関わる皆がハッピーとなるプラットフォームでありたい~テクノロジーの未来と、社会、環境課題の解決に向けた取り組み~|アスクル株式会社 代表取締役社長 兼CEO 岩田 彰一郎|インタビュー実施日:2017/6
  • 「人」と「テクノロジー」、両面での取り組み
  • 火災の発生について 防災・コンプライアンスの重要性の再認識
  • テクノロジーの活用による環境・社会課題の解決
  • 未来の現場の可能性
  • 情報の格差とオープンなプラットフォーム
  • 関わりを持ったステークホルダーがハッピーになれる存在になりたい

「人」と「テクノロジー」、両面での取り組み

これからの日本、企業の成長には、女性が働きやすい社会・職場の環境を作ることや高齢者が社会参加するという「人」に対する配慮、また、その表裏一体として、ロボットやAIなどの「テクノロジー」の活用という側面、その両方を考慮することが必要です。

昨年、社内役職者をメンバーとして、重要な社会課題について当社の戦略を検討する「環境・CSR戦略会議」を開催しました。現場と経営陣が一体となって取り組んできた結果、LOHACO定期便サービスやASKUL LOGISTスタッフ約1,000人の正社員化など、成果が形になってきています。
特に、「人」の視点、人材に関する課題は、かねてより、当社にとって取り組むべき最大の課題の一つと認識して、取り組みを続けている分野です。

火災の発生について 防災・コンプライアンスの重要性の再認識

一方、2017年2月、埼玉の物流センター(ASKUL Logi PARK首都圏)で発生した火災では、近隣地域や社会、個人のお客様・取引先様をはじめ、あらゆるステークホルダーの皆様に、大きなご心配とご迷惑をおかけしたこと、改めてお詫びを申し上げます。

出火当時に現場で働いていた約450名の全員が避難できたのは不幸中の幸いでしたが、大規模倉庫にまつわる、様々な課題が浮き彫りになりました。3月には「再発防止委員会」を立ち上げ、防火シャッターの点検や動作確認などを済ませてきましたが、今後、大規模な物流センター・拠点をどう防災・管理していくか。法令等の遵守は前提ですが、消防庁長官調査の結果等を踏まえ、在庫・倉庫の能力に応じた消防能力などの新たな基準への対応や、法令以上の対策の検討も含め、きちんと取り組んでまいります。

また、今回、防火・防災面に加えて、コンプライアンス(法令等の遵守)に則った企業運営・経営の重要性を改めて痛感しました。コンプライアンスは、企業のCSR・経営の「前提・土台」の部分。この土台が崩れると企業の存在・取り組み、あらゆるものが揺らいでしまいます。
ガバナンス、内部統制を見直し、体制構築、再発防止策など、きちんと真正面から取り組んでいくつもりです。

テクノロジーの活用による環境・社会課題の解決

環境面での取り組みについては、環境に関する厳しい未来の現実や課題を皆さんに知っていただき、皆で解決策を一緒に考えていくことが大事だと考え、昨年、お取引先様をお招きして、「アスクル環境フォーラム 2016」を開催しました。同時に、電気自動車や太陽光発電の活用などでCO2削減の取り組みを進めています。足踏みしている部分もありますし自分たちだけで出来る事には限りがありますが、社会に大きな動きを呼ぶきっかけ・一助になればと考えています。
たとえ「不都合な真実」でも、まずきちんと「事実を知る」ことが第一歩。それを他の人に伝えていく。それによって行動が変わっていく。私たちも、事実・事態の重要性を認識してしまった以上、たとえ最初は多少的外れでも、試行錯誤のアクションを起こしていかなくてはならないと本気で思っています。

昨年、「2030年CO2ゼロチャレンジ」を宣言しましたが、省エネ型とはいえまだまだ電力を大量消費する物流センターや、商品をお客様にお届けする際のCO2をどうするか、課題は大きい。ただ、今後に繋がる芽もあります。LOHACOにおける配達サービス「Happy On Time」では、朝6時から夜12時まで1時間ごとの配送時間の指定ができます。配達予定をお客様にお知らせすることで、従来は約20%あった再配達率が、2%程度にまで低減できる。これはお客様だけではなく、配送ドライバーの負担軽減にも繋がります。
お客様の課題をテクノロジーで解決することで、環境面でも現場の労働などの社会面でも貢献できる事例になるもの、と手応えを感じています。

未来の現場の可能性

次の5年、10年を考えたときに、アスクルの成長のカギは、やはりテクノロジーの進化をいかに活用するかにあると考えています。
環境面においても、社会面においても、テクノロジーによって解決できることは多い。
最先端テクノロジー活用の過渡期においては、産業革命と同様に「光と影」の両面が出てくるかもしれませんが、これまで解決できなかった課題をテクノロジーの力を使ってどう解決するか、という視点で、社会のお役に立ちたいと考えています。

例えば、物流ビッグデータが配送ドライバーの活動状況を通じて蓄積・活用されることにより、配送の最適化が進みます。また将来的には、AIが自分のパートナー、バディ、相談相手として、いっしょに課題を解決してくれる頼もしい仲間として、現場をサポートしてくれます。こうした取り組みは、現場の労働環境の改善にも繋がります。
また、音声認識やAIの活用が、モノをお届けするという仕組みと結びつくことで、高齢者や買い物弱者、またそのご家族にとっても利便性の高い、新たなサービスに進化していくはずです。

情報の格差とオープンなプラットフォーム

4年前から、「LOHACO ECマーケティングラボ」の活動を通じて、オープンイノベーションを進めてきました。参加企業は当初の12社から約120社にまで広がっています。メーカーにとっては未知だったお客様の情報を解析できるようになり、これまでになかった価値の提案ができるようになりました。たくさんのメーカーに賛同してこの場に入っていただく中で、「共創」の流れが自然に出てきています。
これこそアスクルらしいスタイルだと自負していますし、オープンを旨とする思想は正しかった、という確信にも繋がっています。

ただし、「情報の格差」という「影」の面には、危機感を持っています。
実は既に日本のデータは「空洞化」しているのではないか、との危惧もあります。様々な端末、サービスを通じた生活情報の多くが、海外のサーバに吸い上げられている現状は、大きな格差を助長する原因にもなると考えています。個人情報には配慮しながらも、データをオープンにして、生活者のために使っていかなくては、大きな問題になります。情報の独占による悪影響、破壊力ははかり知れません。テクノロジーの進化、ビッグデータの進化がゆがんだ社会を生み出しかねないわけです。

ビッグデータを社会の進化のために活用する、その一つの事例に、自分たちがなりたい、という思いを抱いています。

関わりを持ったステークホルダーがハッピーになれる存在になりたい

私たちには、関わりのあるあらゆるステークホルダーを、ハッピーにしていきたい、という意思があります。
これは、当社が大事にしている、「社会最適」という理念に通じるものです。

メーカーにはビッグデータを開放し、オープンイノベーションを通じて、お客様に価値を提供していく。
お届けの面でも、たとえば、AIの力を借りれば、若い配送ドライバーでもベテラン並に稼げる、といった形で、現場の労働環境を改善できるかもしれない。
物流センターにおいては、現場スタッフ向けの食事の無料化等を通じて、定着率や生産性の向上なども図ってきました。スタッフが未来に希望を持って働ける環境を提供したいと考えてきたからです。

ビッグデータやテクノロジーが格差や弊害ばかりを生み出す、という形ではなく、これを活用して、協働・共創できる社会を作りたい。
あらゆるステークホルダーに対して、関わった方がハッピーになるプラットフォームでありたいと考えています。

2017年6月

年度別社長メッセージ
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(*)埼玉県の弊社物流センターにおいて2017年2月16日に発生した火災に関する最新の情報については、ニュースリリース等の情報をご参照ください。