第三者意見(2018年5月期/2018年7-8月更新の内容に関して)

後藤 敏彦 NPO法人サステナビリティ日本フォーラム代表理事

後藤 敏彦 NPO法人サステナビリティ日本フォーラム代表理事

(一社)グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン理事、(NPO)日本サステナブル投資フォー ラム理事・最高顧問、(一社)グリーンファイナンス推進機構理事、認定NPO環境経営学会会長、認定NPOアースウォッチジャパン理事、(一社)環境パートナーシップ会議理事、(一社)レジリエンスジャパン推進協議会理事、環境監査研究会代表幹事、地球システム・倫理学会常任理事、サステナビリティ・コミュニケーションネットワーク代表幹事など。
環境管理規格審議委員会EPE小委員会委員、環境省//情報開示基盤整備事業WG座長・日中韓環境大臣会合(TEMM)付設日中韓環境産業円卓会合(TREB)団長・環境コミュニケーション大賞審査委員会委員・環境報告ガイドライン2018年版 解説書等作成に向けた検討会委員、など。 東京大学法学部卒業。

「持続可能な発展」へのパラダイムシフト、国際的な動きへの参画

人類社会は2015年にSDGsとパリ協定でパラダイムシフトを起こし、世界は着々と動いています。近代始まって以来のパラダイムであった「進歩、成長」は無意識のうちに「無限」を前提にしていました。地球環境の制約はもはや急増する人類の社会・経済生活を支えることは不可能ということが明らかになり、「持続可能な発展」という「有限」を全体にしたパラダイムにシフトしました。 2017年11月、貴社は「RE100」、「EV100」という二つの国際イニシアチブへの加盟を発表されました。2016年7月に、2030年に「CO2ゼロチャレンジ」を目指すことを発表された後、このような国際的な動きに参加されたのは特筆される活動です。日本がパリ協定対応について世界に後れを取っている中ですばらしいご決断であり、事実、その後の日本企業の大きな動きが始まりだしたきっかけの一つになったといっても過言ではなく、敬意を表します。

SDGsの徹底活用、IoTなどのテクノロジーへの取り組みについて

もう一方のSDGs ですが、「我々の世界をかえる、だれ一人とり残さない」という言葉で全世界が取り組んでいます。日本でも多くの企業が取組を開始し始めだしています。貴社は、「関わるもの全てのハピネスの追求」等々、SDGsの観点からも素晴らしい取組をされていることがわかります。しかしながら、17ゴール、169ターゲットとの対比等はなされていないようです。SDGsは世界共通言語であり、その取組は企業価値、ブランドにつながるだけにもったいないと感じました。また、対比することは、何が欠けているか、不足か、どんなビジネス機会につながるのか、などの発見に役立つものと考えています。社会課題をビジネス機会につなげる(アウトサイドイン)ためにもSDGsの徹底活用をお薦めします。

新しいパラダイムでは環境負荷削減というリアクティブな活動もさることながら、新しい社会システムの創出というプロアクティブな取組が主体となると思われます。そこではテクノロジーは大きな役割を果たしますが、AI/BD/Robotics等について先進的な取組をされています。昨年も述べましたが将来に備えて倫理規定を考えておくべきと考えます。

また、ニューミドルマンということで物流におけるIoTの活用が考えられますが、こちらの能力不足なのか語彙検索でもうまく見つけられませんでした。例えば、RFIDはこれから10年以内での社会実装につながることは確実と思われますが、どのように活用され優位な取組をされるのか、情報を期待したい。

「統合思考」の重要性と「統合報告」のすすめ

報告書について、ウェブ報告についての課題を過去にも述べ、改善されていることも読み取れます。取組内容も多岐にわたり、ここまでやるかというくらい豊富です。
しかしながら読者は多様であり、ニーズも異なっていますので、以下には今後の課題を述べさせていただきます。

まずは、統合思考です。非財務情報の財務情報化、財務と非財務の統合思考、は世界の大きな流れです。例えば、金融安定理事会のタスクフォース、TCFDが勧める気候関連財務情報開示などもその流れです。これは言うは易く実行は容易ではありませんが、是非トライしてもらいたい点です。気候関連の取組については、貴社は世界の最先端ではありますが、これと財務情報の統合思考による情報開示が近い将来には必要になります。

それらをストーリー性のある簡潔な統合報告としてまとめることも課題です。
ESG投融資ということを考えると、今の膨大な情報開示はアセットマネージャーには有用ですが、多くの中小のアセットオーナーには手に負えません。統合報告もしくはイグゼキュティブサマリーとしてまとめられることのご検討をお薦めします。

後藤敏彦
NPO法人サステナビリティ日本フォーラム代表理事

第三者意見を受けて

アスクル環境・社会活動報告」について、貴重なご意見をいただきありがとうございました。

弊社は気候変動への対応を経営上の優先課題の一つと考えており、一昨年の「2030年 CO2ゼロチャレンジ」宣言に続き、昨年、「RE100」「EV100」へ同時に加盟しました。
再生可能エネルギーや電気自動車の導入は、どちらも社会インフラの整備状況に左右される取り組みのため、弊社一社だけでは影響力に限りがありましたが、RE100、EV100の加盟に伴って、志を同じくする企業やNGO、更には行政当局とのネットワークが広がりました。今後はこうした関係を活用し、需要家として関係各方面へ積極的に働きかけることで、RE100、EV100の実現を進めてまいります。

SDGsにつきましては、弊社も取り組むべき目標の枠組みと捉えていますが、ご指摘のとおり、「環境・社会活動報告」サイト上での記載が少なく、SDGsという観点からは当社の活動を理解しにくい点は否めませんので、早速改善したいと考えています。
昨年もご指摘いただいているテクノロジーの利用に関わる倫理規定については、昨年以降他社でも制定の動きが活発化していますので、それらの事例を参考に検討を進めてまいります。
「ニューミドルマン」は弊社のビジネス上の立ち位置を端的に表した独自の概念となります。今後このニューミドルマンとしての立ち位置を活かしてテクノロジーによる社会課題の解決を進める所存ですので、来期以降もこの「環境・社会活動報告」サイトで紹介してまいります。

最後に、「今後の課題」として挙げられている「統合思考」と「統合報告」についてです。現在の「環境・社会活動報告」のウェブサイトの構成は、様々な情報を網羅的にご覧いただけるものの、体系的、統合的な観点からは把握しづらいというご指摘を真摯に受け止め、次回の更新時には統合思考を念頭に置いて、エグゼクティブサマリーとしてまとめる等の形で、ステークホルダーの方々により伝わりやすい構成を目指してまいります。

アスクル株式会社
執行役員 CSR・総務本部 本部長
小口 巌
2018年9月