域で、どれだけの植林につながったのかをWEBなどでご報告させていただいています。毎年多くのコピー用紙を販売している企業としては、原産地の実態を自分達の目と耳で確認することも重要な責任ですし、このプロジェクトを通じて、環境に配慮することをお客様と考え、一緒に取り組んでいくことがとても重要だと考えています。昨年10月に最初に植えた木が、8ヶ月くらい経って5メートルになった姿を、現地で撮影した写真で見ていただくだけでも、「1 box for 2 trees」に参加いただく意味の一端をお伝えできると思っています。

全国へと広がる「ECO-TURN」発想

再利用可能な折りたたみコンテナやリターナブルバッグによって商品をお届けし、アスクルが回収、再び配送に使用する「ECO-TURN(読み方:エコターン)配送」は、2009年4月から東京エリアでスタートしました。その後、配送エリアを目標に沿って徐々に拡大し、現在では全国の当日配送エリアへと広がっています。この試みは、ダンボールを中心とした梱包材の使用量削減に大きな成果を挙げましたが、これについても震災により一時ストップしてしまいました。震災後、お客様からミネラルウォーターやトイレットペーパーなどの注文が殺到し、それにお応えするために、ECO-TURN配送に代表されるアスクル独自の配送網だけでなく、お客様にご迷惑をできるだけおかけしないための緊急時対応として、一時的に大手配送会社のシステムを活用し、臨時の配送形態でお届けしました。現在は「ECO-TURN配送」も再開しています。

オリジナル商品の環境対応は99%に

オリジナル商品については、2011年3月には95%、2011年に8月までには99%環境対応のものを揃えられる見込みです。安心できる商品を、お客様に無駄なくお届けすることは、私達の社会的責任の第一歩である――という信念は今後も守っていきますので、環境に配慮した商品を開発・選定していく基準をより精査していきます。また、なぜ1%は環境対応にできないのか、その理由もお客様に対して真摯にご説明していくつもりです。

アスクルのCSR(企業の社会的責任)に関する活動は、「アスクル環境方針」をベースに環境中期目標を設定し、それを「達成できたのか、できなかったのか」チェックすることの繰り返しで進捗しています。そして、その結果をお客様にも正直にご報告していますが、直近のデータも見ると、やはり震災の影響が影を落としています。例えば、資源消費量の削減は目標を達成していますが、CO2排出量については震災によってエリア外配送が増加したため、削減目標を達成できませんでした。もちろん、いつまでも震災にとらわれていてもいけませんから、全事業の完全復旧とともに、環境についての取り組みも震災以前、いや、それ以上の目標達成向けて前向きに進めていきます。

アスクルオリジナル 再生紙100%ノート

アスクルオリジナル 再生紙100%ノート

2011年7月1日

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