更新日:2024年4月30日
インパクトレンチとは?用途や種類、選び方や使用時のポイントを解説!

インパクトレンチは打撃力を利用してネジやナットを締め付ける工具で、タイヤ交換や建設現場での施工によく使われています。
この記事ではインパクトレンチの用途や種類、選び方、使い方、注意点を解説します。インパクトレンチを詳しく知りたい方は、参考にしてください。
インパクトレンチとは
インパクトレンチは、ボルトやナットを、叩く力である「打撃力」を利用して取り付ける工具です。締め付ける場合と緩める場合の両方に使えます。また、インパクトレンチは先端のソケットの大きさを変えると、さまざまなサイズのボルトに対応できます。
なお、トルクレンチでもボルトやナットの取り付けは可能です。しかし、トルクレンチは締め付け作業を行っているボルトやナット、ねじなどがどのくらいの力で締め付けられているかを測定することを目的とした工具であり、締め付け作業を主な目的としているわけではありません。
そのため、大きなトルク値で締め付ける場合には、より大きなトルク値に対応したインパクトレンチを使用します。詳しくは後述しますが、トルク値とは固定されている回転軸を中心として、回転するときにはたらく力の大きさのことです。
インパクトレンチの用途
さまざまな用途があるインパクトレンチですが、使うボルトやナットのサイズによって選ぶインパクトレンチも異なり、おもに以下の用途で使用します。
- 自動車のタイヤ交換
- 建設現場での施工
- 大型機械(農機具や工業機械)のメンテナンス
- 大型家具の組み立て
インパクトドライバーとの違い
インパクトレンチと名前が似た工具として、インパクトドライバーが挙げられます。しかし用途や目的が異なるため、以下の表で確認してください。
| インパクトレンチ | インパクトドライバー | |
|---|---|---|
| 主要な使用目的 |
|
|
| 用途 |
|
|
| 使う場面 |
|
|
| 先端の形状 |
|
|
インパクトドライバーは先端工具を変えるとボルトナットにも使えるので、幅広い用途に使用可能です。一方、インパクトレンチはボルトナット専用です。
インパクトレンチの種類
ボルトやナットの締め付けに便利なインパクトレンチですが、いくつかの種類があります。ここでは、次の3種類を紹介します。
- コード式インパクトレンチ
- バッテリー式インパクトレンチ
- エアー式インパクトレンチ
それぞれメリットやデメリットが異なるため、使う場面や用途で選んでください。
コード式インパクトレンチ
コード式インパクトレンチは電源コード(コンセント)のある環境で使えるインパクトレンチで、機種によって異なりますが、パワーが強いことが利点です。また、バッテリー式と比べて軽量で扱いやすいのも特長です。
しかし電源に接続しているあいだは使い続けられる一方、コードの長さの範囲内でしか作業ができません。また、濡れると感電する危険性があるため、屋内や屋根がある場所で使用する必要があります。
バッテリー式インパクトレンチ
バッテリー式インパクトレンチは、機器内にバッテリーが内蔵されているため場所を選ばず、屋外の作業でも使えます。しかし、バッテリーの充電が切れると、再度充電しないと使えません。
また、バッテリーの大きさによりますが、コード式に比べるとパワーが弱めで、重量も重いのが特徴です。そして、用途によってバッテリーの規格を選ばないと、作業が終わるまでバッテリーが持たない可能性があるため、注意が必要です。
エアー式インパクトレンチ
エアー式インパクトレンチは、空気の力を利用して動かすインパクトレンチです。そのため、作動させるためにはエアーコンプレッサーが必要です。エアーコンプレッサーはエンジンで動かすのが一般的です。
エアー式インパクトレンチは、3種類のインパクトレンチのなかでも一番動力が強く、動力の強さと使用時間の長さを必要とする自動車工場や、さまざまな工場の生産ラインで使用されています。
インパクトレンチのトルクとは?
トルクとは、ボルトやナットを締め付ける力の数値で、トルク値(N・m)=力×距離の計算式で示します。
以下の表は、自動車のタイヤホイールナットのトルク値の目安です。表の数値を参考にしつつ、取扱説明書などで事前に正しいトルク値を確認しておきましょう。
| 自動車のタイヤホイールナットのトルク値 | |
|---|---|
| 大型車 | 約550~600N・m |
| 普通車 | 約100~120N・m |
| 軽自動車 | 約80~100N・m |
インパクトレンチの選び方
インパクトレンチを選ぶ際は、種類以外にもいくつかの選ぶポイントがあります。この項目では、インパクトレンチを選ぶ際のポイントを解説します。
動力源で選ぶ
先述したように、インパクトレンチにはコード式とバッテリー式、エアー式があります。
コード式とバッテリー式の動力源は電動で、エアー式の動力源はエアーコンプレッサーです。作業時間の長さや、作業環境によって適切な動力源を選ぶと良いでしょう。
下記の表は動力源ごとの特徴をまとめたものです。
| コード式 | 長時間使用可、本体が軽い。コードの届く範囲での作業向き |
|---|---|
| バッテリー式 | 使用時間が限られるが、どこでも作業できる |
| エアー式 | 長時間安定した作業が出来るが別途コンプレッサーが必要。 |
家庭でのDIYで短時間の作業の場合には、コード式やバッテリー式を選ぶと良いでしょう。一方、工場などで長時間作業を続ける場合にはエアー式がおすすめです。
トルク値で選ぶ
トルク値については先述しましたが、インパクトレンチを選ぶ際は、トルク値の範囲を確認して選びましょう。
トルク値が大きすぎると、ボルトやナットが破損する恐れがあるため、作業内容に合ったトルクのものを選び、締め付けすぎに注意しながら使用してください。
ドライブ角で選ぶ
インパクトレンチの先端部であるソケットの形状は、角の大きさが5種類にわかれています。ボルトに合ったソケットを選ばないと、しっかり締め付けられないため、以下の表から最適なドライブ角を把握して、ソケットを選びましょう。
| ソケット取り付け角ドライブサイズ | 適合ボルト |
|---|---|
| 6.3sq | M5~M10 |
| 9.5sq | M5~M14 |
| 12.7sq | M6~M22 |
| 19.0sq | M10~M30 |
| 25.4sq | M22~M30 |
なお、ドライブ角は互換性がないため、作業が変わるごとにソケットを変える必要があります。
付加機能で選ぶ
インパクトレンチには、ネジやナットを締め付ける以外にもいくつかの機能を備えているものがあります。付加機能で選ぶと使える場面が増えるため、欲しいポイントから選んでください。さまざまな付加機能には、以下に挙げるものがあります。
| 付加機能の種類 | 特徴 |
|---|---|
| パワー調整機能 | 締め付けすぎが起こりにくく、破損に繋がりにくい |
| 防塵・防滴機能 | 屋外で作業する人にはおすすめ |
| 5種類のソケットが付属している | ソケットを新たに購入する必要がない |
重量で選ぶ
インパクトレンチを使う際に手が疲れてしまう場合は、軽量のものを選ぶと扱いやすくなります。一般的に、軽量タイプは約1.5㎏程度をさします。しかし、軽さだけで選ぶと大きなボルトやナットを締め付ける際に、手に振動が伝わりやすく、作業しにくくなる場合があるため、扱うボルトやナットのサイズを考慮しましょう。
インパクトレンチの使い方

インパクトレンチを使う際は、一気に締め付けず、徐々に締め付けます。
そして対象物のナットやボルトのサイズに合わせて、ソケットを交換しましょう。緩める場合は電源を切っても少しのあいだ回転する惰性回転を利用しながら徐々に緩め、締め付ける場合はインパクトレンチを使用して2~3回転締め付けたあと、手動のトルクレンチを使用してトルク値まで締め付けましょう。タイヤなど複数個のボルトやナットを締め付ける場合には、対角線の順番に締めます。
また、エアー式を使う際は、エアーコンプレッサーの準備が必要です。コンプレッサーのタンクに空気が貯まるまでには時間がかかるため、エアー式を使う際にはコンプレッサーを準備してから、ソケットを準備するとスムーズです。
インパクトレンチを使う際の注意点
手動では大きな力が必要な作業でも、インパクトレンチがあれば簡単に作業できますが、使用に際していくつかの注意点があります。注意点を守って正しく使い、機器の破損やケガのないようにしてください。
締め付けすぎに注意する
先述したように、インパクトレンチを使用して必要以上に締め付けた場合、ソケットやナット、ボルトが破損する危険性があります。緩めたいときに調節できなくなることもあります。
そのため、締め付けている力(トルク値)がわからない場合には、適度に締め付けたあとに、手動のトルクレンチでトルク値を測定しながら締め付けます。
専用ソケットを使用する
インパクトレンチには、必ずインパクトレンチ用のソケットを使用します。間違いやすいものに「ソケットレンチ用ソケット」がありますが、ソケットレンチ用では、強い力を加えるインパクトレンチの使用には耐えられず、ソケットが破損する危険性があります。
また、インパクトレンチのソケットは5種類のみであることを覚えておきましょう。
トルクの数値はトルクレンチで確認する
特にタイヤ交換では、ボルトやナットを締め付けるトルク値が指定されています。しかしインパクトレンチでは、トルク値を測定しながらの締め付け作業はできません。まずはインパクトレンチで緩めに締め付け、そのあとトルクレンチでトルク値を測定しながら締め付ける方法をとりましょう。このとき、インパクトレンチで締め付けすぎないようにします。
高所作業時はソケットの落下に注意する
大前提として、高所作業が必要な場面では業者に依頼する必要があります。しかし何らかの理由で高所作業をする際は、ソケットの落下に注意が必要です。
高所からソケットが落ちると、他者がケガする危険性や、精密機械内に落ちると機械の破損に繋がるなど、危険なことばかりです。このような場合に備えて、特に高所作業時にはピンが外れないように、ソケットにOリングを取り付けましょう。
エアーコンプレッサーを使う場合は騒音に注意する
エアーコンプレッサーは大きな音が出るため、作業時間や事前の近隣への周知など、周囲の環境に配慮が必要です。エアーコンプレッサーだけでなく、インパクトレンチを使用する際の音も騒音になる可能性があるため、注意しましょう。
まとめ
インパクトレンチの基礎知識や種類、選び方、使い方、注意点は理解できましたか。
インパクトレンチは打撃力を利用してボルトやナットを締め付ける工具で、コード式やバッテリー式、エアー式の3種類があります。
また、インパクトレンチを選ぶ際は、動力源や締め付けたいトルク値、ドライブ角、重量などを意識して選びましょう。
そしてインパクトレンチを使用する際は専用ソケットを使用して、締め付けすぎず、ソケットの落下や機器使用時の騒音に注意します。
紹介した内容を参考に、正しい方法でインパクトレンチを使用してください。

監修者
番匠智香子(ばんしょうちかこ)氏 DIY アドバイザー
木工教室ばんちか工房を主催。美術大学で木工を学ぶ。 愛情を感じる DIY、家族で楽しめる DIY をテーマに HOW TO や講座を開催している。 著書に「木工ガールはじめての DIY」「賃貸でもここまでできる DIY」「木工でかんたん収納インテリア」「コメリではじめる簡単 DIY」など。
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