常識を疑え。“LOHACO Water”で
飲料商品のECにイノベーションを。
LOHACO Water
[ LOHACO ]
01/04
2012年にLOHACOがスタートして以来、常に大きな売上を記録している人気商品がある。それは「水」だ。
飲料水としてペットボトルのミネラルウォーターを購入するのは、もはや世間では当たり前のスタイルになった。こうしたペットボトル飲料は重くてかさばるため、自宅まで配送してくれるECとの相性が良く、LOHACOでもお客様からの注文は増える一方だった。しかし、それにともなって大きな問題も生じていた。
お客様が2リットルペットボトルのミネラルウォーターをまとめ買いされる際、同時に他の商品の注文をいただくと、一緒に梱包できないためお客様には別箱でお届けすることになり、配送コストが余計にかかってしまう。ペットボトルのミネラルウォーターの売上が伸びれば伸びるほどコストが膨れ上がり、このままではお客様に新たなご負担をおかけしてしまうほど事態は切迫していた。この課題に立ち向かったのが、ボトル飲料のMDを担当する西木だった。
「ペットボトルのミネラルウォーターの配送コストを下げることは、当時のアスクルにとって絶対に避けては通れないテーマでした。私はそれを託されたわけですが、おそらく物流の構造を根本的に変えなければこの問題は解決できないと考え、何かヒントを掴みたいと西岡さんに相談したのです。」
西岡は、アスクルの物流の改善を担う専門家だ。配送コストを下げるためには、要はまとめ買いされたペットボトルと他の商品を同梱し、ひとつの箱でお届けできればいい。しかし、現状では一緒に詰めてしまうと、ペットボトルの重みで他の商品が破損する恐れがある……。いろいろと議論を重ねるうちに、二人はある発見にたどり着いた。西岡は言う。
「いまアスクルが使用している配送用のダンボール箱が、底面に2リットルのペットボトルがちょうど縦に5本収まるサイズであることがわかったのです。つまり、5本並べてパッケージして箱の底に置けば、その上に他の商品を載せてひとつの箱でお届けできるのではないかと。」
02/04
飲料業界では、ダース単位で商品を管理するのが慣習になっている。ミネラルウォーターのような大型ペットボトル飲料も、通常、箱買いする時は6本入りでパッケージされている。そこに常々疑問を持っていたと西木は言う。
「なぜ飲料はダース単位で商品を販売しているのか、不思議だったんですね。数量を把握するのなら、5の倍数のほうが絶対にわかりやすい。だから5本入りのパッケージはきっと受け入れられると思いましたし、しかもそれが配送コスト削減につながるのであれば、きっと業界の常識も変わっていくに違いない。」
5本入りでパッケージするというアイデアをもとに、さっそく二人は物流センターに赴き、現物でさっそく検証を試みる。物流センターのマネジメントに携わる井上もそこに参加した。
「西木さんと西岡さんが物流センターを訪れ、一緒に配送用ダンボール箱の底にペットボトルを並べてみたところ、ピッタリと5本収まった。ぜひこれは実現したいと、私もテンションが大いに上がりました。」
しかし、井上は物流センターをマネジメントする立場から、ある懸念も抱いていた。
「この5本入りパッケージが実現した場合、お客様からの注文に応じて物流センターの現場スタッフが配送用ダンボール箱に詰めていきます。その作業工程を考えると、このパッケージと配送用ダンボール箱の間に、手が入るぐらいの隙間がないと扱いに苦労するでしょうし、お客様もきっと取り出しにくい。そんな意見を二人に伝えて議論に加わりました。」
検証を重ねていくにつれ、箱の底にペットボトルを寝かせて配置しその上に別の商品を載せることを実現するには、従来のペットボトルよりも横からの力に対し潰れにくい強度が求められることも判明した。西木は言う。
「この企画を実現するためには、いままでにない専用のボトルと、それに合わせた専用の外装パッケージを開発する必要がありました。しかし、大手の飲料メーカーに相談を持ちかけても、実現は難しいという反応ばかり……こうなったら自社で創るしかないと経営層に訴えました。」
経営陣も、この挑戦を価値のあるものだと高く評価し、会社を挙げて動き出した。こうして「LOHACO Water」の開発プロジェクトが本格的に立ち上がった。
03/04
LOHACO Waterの開発はまさに、まだ世の中にないものを生み出すチャレンジだった。専用ペットボトルの開発においては、ミネラルウォーターの需要増を見越して、すでにグループ会社化していた天然水ミネラルウォーターの製造を手がけるメーカーと協業。その折衝にあたった西岡は「まったくのゼロから理想的なペットボトルの成形を企画し、自分たちがベストだと考える形を追求できた。」と語る。また、専用パッケージの開発では、西木が以前に資材調達に携わった時、つきあいのあったダンボールメーカーの力もお借りした。
「このパッケージに耐えうる強度のダンボールを作っていただけないかと相談し、我々が成し遂げようとしていることを説くと、たいへん共感していただいて協力してくださることに。そして、ペットボトル5本を並列に製函する機械は日本に存在しなかったため、それもご協力いただき開発しました。」
こうして外部の専門企業も巻き込みながら、メンバーたちはハードルをひとつひとつクリアしていった。途中からプロジェクトに参加したMDの須野も、この取り組みに非常に意義を感じて臨んだという。
「お客様が本当に望まれている商品を創りたいと、業界の常識にとらわれず開発に取り組みました。このLOHACO Waterのデザインもそう。『テーブルの上にそのまま置いても見映えがするようなボトルがいい』というお客様の声を受けて、キャップの色を敢えてスタイリッシュな黒に。こうしたミネラルウォーターのデザインは青などの爽やかな色を使うのが業界の定番であり、発売後、大手飲料メーカーの方から『あり得ない発想だ』と驚かれました(笑)。また、ペットボトル5本を一列に並べて包装する外装パッケージも、そのままキッチンなどに置いてもインテリアとして機能するデザインに。さらにパッケージの上部にミシン目をつけて簡単に切り離すことができるように設計し、ボトルが取り出しやすい形状を追求しました。こうしてお客様視点で知恵を絞り、前例のない商品を形にしていったのです。」
04/04
「たとえ常識から外れたことであっても、お客様にとって正しいことなら、それを実現しようとする人間をこの会社は全力で支援してくれる。同じ目標をみんなが共有し、社内が一枚岩になる。それがアスクルの強みであり、ここで働く魅力。このLOHACO Waterのプロジェクトはまさにそう。」と西木は言う。
この価値ある商品を一刻も早くお客様に届けたいと、メンバーたちはそれぞれのポジションで奮闘し、最短のスケジュールでプロジェクトを進めていった。物流センターをマネジメントする井上は、現場での梱包でパッケージが破損しないような改良を西木たちに提案し、LOHACO Waterの配送をスムーズに立ち上げるべく、作業工程の調整に追われた。そして現場の井上からの提案を受けた西木も、発売日ぎりぎりまで商品の改善に努めた。そして2016年5月、満を持してLOHACO Waterがリリース。発売後、予想以上の反響があり、すぐに増産が決定。須野は語る。
「お客様から高評価のレビューをたくさんいただき、LOHACO Waterは飲料のECにイノベーションを起こすことができたと感じています。当初の課題であった物流コストも、お客様に商品をお届けする箱の数を大幅に減らすことができ、予定を超えるコストを削減することができました。物流コストが下がれば、よりリーズナブルに商品をご提供できるようになり、お客様にもっとメリットをもたらすことができます。」
以降、現在に至るまでLOHACO Waterは全商品のなかで売上数トップを常にキープしている。そして、その配送を担う物流現場も革新が図られていると西岡は語る。
「LOHACO Waterのペットボトル5本入りパッケージは、重量が10kgを越えるため、それを梱包する現場のスタッフにかなり負担がかかっていました。そうした状況を改善したいと、2017年に埼玉県内に新たに開設した物流センターでは、スタッフの力作業をアシストする装置を導入し、作業負荷を軽減する取り組みも行っています。」
現状に満足することなく、絶えず進化を追い求めていくことこそアスクルの真骨頂。こうした風土のもと、第二、第三のLOHACO Waterが、これからも続々と生み出されていく。
商品の配送コストを抑え、
お客様にメリットをもたらす