生活者とメーカーをつなぐ
LOHACOにしかできないデータの活用を。
-「LOHACO Insight Dive」とはどのような背景から生まれたサービスですか。
もともとLOHACOでは「LOHACO ECマーケティングラボ」(以下、ラボ)という参加企業と一緒にマーケティング活動を研究する取り組みを実施しており、そこでお客様の購買データをはじめとした膨大なデータの利活用をしています。ラボではメーカーにもお客様の購買データを提供し、商品開発やプロモーションに生かすなど、メーカーと一緒にECでの売上拡大に繋がる取組みをしています。一方でメーカーは、生活者のデジタル化に合わせ、自社で運営するサイトで会員情報を集めるなど、自社内のデータを収集統合することで顧客理解を深めたり、直接お客様とコミュニケーションをとるといったデータ活用を推進されています。しかし、メーカーが保有するデータだけでは商品がどういうお客様に購入されたかといった顧客理解までは実現しにくく、プロモーションの効果検証を含め、効果的なマーケティング活動ができないという課題を持っていました。
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-そこでLOHACOで何かできないかと考えたわけですね。
LOHACOは生活者とメーカーをお買い物でつなぐ立場にいるので、この立場をメーカー企業のマーケティング活動にもっと役立てることはできないかと考えたのが「LOHACO Insight Dive」です。ラボの活動と大きく異なるのは、LOHACOのお客様の購買データをメーカーの顧客データと紐づけた点。すでにメーカーが保有する顧客データにあるお客様が、LOHACOでお買い物をしているケースもありますので、そういった方々の購買データや行動データなどを連携させて、メーカーのマーケティング活動に最大限に利活用してもらえる仕組みを作りました。
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個人情報の取り扱いという厚い壁。
前例のないプロジェクトを実現させる。
-今までにない新しい取り組みですので、個人情報の取り扱いについても非常にデリケートな部分ですね。
私は法務としてこの案件に関わりましたが、通常の契約相談は、取引の内容を確認させてもらった上で「こういうリスクがありますね」「リスクヘッジするためにこういった契約条件にしましょう」という流れで仕事が進みます。ですが、「LOHACO Insight Dive」の場合は、取り組みの目的や考え方、イメージでさえ、梶井さんとの1回目のミーティングでは理解しきれませんでした。「そもそもこれはどんなサービスなの?」って(笑)
私も同じ感覚でした(笑)
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ラボは、LOHACO内で得られたデータを元に、メーカーの商品やプロモーションをEC上でどのように進化させるかという目的を基本としてきました。しかし、今回のプロジェクトは、LOHACOのデータをメーカーのデータと紐付けるという点で異なり、その連携したデータをメーカーのマーケティング目的に使っていただくものです。データを連携する仕組みの理解から始まり、何よりもそのデータの活かされ方がこれまでと異なることに対してマインドセットをする必要がありました。そして、その仕組みは法的に妥当なのか、データの利用範囲はどうあるべきかなど、様々な角度から自問自答してリスクヘッジをしつつ、サービス設計をサポートしていきました。
それこそ、データを自由に使ってくださいという形で渡してしまうと、最終的に「お客様にとって価値になる」という目的とかけ離れた利用に繋がることも考えられます。プロジェクトの目的に合うマーケティング活動はどういうものか事細かく議論しながら、除外条件などを規約に盛り込んでいきました。
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私の在籍するセキュリティマネジメント部門では、お客様視点でプライバシーポリシー上どのようにわかりやすく表現できるのかという観点からの検討が中心となりました。たとえば、一般的な話で病院の先生が患者さんへ行っているインフォームド・コンセントのように、お客様から提供されるデータがどこで、どのように利用されるのか、きちんと説明しご理解いただくことが、「LOHACO Insight Dive」では非常に重要で、どのようにサービスに透明性を持たせて同意をいただき、いかにデータを利活用していくか、についてはまだまだ進化の余地があると思っています。
「そもそも個人情報って何だろう?」っていう議論もしましたね。
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お客様からいただく情報を精査しながら、「これは個人情報に当てはまるからお客様の再同意が必要だね」とか、「この情報の提供は本当に必要なのかな?」ということを議論しつつ、本山さんや外部の弁護士にも協力いただき、ひとつひとつ着実にクリアにしていきましたね。
「できない」という選択肢は
誰も持っていなかった。
-前例のないプロジェクトに取り組むにあたって、当時の意気込みはどのようなものだったのですか?
最初に話を聞いた時は、「これは、越えなければいけないハードルがたくさんありそうだな…」と感じましたが、逆をいえばこれまで培ってきた仕事のスキルをフルに発揮する絶好の機会です。姿勢としては腕まくりをするような、そんなスタンスでした(笑)。
私はそれまでデータマーケティングの世界にはそれほど関わっておらず、自分がどんな関わり方をするかイメージが湧いていなかったので、「漠然と今までにない、新たな発想ですごいことをやろうとしている」ということは理解しましたが、やや客観的な目線で話を聞いていました。ただ、梶井さんの話を聞いているうちに「膨大なデータをどのような視点で整理し、メーカーに価値あるデータの提供をしていくのか」、「LOHACOのデータをメーカーと共有することが、お客様のためにすごく役立つ可能性を秘めている」ということがわかるにつれ、どんどん関心が湧きましたね。
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依頼案件の中には法的に無理だと助言せざるをえないこともあり、今回の件も当初は行政の指針の観点も含め契約条件などのイメージが湧かなかったのですが、メーカーはもちろん、お客様に対してもプラスの価値を提供できるサービスであり、LOHACOが今後さらにその存在価値を高めるきっかけにもなるため、企画に対する高揚感がありました。そして、梶井さんの「このプロジェクトは絶対に前に進める」という強い意志も伝わってきたので、「できるできない」ではなく「どう実現するか」という検討にフォーカスできました。
本山さんもおっしゃるように「やるんだ!」という意気込みで、最初から話を進めていたのですが、会社を守る立場にある法務やセキュリティからするとリスクを避けるために容易に進められないプロジェクトだったと思います。一方で、このサービスを社会最適のために実現させたいという思いは一致していたので、何度も打ち合わせをして一緒に考えていただきながら前向きな議論ができたことで、とても楽しく進められました。
梶井さんが私の席に向かってくるのが日課になってましたからね(笑)
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世の中のデータ活用の
スタンダードを変えるプロジェクトに。
-今回のプロジェクトに携わってみて、どんな感想を持ちましたか?
アスクルは新しいことにチャレンジする風土がありますが、今回の「LOHACO Insight Dive」は、そんなアスクルらしさが出たプロジェクトだったのではないかと思います。私自身で言うと、「考えたことがないことを考え、分からないことが分かっていく」面白さもあらためて感じました。そして、データを利活用することがどういうことなのか、あるいは社会最適を重視するアスクルがどういう存在であるべきなのかといった広い視野を持って深掘りしていく貴重な機会でもありました。
私も同じような思いですね。以前から「データは誰のもの?」ということは漠然と考えていて、今回のプロジェクトはそれをより深く考えるきっかけになったと思います。お客様の情報がどこへ提供され、どのような目的でどのように利用されるのかをきちんと伝えることはやはり大切だと再認識しました。また、今後はデータをどのように活用するかという案件も増えてくると思っていて、このプロジェクトを機にデータサイエンスのセミナーを受けに行ったりしました。そういう意味でも自分の引き出しを増やす、良いきっかけになったと思っています。
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私自身、データにはすごく価値があると考えていて、使い方次第で可能性も無限大に広がっていくと思います。それを社会最適のために使うことは、とても意義深いことですし、データを保有するEC事業であり、データのオープン化を掲げるアスクルとして、そうあるべきだと思って今回のプロジェクトを推進しました。お話ししたような個人情報の取り扱いはリスクを伴うことなので、ハードルの高い領域なのですが、LOHACOの購買データを、日本の主力産業である製造業のマーケティング活動に使ってもらえるということは、今後の世の中のデータ活用のスタンダードを変えていくきっかけになっていくのではないかと感じています。プロジェクトをスタートしてまだ1年ですが、テスト期間を経て少しずつですが前へ進んでいます。メーカーにとって価値のあるものになり、最終的にはお客様に喜んでいただけたという、そんな事例をたくさん作っていきたいと考えています。
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