更新日:2025年2月27日
ラッシングベルトの使い方は?正しい手順と選び方を解説

ラッシングベルトとは、トラックなどで運ぶ荷物を固定する際に使用する、ベルト状の固定器具です。さまざまな種類があるので、安全のためにも用途に応じたものを選び、正しく装着しなければなりません。本記事ではラッシングベルトの種類や正しい使用手順、選び方のポイント、使用上の注意点などを詳しく解説します。
ラッシングベルトとは?

「ラッシング」とは英語で「Lashing」と表記し、紐で縛ることを意味します。「ラッシングベルト」とは、積載した貨物の落下や運搬中の荷崩れを防ぐ、ベルト状の貨物固定用器具のことです。トラックやトレーラー、船舶などで貨物の運搬・固定に幅広く使われるほか、建築現場での建材の運搬や、家庭でも引越しや荷物の車載などに幅広く使われています。
ラッシングベルトは、ベルト本体、バックル(締め具)、金具の3つから構成されています。重い荷物を支えるベルト本体には、主に高強度のポリエステルやナイロンが用いられます。また、バックルや金具には種類があり、それぞれメリットとデメリットが存在するので、用途や荷重にあわせて選ぶことが重要です。
ラッシングベルトのバックルの種類
ラッシングベルトのバックルは、大きく分けて「カム式・カムバックル式」「ラチェット式」の2種類があります。それぞれについて詳しく解説します。
カム式・カムバックル式
「カム式・カムバックル式」は、ズボンのベルトに似た形をしており、バックルに通したベルトを人の手で引っ張って固定するシンプルな仕組みになっています。
取り付けや解除が簡単な反面、締め付ける力が弱いので、強度が低くなるのがデメリットです。宅配便のような軽量の荷物を運搬・固定するのに適しています。
ラチェット式
爪と歯車を組みあわせて、動く方向を一方向に制限する仕組みのことを「ラチェット」といいます。この仕組みを活用して作られているラッシングベルトは、ラチェット式と呼ばれています。
ベルトにはハンドルと歯車が付いており、ハンドルを反復させることで歯車のはたらきによってバックルに通したベルトが巻き取られ、少ない力で強く締め付けることが可能です。ただ解除に手間がかかるので、宅配便など頻繁に荷物の積み下ろしがある業務には不向きです。
建材や木材、大型機械の運搬や固定など、強度が求められる業務に適しています。
ラッシングベルトの金具の種類
ラッシングベルトの金具に多く見られるのが、アイタイプ、エンドレスタイプ、フックタイプの3種です。それぞれの特徴は以下の通りです。
アイタイプ
両端に布などでできた輪が付いたもの。輪をトラックのロープフックなどにかけて使います。輪が柔らかい素材でできているので荷物や車体を傷付けにくく、柔軟性が高いのが特長です。ただ、その分耐久性はほかのタイプより低くなります。引越しなどで傷付けてはいけないものの運搬や、形状がバラバラのものをまとめて固定するときなどに適しています。
エンドレスタイプ
ベルトの両端に金具や輪がなく、直接ベルトで荷物を巻いて固定します。さまざまな荷物の固定や運搬に使え、耐久性と柔軟性に優れているのが特長です。大型から小型の荷物まで幅広く使えますが、特に細長いものの結束や、パレット(荷役台)に荷物を固定する用途などに適しています。
フックタイプ
両端にJ字型やR字型、S字型などの金具が付いたものです。R字型はレール付きの荷台へ固定するのに便利です。J字型は荷台にレールが付いていない場合でも使用できるため汎用性が高く、簡単に取り付けられ、強度も高いので重い荷物や大型機械の固定などに適しています。S字型は軽量で使いやすく、小型の荷物や短距離での輸送におすすめです。
ラッシングベルトの正しい使い方

ラッシングベルトは、正しく使わなければ事故につながる恐れがあります。ここでは使い方が難しいラチェット式ラッシングベルトについて、正しい使用手順を紹介します。
1. バックルにベルトを通す
ベルトがバックルから外れている場合、まずは巻き取る側のベルトの端を、回転軸で折り返すようにしてバックルに通します。すでにベルトがバックルに通されていれば、この作業はスキップして構いません。
次にベルトの両端に付いている輪やフックを、ラッシング用のレールや床フックなどに固定します。このとき、ハンドルの向きは必ず外側になるようにしてください。
2. ベルトのたるみを手で調整する
ハンドルを動かす前に、ベルトがたるんでいれば直してしておきます。ハンドル動作では1度でさほど長く巻き取れないため、作業を効率的に行うには、事前にたるみをできるだけ少なくしておくことが重要です。
たるみを直すには、ハンドルを開いて巻き取り側のベルトを引っ張ります。こうすることで、ある程度まではたるみをなくせます。
3. ハンドルを数回往復させる
手である程度たるみを減らせたら、ハンドルを数回反復させてベルトを巻き取り、荷物をしっかりと固定します。このとき、ベルトが緩過ぎると荷物の落下や崩れにつながり、締め過ぎても荷物が破損したり、解除に手間がかかったりする恐れがあります。ちょうどよい締め具合にするには、たるみをなくした後、2~4回ほどハンドルを往復させるのが目安です。
4. 荷物を固定する
最後に手で触って締め具合を確認し、問題がなければハンドルを畳んで固定します。
ラッシングベルトの緩め方

次に、ラチェット式ラッシングベルトを緩める方法も確認しておきましょう。手順は以下の通りです。
- ラチェットの解除レバー(リリースレバー)を引いて、ラチェット機構を無効にします。これによりロックが解除されます。解除レバーは大抵ラチェット上部の手で触れやすい位置に付いています。もしわからない場合は取扱説明書で確認しましょう。
- ロックが解除されたら、オープンロックがかかるまで、ハンドルを180度開きます。
- ベルトを平らな場所に置き、平らな場所で先ほどバックルに通した側のベルトを軽く引っ張ってください。ベルトはもう固定されていないので、緩めたり引き抜いたりなどの調整が可能です。
ラッシングベルトの選び方のポイント
ラッシングベルトは、用途や重量などにあわせて選ぶ必要があります。ここからは、ラッシングベルトを選ぶ際に考慮したい3つのポイントについて解説します。
用途を考慮する
ラッシングベルトは、一般家庭での荷物の車載や引越し、宅配やトラック輸送、コンテナ輸送など幅広く使われており、荷物の重さやサイズ、形状によって適したベルトが違います。一般的に、ベルトの幅が太いほど安定して固定できますが、価格はその分高くなります。
標準的なベルトの幅は25~50ミリで、軽~重荷重の荷物であればこの範囲で対応可能です。しかし、それを超えて重い荷物であれば、さらに太くて長いベルトが必要になるケースもあります。 運搬シーンや距離、荷物に合ったベルトを選ぶことで、しっかり最後まで荷物を固定でき、落下などの事故を防げます。
耐荷重と安全率を確認する
ラッシングベルトを購入する際、必ず確認しなければならないのが耐荷重と安全率です。ラッシングベルトは一般的に軽荷重用(500kg未満)、 中荷重用(500kg〜2,000kg)、重荷重用(2,000kg以上)に分類されています。耐荷重が不足しているものを選ぶと安全性が確保できないため、運搬する荷物の重さに合ったものを選びましょう。
安全率とは、荷物の重さに対しどのぐらいの耐荷重があれば安全を確保できるかの、目安となる数値です。安全率は、5倍以上のものを選ぶことをおすすめします。例えば、1,000kgの荷物を固定するケースだと、5,000kg以上の耐荷重が必要になります。
使用する環境に合った素材を選ぶ
ラッシングベルトに使われる素材は、主にポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンの3種類があります。素材ごとに長所と短所があるため、使用する環境や用途に合ったものを選ばなければなりません。各素材の特徴は以下の通りです。
ポリエステル
硬質な素材で耐久性が高く、摩耗や変形が起こりにくいのが特長です。紫外線にも強く、濡れても乾きやすいため、屋外での使用に適しています。
ナイロン
伸縮性や耐久性、耐衝撃性に優れており、ポリエステルほどではないものの、吸水性も高い素材です。ただし紫外線には弱いため、長時間の屋外使用には適していません。また、振動などでやや緩みやすいというデメリットがあります。
ポリプロピレン
耐水性や耐薬品性がある素材で、軽量で低コストのため、家庭での使用や軽量の荷物の固定などに幅広く活用できます。ただし、ポリエステルやナイロンに比べると強度や耐久性が劣るため、重い荷物の固定などには不向きです。
ラッシングベルトを使うときの注意点

最後に、ラッシングベルトを使う上で注意したい5つのポイントを紹介します。
耐荷重を超えない
ラッシングベルトを使う際は、製品の表示を確認し、耐荷重を超えないことが極めて重要です。また、いくら耐荷重未満だからといっても、最大許容荷重ギリギリのものを選ぶのは良くありません。先述したように、安全率を考慮するなら最大許容荷重が荷重の5倍程度ある製品が望ましいところです。例えば200kgのものを固定するのであれば、最大許容荷重が1,000kg以上の製品を選びましょう。
もし耐荷重超えや耐荷重ギリギリのベルトを使用すると、表面からはわからなくても、内部の繊維が劣化したり、通常の使用では発生しない疲労破壊を起こしたりして、ベルトが急に切れてしまう恐れがあります。万一ベルトが切れて荷物が落下した場合、重大な事故につながるリスクがあるため、必ず耐荷重は守るようにしてください。
締め過ぎ・たるみ・ねじれに注意する
ラッシングベルトは正しく装着しなければいけません。ベルトの締め過ぎは、器具や荷物の破損につながります。ハンドルの反復は2~4回程度行えば十分です。荷物を固定した際は手で張り具合を確認し、適度な張りを保てるよう気を付けましょう。
逆に緩んでいる場合は、荷物の落下につながる恐れがあるため、バックルを解放してもう一度締めます。
また、ベルトがねじれたまま取り付けると、しっかりと固定できなかったり、荷物に傷が付いたりする可能性があります。装着の前にはねじれがないか確認し、もしある場合はねじれを直してからあらためて締め直しましょう。
日常点検を行う
ラッシングベルトは傷んだものを使用しては大変危険です。必ず日常点検を行い、異常がないか確認する工程が求められます。点検で切り傷やすり傷、縫い糸のほつれや全体的な毛羽立ち、熱や薬品による変色や溶解があるものは破棄して、使用しないようにしましょう。
汚れが付着している場合は、水で薄めた中性洗剤を使用し、柔らかいスポンジやブラシを使って落とします。汚れが落ちにくい場合は、専用のクリーナーを使えば比較的簡単に落とすことが可能です。汚れを落とした後は、よくすすいで洗剤を洗い流し、しっかり乾燥させます。日々のメンテナンスをきっちりと行うことで、ベルトも長持ちします。
また、日常点検だけでなく、1カ月に1度ぐらいの頻度で定期点検を行うことも重要です。定期点検の際は金属部分の錆びやベルト部分の摩耗、縫製部分のほつれや製造年月日など、細かい部分まで丁寧にチェックしましょう。
適切な環境で保管する
ラッシングベルトを長く使い続けるためには、保管状態にも気を配らなければなりません。湿気が多い場所で保管したり、濡れたまま乾かさずに保管したりしておくと、カビや腐食の原因になります。
ラッシングベルトは直射日光や高温多湿の場所を避け、ほかの工具や薬品と離れた場所で保管しましょう。屋外は雨風や温度の影響を受けやすいため、乾燥した室内で保管するのが基本です。また、ラッシングベルトが濡れた場合は、しっかりと乾かしてからしまいましょう。
劣化したら新しいベルトに交換する
劣化したベルトを使い続けると、突然切れて荷物が崩れるなど、深刻な事故につながる可能性があります。日常点検や定期点検でベルトの傷やほつれ、フックやラチェットの錆び・変色などをまめにチェックし、劣化した場合は速やかに新しいベルトへ交換しましょう。
特にベルトのほつれや切れ目、織目の緩みが確認できた場合、そのまま使い続けるのはNGです。フックやラチェットに錆びや変色が見られる場合は、機能に支障が出た時点で交換しましょう。このほか、耐荷重表示が摩擦などで消えて見えなくなっている場合も、新しいベルトに換えることをおすすめします。
まとめ
ラッシングベルトは、トラックやコンテナでの荷物の輸送、引越しなどに幅広く使える固定器具です。素材や形状にはいくつか種類があるので、荷重や用途にあわせて選びましょう。また、日常点検を小まめに行い、保管場所にも気を付けることで、安全に長く使い続けられます。
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