第三者意見 (2017年5月期/2017年9月更新の内容に関して)

後藤 敏彦 NPO法人サステナビリティ日本フォーラム代表理事

後藤 敏彦 NPO法人サステナビリティ日本フォーラム代表理事

認定NPO法人環境経営学会会長、NPO法人日本サステナブル投資フォーラム理事・最高顧問、(一社)グリーンファイナンス推進機構理事、(一社)グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン理事、など。
環境省事業/環境情報開示基盤整備事業WG座長/環境コミュニケーション大賞審査委員/環境報告ガイドライン検討会委員/日中韓環境大臣会議会合(TEMM)付設環境産業会議(TREB)団長など複数委員会の座長・委員を務める。ISO/TC207/EPE国内委員会委員。元GRIボードメンバー。東京大学法学部卒。

リスクマネジメントを含む各規格の経営システムとの一体化を

2月に大きな火災事故が発生しましたが、大きな人身事故に至らなかったことは不幸中の幸いでした。ただ、長年ISO 14001に取り組んできたにも拘わらずリスクマネジメントとして大きな課題を明らかにしたと感じました。
ISO14001はツールであり、ツールの使い方次第で機能するかが分かれます。昨年経営システムとの一体化が見えにくいと感じると書きました。ISO14001:2015版は、リスクと機会、トップの関与、CSRの三本柱である環境・経済・社会というトリプルボトムラインとの親和性など大変優れモノと理解しています。
各種ISOの認証取得は目的ではなく、自社のポリシー、仕組、実績等を外部監査の活用により企業品質をチェックするものです。火災後に見直しをコミットされた「コンプライアンス、ガバナンス、内部統制見直し、体制構築、再発防止など」、まさにISO14001の活用において本社がなすべきことです。ISO14001だけでなくすべての規格について経営システムに有機的に機能させることについて今一度見直しも必要かもしれません。

テクノロジー活用と社会課題の解決について

テクノロジーの活用による環境・社会課題の解決について先鞭をつけられていますが、社会が急速に動いています。イノベーションは常識と非常識の遭遇、即ち異なった価値の出会いから生まれるといわれますが、ニューミドルマンという絶好の位置におられますので常に先頭を走っていただきたい。近々未来にAIの活用も本格化すると思われますが、「三面鏡経営」ということで認識されていますことを、適切な時点で「導入にあたっての倫理規定」に発展される必要性を述べておきます。
新たなテクノロジーの活用で社会課題の解決への取組もコミットされています。日本で最も大きな問題の一つであるにも拘わらず大方に認識されていない子供の貧困について、バリューチェーンを通底した働き方改革等の中で何らかの取組を期待したい。
東日本大震災は除染が一段落し、これからが本当の復興ですので今後とも支援は必要と考えますが、本業で何ができるかもご検討を期待したい。ブラジルの認証農園産品の販売は、SDGs 取組でB to Cというポジションにいる貴社の特徴を生かすものであり、これに限らず多様な分野に広げビジネス機会につなげていただきたい。

中長期のビジョン、シナリオ策定を

環境の取組は素晴らしいの一語であり、昨年7月に自社の環境フォーラムにて2030年CO2ゼロチャレンジを公表されました。SDGsやESG投資の主流化とともに中長期・超長期のビジョンが問われるようになってきております。少なくとも2030~40年くらいまでのストーリー性あるシナリオ策定に着手される必要があると思います。これくらい先の計画は「ありたい姿(aspirational goals)」を策定し、そこからのバックキャストでないと作れません。ロードマップのファーストステップは積上げて作っても、あとはイノベーション計画になるかもしれません。金融安定理事会タスクフォース(TCFD)が出した気候関連財務情報開示勧告にあるシナリオ分析に対応するためにも必要なことと考えます。
社会関連はB to C企業として、取引先とも6次産業化の中で様々なことをなされており高く評価します。ダイバーシティや女性活躍推進も成果を上げておられますが、上記シナリオ策定と連動してもう少し中長期のビジョンや期待する到達点等が示されるともっと良いと思います。

後藤敏彦
NPO法人サステナビリティ日本フォーラム代表理事

第三者意見を受けて

「アスクル環境・社会活動報告」について、貴重なご意見を賜りありがとうございました。
2月に発生した埼玉の物流センター(ASKUL Logi PARK首都圏)の火災では、近隣地域や社会、個人のお客様・取引先様、株主様などあらゆるステークホルダーの皆様に、大きなご心配とご迷惑をおかけしました。
3月に再発防止委員会を設立し、法令等の遵守状況の見直しに加え、在庫・倉庫の能力に応じた消防能力などの新たな基準への対応や、法令以上の対策の検討に取り組んでおり、今後のリスクマネジメントに万全を期してまいります。
また、ISO14001で培った経営システムの運用ノウハウも活かしつつ、コンプライアンスやガバナンスへの取り組みを一層強化していきます。
ビジネスにおけるテクノロジーの重要性が増大する中で、当社においてもAIやロボティクス分野における技術開発が加速しています。こうした技術を倫理面でも正しく利用するためにも、まずは、国内、或いは海外の他社事例などの情報収集を図ってまいります。
働き方改革につきましては、ダイバーシティ経営の推進に加え、グループ会社にて雇用形態の変更による正社員化を進めており、ライフワークバランスの向上や雇用の安定により社員とそのご家族の生活の更なる充実に取り組んでいます。
事業活動を通じた社会課題の解決については、従来より積極的に取り組んでおりますが、今後も継続的に活動の幅を広げてまいります。
中長期的な事業方針に関しましては、既に2030年CO2ゼロチャレンジを掲げていますが、社会的動向や世界情勢、技術トレンドを勘案しながら、2030年以降の方向性につき、検討の準備を進める所存です。

アスクル株式会社
執行役員 CSR・総務本部 本部長
小口 巌