更新日:2025年4月24日
食料備蓄、防災のために何が必要?ストックにおすすめの食品を紹介

企業にとって、災害時の食料備蓄は欠かせません。本記事では、長期保存が可能で栄養価の高い非常食を紹介します。飲料水やアルファ米、フリーズドライ食品、缶詰、アレルギー対応食品など、備えておきたい食料を厳選しました。非常時に備えるために必要な量や管理のポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
備蓄におすすめの食料・非常食とは?
災害時や緊急時に備えた備蓄は、従業員の安全を守るために必要不可欠です。特にオフィスでは、長期間保存できる食料や非常食を選ぶことが重要です。ここでは、保存性や栄養価に優れたおすすめの食料を紹介します。
飲料水
長期保存可能な飲料水として、ペットボトル入りの保存水が最適です。一般的なミネラルウォーターは賞味期限が2~3年ですが、保存水は高温殺菌処理を行い、無菌環境で密封されているため、5年以上、長ければ15年までの保存が可能です。このため、非常食としても利用でき、アルファ米やインスタント食品を調理する際にも役立ちます。日本で発売される保存水の多くは、飲みやすい軟水で、普段飲み慣れている水と変わらないため、非常時でも抵抗なく飲めるでしょう。
保存水のサイズには500ミリリットルと2リットルのものなどがあり、2リットルサイズはコストパフォーマンスがよいですが、非常時にコップが使えない状況では飲みづらくなる可能性もあるため、500ミリリットルの小型タイプも準備しておくことをおすすめします。また、短期間で飲み切れるために細菌の繁殖を抑えられる点や、非常時に配布しやすいという、小型タイプならではのメリットもあります。事前に十分な量を準備し、賞味期限や保存方法にも気をつけて備蓄しておくことが重要です。
アルファ米
アルファ米は、非常食として人気の高い保存食で、簡単に調理できるのが魅力です。お湯や水を加えるだけで、炊きたてのご飯を楽しめます。通常、アルファ米は5年程度の長期間保存が可能で、災害時に非常に便利です。
種類も豊富で、白ご飯のほか、ドライカレーや混ぜご飯、チキンライスなど、さまざまなメニューが揃っています。保存時には軽量で場所を取らず、パッケージにはスプーンが付属しているものもあり、食器の洗浄も不要です。非常時には貴重な水を無駄にすることなく、手軽に栄養補給ができるので、備蓄用食料として非常に優れています。
フリーズドライ食品
フリーズドライ食品は、急速冷却後に真空状態で乾燥させることで、長期間保存を可能にした食品です。特にお湯を注ぐだけで食べられるスープやみそ汁、麺類は、非常時に便利なだけでなく、心温まる食事として活用できます。これらは冷えた体を中から温める効果があり、緊急時でも手軽に栄養を摂取できる点が魅力です。
また、栄養価の高いフルーツや野菜のフリーズドライもあり、特にドライフルーツは、非常時に不足しがちなビタミンや食物繊維を補うために有効です。ただし、ドライフルーツは賞味期限が長くても1~2年ほどと比較的短いため、長期保存可能なほかの食品と一緒に保管する際は注意する必要があります。フリーズドライ食品の保存方法や賞味期限をしっかり確認し、計画的に備蓄することが重要です。
乾パン(非常食用クッキー)

非常食用のクッキーや乾パンは、水やお湯を必要とせず、すぐに食べられる点が大きな特徴です。これらの食品は、保存性が高く、長期間の備蓄に適しています。特に、ビスケットやクッキーは乾燥しており、湿気を避けて保管できるため、長期保存に最適です。食べやすく、手を汚さずに摂取できるため、災害時や非常時に重宝します。また、腹持ちがよく、エネルギー源としても優れており、1袋でも十分なカロリーを補給できます。温度変化に強い商品も多く、自動車内での保管にも最適です。
レトルト食品
レトルト食品は、調理不要でそのまま食べられるタイプも多く、非常時に特に便利です。スープやおかゆ、カレーなど、バリエーションが豊富で、栄養面でも充実しています。特に、レトルト食品は長期保存が可能で調理が不要なタイプも多く、非常時に便利です。多くの製品が、保存期間が約3年と長く、備蓄にも向いています。常温保存でき、電子レンジや湯煎で簡単に温められる点も魅力です。また、近年は加熱せずにそのまま食べられるタイプも登場しており、非常時でも簡単に食べられるという利便性が高まっています。
缶詰食品

缶詰食品は、長期間保存できるうえ、栄養価が高く、日常的な食事に近い味わいが楽しめます。常温で保存でき、電力が必要ないため、災害時でも安心して使用できます。調理せずに食べられるため、時間のないときにも便利です。また、栄養価が高く、旬の食材を保存できるため、日常的な食事に近い味わいを楽しめます。さらに、缶詰は密封されており、品質や味が長期間保たれるため、非常時に心強い選択肢となるでしょう。種類も豊富で、魚や肉、野菜、果物など多彩な品目が揃っており、食事のバリエーションを豊かにできます。非常時でも飽きることなく、栄養バランスの取れた食事をとれる優れた食品です。
アレルギー対応食品
防災時に備えた食品の備蓄は、従業員の安全を守るために非常に重要です。ただし、従業員の体質を考慮せずに非常食を選ぶと、非常時に従業員がアレルギーを引き起こしてしまう可能性もあるため、選定には十分注意する必要があります。
災害時、アレルギー反応が命に関わる場合もあるため、事前に従業員からアレルギーに関する情報を集め、対応できる非常食を準備するようにしましょう。たとえば卵アレルギーを持つ従業員がいる場合は、通常のクッキーのほかに米粉クッキーを用意しておくなど、アレルギーに配慮した食品を備蓄することで、避難中も安心して生活できます。
企業が備蓄するべき食料は最低3日分
企業は、災害時に従業員が事業所内で安全に過ごせるよう、最低3日分の食料や水、毛布などの備蓄を整えることが求められています。これは、内閣府のガイドラインにも明記されています。ここでは、必要な飲料水と非常食の量について紹介しますので、備蓄の参考にしてください。
参照:内閣府「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン」
飲料水の量
飲料水の備蓄は、災害時に必要不可欠な準備です。従業員1人当たり、1日に必要な水の量は約3リットルとされています。そのため、最低3日分の飲料水を確保するためには、1人当たり9リットルの水を備蓄しておくことが重要です。自然災害によるライフラインの停止や、救援物資が届くまでの時間差を考慮すると、事前の備えが欠かせません。また、ペットボトル入りの水は、約5〜10年の長期保存が可能なものを選びましょう。軟水タイプが飲みやすいので選ぶ際には注意が必要です。保管場所は、直射日光を避けられる涼しい場所を選びましょう。
非常食の量
非常食は、災害時の食料不足に備えて必ず準備しておくべき重要なアイテムです。従業員1人当たり、1日3食として3日分、最低9食分の備蓄が必要になります。主食としては、乾パンやアルファ米が代表的です。これらは加熱や調理が不要で、ライフラインが停止してもそのまま食べられ、腹持ちがよい点でも、非常時に適しています。
ただし、主食だけでは栄養が偏る恐れがあるため、たんぱく質を摂取できる缶詰や、ビタミンや食物繊維を補える野菜ジュースなども備蓄すると安心です。また、アレルギー対応食品や栄養補助食品を用意しておくと、より万全といえます。いずれも、直射日光を避けて涼しい場所で保管しましょう。
食料備蓄量の計算方法は「1人1日当たりの必要量×人数×日数×110%」
食料備蓄量を計算する際は、「1人1日当たりの必要量×人数×日数×110%」を目安にします。最低限の量に加えて10%余分に用意し、予期せぬ事態に備えることが大切です。企業には、必要な量を計算したうえで、余裕を持って備蓄を行うことが求められます。
ここでは100人の従業員がいるものとし、必要な食糧備蓄量の計算を行ってみましょう。
飲料水の量の計算
まず、飲料水は1人当たり1日3リットル、これを3日分、そして100人分用意する場合、必要な飲料水の量は以下の計算の通りです。
100人分の飲料水量:3リットル×3日×100人×110%=990リットル
次に、使用するペットボトルのサイズ別に計算します。
2リットルペットボトルの場合:990リットル÷2リットル=495本
500ミリリットルペットボトルの場合:990リットル÷0.5リットル=1,980本
このように、必要な飲料水の本数をペットボトルのサイズに応じて計算し、余裕を持って備蓄量を確保します。
非常食の量の計算
非常食は1人当たり1日3食分が必要です。3日分の非常食を準備する場合、必要な100人分の非常食量は以下の通りです。
100人分の非常食量:3食×3日×100人×110%=990食分
このように、備蓄しておくべき食料量は事前に計算で求めることができます。企業の規模に応じて、非常事態が起こる前に十分な量を確保しておきましょう。
【注意】必ず余裕分を準備する
備蓄量を計算する際に「110%」を目安としているのは、予期せぬ事態に備えて余裕を持たせるためです。この余裕分は「共助」の観点から非常に重要です。災害時には、自社の従業員だけでなく、顧客や取引先、施設利用者、さらには周辺の帰宅困難者も保護する可能性があります。
東京都が推奨する「備蓄の10%ルール」では、これらの外部の人々を考慮して、最低10%の追加備蓄を推奨しています。これは、地域や企業が互いに助け合う「共助」の精神を反映したものです。実際、東日本大震災では、企業が帰宅困難者を受け入れ、食料を提供する場面も多く見られました。企業がこの共助の意識を持つことで、地域貢献にもつながります。非常食セットの準備とともに、外部の人々への配慮を備蓄計画に組み込みましょう。
参照:内閣府「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン」
企業が防災用の食料を備蓄・管理する方法
ここでは、企業が実践すべき防災食料の備蓄と管理の方法を紹介します。災害時に迅速に対応できるよう、日頃からしっかりと備えを整えておくことが重要です。
1. 必要な量を把握する
災害時の備蓄品は、社員だけでなく、アルバイトや派遣社員、さらには来客を想定した量を計算し、準備することが重要です。また、余裕があれば、非常食の選定時には栄養価にも配慮しましょう。特にビタミンやミネラルは不足しがちで、体力や精神的な負担軽減に役立ちます。必要な品目をリスト化し、定期的に見直して更新することで、災害時に適切な対応ができます。
2. 保管場所を確保し従業員に周知する
非常食や防災備品は、災害時に迅速に取り出せる場所に保管することが重要です。避難場所近くの安全な場所に、転倒や浸水を防ぐ対策を施したキャビネットやロッカーを設置しましょう。消防法に違反しないよう、機械室やスプリンクラー設備付近には保管しないことが重要です。また、ビルが複数階に分かれている場合は、保管場所を分散させ、従業員全員に周知しておきます。災害時に担当者が不在でも、誰でも迅速に行動できる体制を整えましょう。
3. 賞味期限を迎えるまでの処分方法を決める
備蓄した非常食が賞味期限を迎える前に、効率的な処分方法を決めておくことが重要です。ローリングストック法を採用し、古い食品から順に消費し、不足分を補充することで賞味期限切れを防げます。また、賞味期限が迫った場合は、社内で試食を行うことで、非常食の品質を確認しつつ防災意識を高める機会にもなります。万一、廃棄が発生しそうな場合は、フードバンクへの寄付を検討することでフードロスを削減し、社会貢献にも役立つためおすすめです。
4. 必要な食料を発注する
食料の発注においては、量や保管場所、処分方法を明確に決定したうえで行うのが基本です。その際、品質や安全性にも十分な配慮が必要です。国民生活センターの調査では、長期保存される備蓄食品に関して、安全性と品質管理の重要性が強調されています。安心して備蓄をするために、信頼できる品質の食料品を発注するようにしましょう。
参照:国民生活センター「災害に備えた食品の備蓄に関する実態調査」
まとめ
企業の防災対策には、飲料水や非常食の備蓄が欠かせません。飲料水・食料品は十分な日数分を確保し、非常食にはアルファ米や缶詰、フリーズドライ食品、レトルト食品などを備えておくと安心です。また、アレルギー対応食品や栄養バランスを考慮した食品も用意しましょう。備蓄量は、従業員数や必要日数を考慮し、余裕を持って計算することが重要です。


