更新日:2025年3月27日
水害対策の基本!オフィス・事務所で必要な備えとは

近年、大雨や台風による水害リスクが高まり、企業施設の安全確保は急務となっています。自社の防災について、不安を感じる経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、オフィスや事務所で必要な水害対策の基本を解説し、従業員の安全と事業の継続を支える具体的な方法をご紹介します。
オフィス・事務所には水害対策が必要?
日本では例年、水害が各地で発生する状況が続いています。特に過去10年間(平成23年~令和2年)では、全国の市町村の約98%で水害・土砂災害が発生し、そのうち57.7%の市町村では10回以上被害に遭いました。近年、大雨や豪雨による被害が増加しており、対策は国や家庭だけでなく、企業にも求められる重要な課題となっています。
日本の多くの都市は、地盤沈下や天井川の影響を受け、海や河川の水面より低い場所に都市が形成されており、洪水のリスクが高いのが現状です。さらに、国土の7割が山地や丘陵地で占められ、急な傾斜による川の水量増加で洪水が発生しやすい環境にあります。
このように自然災害のリスクが高い日本では、企業が自らの地域のリスクを認識し、災害への備えを進めることが不可欠です。こうした取り組みが、企業の継続的な経営を支える鍵となります。
参照:国土交通省「水害リスクの高い日本」
オフィス・事務所での水害対策
オフィスや事務所は、従業員の安全確保や事業継続の要となる場所です。以下では、具体的な水害対策の方法や備えるべきポイントについて解説します。
ハザードマップで危険度を調べる

水害対策として、まずはハザードマップでオフィスや事務所の立地とその場所の水害リスクを確認することが重要です。ハザードマップを活用すると、地域ごとの水害リスクを把握できます。国土交通省が提供する「ハザードマップポータルサイト」では、各自治体が作成したハザードマップを検索できる「わがまちハザードマップ」があります。このサイトでは、住所を入力するだけで身の回りの災害リスクが簡単に調べられます。
また、各地の避難場所や避難経路もチェックできます。企業はこれを参考に、従業員が安全に避難できる経路を計画し、浸水リスクが高い場所では適切な防災対策を講じることができます。また、新たに事業所を設置する際は、経営上の利便性も踏まえて、災害リスクの少ない地域を検討することが重要です。
参照:国土交通省「わがまちハザードマップ」
従業員の避難場所を確認しておく
ハザードマップで地域の水害リスクを調べた後は、従業員が避難する場所を確認することが大切です。業務時間中に水害が発生し、避難が必要になる場合を想定し、従業員全員に事前に避難ルートを周知しておきましょう。また、避難指示が出ていなくても、危険を感じた際には速やかに安全な場所へ避難することが重要です。
避難経路を確認する際は、氾濫の恐れがある河川や浸水しやすい低地を避けるようにします。実際にルートを歩いて、危険箇所がないか確かめることも欠かせません。さらに、普段利用する道が水害で使えなくなる可能性を考慮し、複数の避難ルートを準備しておくと安心です。
また、各従業員には自宅までの避難ルートを確認し、周囲の状況を把握し定期的に見直すよう促しましょう。
安否確認の仕組みを作る
企業は水害をはじめ、地震や火災などさまざまな災害に備え、効率的な安否確認体制を整えることが求められます。災害発生時、安否確認システムがあれば、従業員の安全をすばやく正確に把握でき、事業の早期復旧にも役立ちます。
このシステムは、災害が起きると自動でメッセージを送信し、従業員の安否や周辺の被害情報を集約します。電話やメールでの連絡は混乱時にスムーズに機能しない場合が多いため、専用システムの導入が効果的です。従業員の安否確認にとどまらず、施設の被害状況の把握や避難指示の発信といった機能も備えています。
これにより、連絡の漏れや集計ミスを防ぐことが可能で、緊急時の担当者の負担が軽減されます。企業全体のリスク管理能力を向上させるとともに、迅速な状況把握と適切な対応を可能にする安否確認システムは、安全対策の要です。
水害対策用品を用意する
水害の被害を最小限に抑えるには、対策用品を事前に準備しておくことが大切です。例えば、止水板や土のう、水のうといったアイテムは、洪水や内水氾濫、高潮などによる浸水を防ぐのに欠かせません。適切に活用することで、水害リスクを大幅に軽減できるため、事前準備を怠らず、早めに安全確保に努めましょう。
止水板
止水板は、建物内への水の侵入を防ぐための重要な防災アイテムです。特にオフィスのエントランスに設置することで、内部への浸水防止への効果が期待できます。軽量で重ね置きできるタイプは扱いやすく、災害時にすばやく設置できるのが、メリットです。
また、普段の保管も簡単で場所を取らないため、エントランス付近に常備しておくと安心です。浸水のリスクが考えられる時には、早めに設置することで被害を抑えられ、安心感も得られます。手軽な止水板は、浸水防止対策として揃えておきたい防災対策の1つです。
土のう
水害対策として広く知られている「土のう」は、浸水を防ぐために重要な役割を果たします。ホームセンターなどで簡単に手に入る土のう袋は、普段から備蓄しておくことで突然の大雨にも対応可能です。
一般的な土のうは土を入れて使いますが、「吸水土のう」という水を吸収して重さを増すタイプもあります。簡易吸水タイプの土のうは、平らな布袋の状態で保管できるため、場所を取らずに備蓄できるのが魅力です。
建物内への浸水を防ぐためには、土のうを積むことで水や土砂の侵入を防ぎ、被害を最小限に抑えられます。使用する土のうは、誰でも簡単に扱えるものを選ぶことが重要です。あらかじめ準備しておくことで、いざという時に迅速かつ効果的に対応できます。
水のう
水のうは、ポリ袋などに水を入れて作成した防水アイテムで、土のうの代わりとして使用されます。水を使用するので、土のうよりも手軽で簡単に準備できます。段ボールと組み合わせてブルーシートで包むことで、より強力な防水壁を作ることが可能です。
しかし、ポリ袋や段ボールの強度が不十分だと、流木などで破損する恐れがあるため注意が必要です。近年では、消防ポンプや消火栓を利用して大量の水のうを短時間で設置できる、大型の水のうも販売されています。特に工場や倉庫など、大きな出入口のある施設で迅速な浸水対策として役立ちます。
水害などの災害を見越してのBCP対策も重要

BCP(事業継続計画)は、水害などの自然災害に備える重要なリスクマネジメントの一環です。BCPとは、緊急事態が発生した際に事業を継続し、早期復旧を可能にするための計画で、防災活動とあわせて取り組むべきものです。この計画には、平常時からの準備や訓練、緊急時の対応手順が含まれます。
令和2年7月豪雨や令和元年東日本台風など、近年発生した大規模な水害では、多くの企業が深刻な被害に遭いました。気候変動による降雨量の増加や水害の頻発化が予測される中、BCP対策は、事業の継続性を確保し、被害を最小限に抑えるために欠かせません。
また、BCPの導入は、顧客からの信頼を守り、企業価値の向上にもつながります。今こそ、BCP対策を積極的に推進し、災害に強い事業基盤を築くべきです。
防災グッズ・備蓄品を保管する
防災対策として、防災グッズや備蓄品を普段から準備し、すぐに取り出せる場所に保管しておくことが大切です。災害時にはスーパーやコンビニが営業停止になる可能性があるため、特に食料や飲料水を最低3日分備蓄することが推奨されます。
備蓄品には、食料や水だけでなく、衛生用品や情報収集に必要なアイテムも含まれます。オフィスでは、簡易トイレや歯ブラシ、ラジオの準備が欠かせません。さらに、解熱鎮痛剤、包帯、消毒液などの薬類を備えておくと安心です。
企業の場合、東京都の条例により、従業員の3日分の備蓄を確保することが求められています。備蓄品の保管場所は、取り出しやすい位置を優先しながら、分散配置や消防法の遵守なども考慮することが必要です。災害時の従業員の安全と事業の継続に、適切な備えが必須です。
参照:東京都「東京都帰宅困難者対策条例 第二章 第七条2」
データのバックアップを取る
水害によるITインフラの被害を防ぐために、データのバックアップは欠かせません。データが失われれば、企業は多大な損失を被る可能性があるため、日常的にバックアップを行い、被害を最小限に抑えることが重要です。
データの保護とバックアップは、企業にとって避けられない課題です。サイバー攻撃やシステム障害、自然災害などによるデータ損失は、事業に深刻な影響を及ぼします。このリスクを軽減するため、多くの企業が採用しているのが「3-2-1 ルール」です。このルールでは、次の3つを実践します。
- 3つのデータコピーを作成
- 2つの異なるストレージメディアに保存
- 1つを遠隔地に保管
これを実行することで、データ損失のリスクを大きく減少させることができます。
特に、水害や停電といった緊急事態に備え、バックアップを1つは別の場所で保管することが重要です。ローカルバックアップだけでは、システム復旧が難しく、事業を継続することが困難になる場合があります。遠隔地へのバックアップを取り入れることで、災害時の影響を最小限に抑え、迅速な復旧が可能になります。
まとめ
災害を予測するのは難しいですが、水害は気象情報の精度向上により、比較的的確な予測が可能です。オフィスや事務所では、何よりも従業員の命を守ることを最優先に考え、水害対策を徹底する必要があります。企業が率先して対策に取り組むことは、被害の軽減だけでなく、事業の継続、そして地域社会への貢献にもつながります。
<参考>


