更新日:2024年11月28日
アース線って?正しい取り付け方法や安全に使うための注意点を解説

アース線の取り付けは、電気機器を安全に使用するためには必要不可欠です。しかし、アース線が本当に必要な場所や正しい取り付け方を知っている人は少ないです。この記事では、各種アース線の取り付け方を紹介します。アース線の接続先がない場合の対処法・取り付け時の注意点もわかるので、参考にしてください。
アース線とは?
アース線とは、 電気製品に不具合が起き漏電した際に、外部の地中へと電気を逃がすための線です。家電の電源プラグに付いている黄色や緑の線、電子レンジなどの家電製品の背面から伸びている細めのコードをイメージするとわかりやすいでしょう。
材質は通常、導電性の高い銅やアルミニウムが使用されます。日本では電気事業法などで規定されており、安全基準の一環として設置が求められることがあります。
アース線の主な役割と設置が必要な場所について、解説します。
アース線の役割
アース線の主な役割は、漏電による事故を防止することです。アース線は、電気製品を外部の地中やアース棒(地面に設置された金属製の棒)とつないで、漏れた電気を逃がします。電気機器のトラブルなどによる漏電被害を、最小限にする役目を担っているのです。
また、アース線には、電磁波を抑制する役割もあると考えられています。アース線は、電磁波を完全に遮断するわけではありません。しかし、電気回路内の電位差をアース線が少なくすることによって、電磁波抑制の効果が期待できます。電磁波の影響によるとされる、体調不良などの軽減に寄与するでしょう。また、電子機器の誤作動を誘発するノイズを削減する役目も果たしています。
アース線が必要な場所
以下のような一定の条件の場所で、アース線の設置は求められます。
- 水回りや湿気の多い場所
- 落雷などのリスクがある屋外
- 工場や医療施設、精密機器が使用される場所
洗面所や給湯スペースなど、水を使う場所や湿気の多い場所では、水分が電気の流れに接触しやすく、漏電の危険性が高いです。これらの場所にある冷蔵庫や電子レンジなどの電気製品にはアース線を接続して、漏電被害を防ぎましょう。
また、見落としがちですが、落雷のリスクや雨水がかかる恐れがある、屋外の電気製品にもアース線は必要です。自社の周囲にガーデンライトや屋外コンセント、防犯カメラなどの電気製品がないか確認し、対応しましょう。
医療施設や精密機器が使用される場所、工場などでは、特にアース線の設置が求められます。医療施設の機器類は人体に直接触れるものが多く、漏電を徹底して防がなければなりません。また、医療機器をふくめ、精密機器が使用される場所では、誤作動防止策としてもアース線設置が有効です。工場などの大量の電力が使用される場所でも、アース線を適切に設置し、漏電による火災を防ぐ必要があります。
アース線を取り付けないリスク
設置が必要であるにもかかわらず、アース線を設置しない場合には、
- 感電・火災の危険性
- 電磁波や静電気による健康被害
といったリスクが高くなると考えられます。
感電・火災の危険性

電気製品を使用している際、内部の電気回路が故障したり、絶縁が破れたりすると、漏電が発生します。アース線を設置していないと、漏電が発生した場合、電流を外部へ逃がすことができません。そのため、電気製品に触れた人の体に電気が流れて、感電事故を起こす危険性が高まります。例えば、濡れた手で冷蔵庫のドアに触れて感電する、などのケースが考えられます。
また、漏れた電気が周囲の可燃物に触れ、火災を引き起こす危険性もあります。古い配線や過負荷状態の電気機器を使用している場合には、火災のリスクはさらに高くなります。
電源プラグとコンセントの間にホコリがつもっていれば、トラッキング現象という、漏電による発火も起こりえます。トラッキング現象によって導電性の高い経路が形成され、この経路が短絡(ショート)して発火するのです。アース線の設置により電気の流れを逃がすことができていれば、感電や火災事故のリスクを大幅に下げられます。
健康にもリスクが?電磁波や静電気の影響
電気製品からは、多かれ少なかれ電磁波が出ています。冷蔵庫や洗濯機などでは低周波、電子レンジなどからは高周波の電磁波が発生します。これらの電磁波を過剰に浴びると、健康被害へ発展することがあります。長期間にわたって電磁波を浴びた人は、頭痛や疲労感、睡眠障害などの症状が出る恐れがあり、危険です。アース線には、電磁波を抑制する働きがあると言われています。アース線で電気を地中に逃がすことによって、特にパソコンなどの電子機器の電磁波を弱めることが可能です。
また、アース線は、帯電した電気を逃がすことにより、静電気を中和することが可能です。静電気は、皮膚のかゆみやアレルギー症状の悪化、自律神経へと影響を及ぼすと言われています。アース線を接続していないと、静電気が中和されず、健康被害などのトラブルが防げません。
アース線の正しい取り付け方法
アース線の取り付け方法は、アース線の形状や端子によって異なります。取り付けが必要な機器のアース線や、アース端子がどのタイプなのか、確認しましょう。
ネジ式アース線の取り付け方
ネジ式とは、コンセントのアース端子(アース線の差し込み口)がネジタイプのものです。ネジでしっかりアース線を留めるため、接続が外れにくく、物理的な衝撃に強いです。取り付け方は、以下の通りです。
- 対象電気製品の電源プラグを抜くなどして、電源を完全に切る
- コンセントに付いているアース端子のカバーを開ける
- アース端子のネジをプラスドライバーなどで緩める
- アース線の先端の、銅線部分を端子に巻き付ける(銅線部分が露出していない場合は、ニッパーなどで先端の被覆を1cm程度むいてから行う)
- アース線を巻き付けたら、しっかりとネジを締め直し、固定させる
ネジが緩んでいると、接触不良が発生し、安全性が確保できなくなるため、しっかりと固定しましょう。なお、アース線の先端が、Y字型のコネクトタイプの場合は、ネジを緩める必要はありません。Y字部分をネジにひっかけるようにして固定しましょう(うまくいかない場合はネジを緩めて設置します)。
最後に、全ての接続が正しく行われていることを確認し、電気製品の電源を再び入れます。取り付けが正しく行われていれば、アース線は安全に機能し、電気事故のリスクを大幅に軽減してくれます。
ワンタッチ式アース線の取り付け方
ワンタッチ式とは、穴がすでに開いているタイプのアース端子に、アース線を取り付ける方法です。ワンタッチ式の場合、工具が不要なケースが多く、非常に簡単に取り付けられます。取り付け手順は、以下です。
- 対象電気製品の電源プラグを抜くなどして、電源を完全に切る
- コンセントに付いているアース端子のカバーを開ける
- アース線の先端の、銅線部分を端子の穴に差し込む(銅線部分が露出していない場合は、ニッパーなどで先端の被覆を1cm程度むいてから行う。Y字型で、形状が適合しない場合は、Y字部分も切り取って被膜をむく)
アース端子の穴は2つ開いていますが、銅線はどちらに差し込んでもかまいません。アース端子の形状とアース線の先端タイプを確認し、作業します。
いずれの方法でも、感電事故を防ぐため、家電製品の電源を完全に切って作業することが大切です。また、作業後には電源を入れて、動作に問題がないか、確認を行っておきましょう。
アース線がない場合の対処法
アース線をつなぎたくてもコンセントにアース端子がない場合があります。その場合の対処法を解説します。
アース端子がないコンセントへの対応
アース線をつなぎたい場所付近のコンセントにアース端子がない場合、最も簡単な方法は、既存のアース端子があるコンセントまで届く長いものに、アース線を交換することです。適応する長さのアース線を用意し、一方の端をアース端子があるコンセントに接続します。もう一方の端を、電気製品側に接続し直して、アース機能を確保します。
アース線を交換しても、アース端子が付属しているコンセントまで届きそうにない場合は、電気工事士の資格を有する専門業者に相談しましょう。専門の業者は、アース線の延長方法や、アース付きコンセントへの交換など、ケースに応じた対処法に精通しています。誤った工事は感電や火災の危険があるので、不安な場合はDIYは避け、専門業者に任せることが大切です。
長いタイプのアース線を使用し自分で作業する場合は、以下でアース線を購入できます。
複数の家電のアース線を1カ所に接続する方法
1つのアース端子に複数のアース線を接続しても、問題はありません。特に、アース端子が不足している場合に有効な方法となります。しかし、複数のアース線を1カ所に接続する場合、接触が不十分なことがあるため、接続する際には注意が必要です。
また、医療施設など特殊な環境では特に注意しなければならないケースがあります。医療機器には、高電圧を使用するものや人体に触れるものなどさまざまな種類があります。そのため、アース線の太さや接続方法が異なる場合、1カ所のアース端子から電気を逃がすのは難しいです。専用のアース配線やアース端子箱の利用などの方法があるので、業者に相談することをおすすめします。
アース線取り付け時の注意点

アース線の取り付けは、電気製品を扱う作業で危険なため、いくつかの注意点があります。以下で解説します。
禁止されている接続先には付けない
ガス管や水道管、電話線・インターネット用のコンセントなどにアース線を接続することは法令で禁止されています。
ガス管や水道管にアース線が接続されてしまうと、漏電が発生した場合に、感電したり爆発したりする可能性があるため、大変危険です。また、電話線やインターネット用コンセントのアース端子にほかの機器類のアース線を接続すると、電話機の誤動作や通信障害を招く恐れがあります。間違った接続をしないよう気を付け、不明点がある場合は専門業者に相談しましょう。
取り付け時の安全対策を行う
アース線の取り付けに資格は必要なく、DIYでも行えます。しかし、作業時には、以下のような安全対策を十分に行うことが大切です。
- 作業前に電気製品の電源を切り、電源プラグをコンセントから抜く
- 感電防止のため、絶縁手袋や静電気除去グッズを使用する
- 工具を使用する場合は、金属製部分に触れない
- アース線を接続する端子やネジが清潔で錆びていないことを確認する
- アース線の被膜部分の絶縁体が劣化したり破れたりしていないか確認する
電気製品を扱う作業には、危険が伴います。静電気除去グッズなどの準備で安全対策を図り、アース線や端子の状態をチェックした上で、アース線の取り付けを行いましょう。
アース端子が錆びていれば接触不良が起き、安全性が損なわれます。また、アース線の絶縁体が劣化しているのに気づかず銅線部分を触れば、感電する恐れがあり、危険です。自分でアース線を取り付ける場合は、感電したり火災を引き起こしたりしないよう、十分に気を付ける必要があります。
また、作業が完了した後は、アース線が正しく接続されているかを、電気テスターなどで確認しましょう。不明点がある場合や、自信がない場合は、専門の電気工事士に相談することをおすすめします。
まとめ
アース線は、漏電や火災事故を防ぐために必要な安全装置で、電気を地中に逃がす役割を持ちます。特に水回りや湿気の多い場所、屋外、医療施設や工場など、漏電リスクが高い場所で設置が推奨されます。取り付け方法にはネジ式とワンタッチ式があり、各機器に応じた手順が求められます。アース端子がない場合や複数機器で使用する場合には、適切な対処法が必要です。さらに、ガス管や水道管への誤接続は危険なため注意しましょう。作業前には必ず電源を切り、絶縁手袋を使うなどの安全対策を行いましょう。
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