更新日:2026年8月17日
オフィス・職場の乾燥対策|湿度20%の職場を快適にする10の工夫

冬になると、暖房の効いたオフィスや施設の空気は驚くほど乾燥します。喉がイガイガする、肌や手がカサつく、なんとなく風邪が広がりやすい――そんな不調の背景には、目に見えない湿度の低下が潜んでいます。冬期の室内は湿度20%台まで下がることも珍しくなく、これは砂漠に匹敵するレベルです。しかも、乾燥がもたらす影響や守るべき湿度の基準は、オフィス、医療・介護施設、幼稚園・保育園・学童・塾、宿泊施設など、施設の種類によって重点が変わります。この記事では、乾燥がなぜ問題なのかという基本から、法令に基づく適正湿度、施設ごとの対策のポイント、そして今日から実践できる10の工夫、さらに会社が福利厚生として一歩踏み込める取り組みまでをご紹介します。
冬にオフィスや施設が乾燥する理由
空気が乾燥するのは、気温と水分量が関係しています。空気が含むことのできる水分量は、気温が下がるほど少なくなります。冬は外気そのものが乾いているうえに、暖房で室温を上げると、同じ水分量でも相対湿度はさらに下がってしまいます。つまり、暖房を使うほど部屋は乾いていくのです。
東京都の関連資料でも、冬期の東京の外気の相対湿度は20%以下になることがあると示されています。乾いた空気を取り込んで暖めれば、室内はいっそう乾燥します。窓が少なく閉め切りがちな空間や、人が多く滞在する割に換気が追いつかない部屋では、乾燥と空気のよどみが重なり環境はさらに悪化しやすくなります。
<参照>
東京都健康安全研究センター「ビルを利用される方へ東京都からのお願い」
乾燥が引き起こす4つのリスク
乾燥は「なんとなく不快」で済む問題ではありません。大きく4つのリスクがあります。
健康面への影響
のどや鼻の粘膜が乾き、目の乾き(ドライアイ)、肌荒れや手荒れが起こりやすくなります。長時間同じ空間で過ごすほど、その負担は蓄積していきます。
感染症リスクの上昇
厚生労働省は、空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなると説明しており、予防のポイントの一つとして「適度な湿度の保持」を挙げています。ただし、加湿はあくまで手洗いや換気などと組み合わせて行う対策の一つであり、加湿さえすれば感染を防げるというものではない点には注意が必要です。
<参照>
厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A」
Q10 インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?
生産性・快適性の低下
のどや目の不快感、体調不良は集中力を削ぎ、作業効率の低下につながります。
設備・物品への影響
意外と見落とされがちなのが設備・物品への影響です。乾燥した環境では静電気が発生しやすく、精密機器の誤作動や紙類の帯電、書類・木製家具の傷みを招くことがあります。
静電気対策については、こちらもあわせてご覧ください。
職場・施設の適正湿度と守るべき基準

では、どのくらいの湿度を保てばよいのでしょうか。一般に、人が快適に過ごせる相対湿度は40〜60%とされています。そして職場や建物には、法令上の基準も定められています。オフィスなど事務所については事務所衛生基準規則により、空気調和設備(空調)を設けている場合は、相対湿度を40~70%になるように努めなければならないとされています。これは努力義務です。あわせて室温についても18℃~28℃と求められており、この室温の下限は令和3年(2021年)12月の改正で、それまでの17℃から18℃に引き上げられました。また、一定規模以上の建物には建築物衛生法(ビル管理法)が適用され、こちらでも相対湿度40〜70%が管理基準として定められています。
<参照>
e-Gov 法令検索「事務所衛生基準規則」
厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」
重要なのは、これらを体感任せにしないことです。人の感覚では乾燥に気づきにくいため、湿度計・温湿度計を設置して数値で見える化することが、対策の第一歩になります。そして次に見るように、守るべき水準や重点は施設ごとに少しずつ異なります。
【施設別】乾燥対策のポイント

オフィス
デスクワークが中心のオフィスでは、長時間座ったまま乾いた空気にさらされることで、のどや目の乾燥が起こりやすくなります。前述の静電気による書類・機器トラブルも冬場の悩みです。基本となるのは、フロアの広さに見合った台数・位置に加湿器を配置すること。受付や個々のデスクには卓上加湿器を併用し、各所に湿度計を置いて数値を確認できるようにすると、過不足のない加湿ができます。
医療・介護施設
高齢者は暑さ・寒さや乾きの体感が鈍くなりやすく、脱水や皮膚のトラブルに本人が気づきにくい傾向があります。重症化リスクの高い利用者がいることも多いため、湿度管理と換気の両立が特に重要です。快適とされる40〜70%を維持しつつ、感染対策として換気も欠かせません。
注意したいのが加湿器の衛生管理です。水を扱う機器は、手入れを怠るとかえって細菌の温床になりかねません。こまめな清掃と給水の交換を徹底し、清潔な状態で使うことが前提になります。空間全体を安定して加湿できる業務用加湿器や、空気清浄機能を備えた機種の活用も検討に値します。
幼稚園・保育園・学童・塾
抗力の弱い子どもたちが集団で長時間過ごす施設では、湿度をしっかりと保つことが推奨されます。乾燥は子どもの肌トラブルの原因にもなります。一方で、安全面への配慮が欠かせません。加湿器は子どもが触れられない場所に設置し、やけどの心配がある加熱(スチーム)式よりも、気化式や超音波式を検討するのが無難です。転倒や水こぼれにも注意しましょう。設備が十分でない場合は、霧吹きで空間を潤す、床や窓を水拭きするといった、手軽な方法でも一定の効果が期待できます。
宿泊施設(バックヤード・共用部)
宿泊施設では客室の環境が注目されがちですが、リネン庫や厨房裏、フロント奥、スタッフルームといったバックヤードも同じように乾燥します。ここで働くスタッフの体調管理は、接客品質やサービスの継続に直結します。人手が限られる現場ほど、一人の欠勤が大きく響きます。さらに宿泊施設ならではの視点として、「防御」の意味合いがあります。フロントやロビーは、不特定多数の宿泊客と日々接する最前線です。スタッフがのどや粘膜を乾燥から守ることは、外部からもらいにくくし、また広げにくくするための備えでもあります。共用部を適切に加湿すれば、宿泊客の滞在快適性の向上にもつながります。省スペースで置ける機種や、給水頻度を抑えられる大容量タイプなど、現場に合った選び方を検討するとよいでしょう。
<参考>
加湿器の種類を徹底解説!オフィスに最適な加湿器と選び方
オフィス加湿器の種類と特徴を知ろう。目的別の選び方と快適環境づくり
今日からできる乾燥対策「10の工夫」
ここからは、職場や施設ですぐに取り組める具体策を10個紹介します。実施のハードルが低いものから、設備を伴うものへと順に並べました。なお、家庭でよく紹介される「濡れタオルの室内干し」や「お湯を入れたカップを置く」といった方法は、職場では見た目・衛生・スペースの面で運用しづらいことが多いため、ここではあえて外しています。
- 湿度計・温湿度計を設置して数値で管理する。まずは現状を「見える化」することがすべての出発点です。
- こまめに水分補給をする。体の内側からのケアも、粘膜を守るうえで大切です。
- マスクを着用してのど・粘膜を保護する。呼気の湿気を利用して、のどの乾燥を和らげられます。
- 観葉植物を配置する。植物の蒸散作用で、ゆるやかに空間の湿度を補えます。
- 霧吹きで空間を潤す。設備がなくてもすぐ試せ、特に保育・教育施設で有効です。
- 卓上加湿器を各デスク・受付に置く。人のいる場所をピンポイントで加湿できます。
- 大型・業務用加湿器を空間全体に設置する。広い空間を安定して加湿したい場合に有効です。
- 空気清浄機能付き加湿器を活用する。加湿と空気清浄を一台でまかなえます。
- 加湿器の清掃・給水交換を習慣化し、衛生を保つ。手入れを怠った加湿器はかえって健康リスクになりかねません。水の交換と定期清掃をルール化しましょう。
- 換気とのバランスを取り、過加湿・結露を防ぐ。湿度は高ければよいわけではなく、上げすぎるとカビや結露の原因になります。適度な換気と併用し、40〜70%の範囲を意識しましょう。
働きやすい職場づくり・福利厚生としての乾燥対策アイデア
乾燥対策は、従業員一人ひとりの心がけに任せるだけでは徹底しきれません。会社や施設が組織として取り組むことで、実効性は大きく高まります。
社内で乾燥対策を啓発する
まず取り組みたいのが社内啓発です。適正湿度や乾燥のリスク、こまめな水分補給や手洗いの大切さを、ポスターや朝礼、社内報などを通じて周知しましょう。総務や管理担当者が旗振り役となり、乾燥対策は職場全体で取り組むものという意識を共有することが出発点になります。
対策グッズを職場で用意する
次に、備品の支給という一歩進んだ施策です。マスク、のど飴、ウォーターサーバーなどの給水環境を、福利厚生として会社側で用意する方法です。「各自で用意してください」と呼びかけるだけでは実行率は上がりませんが、会社がモノを備えれば対策は自然と実践されます。結果として、体調不良による欠勤や生産性の低下を防ぐことにつながります。
加湿環境を整備・維持する
そして環境整備です。加湿器や湿度計の設置とあわせて、清掃・給水のルールを定め、総務が主導して定期的にメンテナンスを行いましょう。衛生的に運用してこそ、加湿器は本来の効果を発揮します。
こうした取り組みは、単なるコストではありません。従業員の健康と満足度を高め、ひいては人材の定着や企業イメージの向上にも寄与しうる投資と捉えることができます。乾燥しやすい季節に不調が減れば、現場は確実に回りやすくなります。
よくある質問(FAQ)

Q. オフィスの湿度って何パーセントが理想?
A. 一般に、人が快適に過ごせる相対湿度の目安は40〜60%とされています。法令面でも、事務所衛生基準規則では空調設備がある場合に相対湿度を40%以上70%以下に保つよう努める努力義務が、建築物衛生法でも管理基準として40〜70%が定められています。ただし冬は放っておくと20〜30%まで下がりやすいため、湿度計を設置し、40%を下回らないように加湿することを意識するとよいでしょう。なお、高すぎるとカビや結露の原因になるため、上げすぎにも注意が必要です。
<参照>
e-Gov 法令検索「事務所衛生基準規則」
厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」
Q. 加湿器がなくても乾燥対策はできますか?
A. はい、加湿器がなくてもできる工夫はあります。こまめな水分補給やマスクの着用でのど・粘膜を守る、観葉植物を置く、霧吹きで空間を潤す、といった方法です。ただし、これらは補助的な効果にとどまることが多く、広い空間や乾燥が厳しい時期には限界があります。安定して湿度を保ちたい場合は、空間の広さに合った加湿器の導入が現実的です。
Q. 加湿するとインフルエンザや風邪の予防になる?
A. 加湿は有効な対策の一つですが、それだけで感染を防げるわけではありません。厚生労働省は、空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなるとして、予防策の一つに適度な湿度の保持を挙げています。ただし、これは手洗いや換気、体調管理などと組み合わせて行うことが前提です。加湿はあくまでかかりにくい環境をつくるための一助と考え、他の対策と併用しましょう。
<参照>
厚生労働省「令和6年度インフルエンザQ&A」
Q10 インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?
まとめ
冬の乾燥対策は、次の4点に整理できます。第一に、湿度を体感でなく数値で把握すること(法令上の基準は40〜70%、快適の目安は40〜60%)。第二に、加湿器と今回紹介した10の工夫を組み合わせること。第三に、オフィス・医療介護・保育や教育・宿泊施設といった施設ごとの事情に合わせること。第四に、会社として福利厚生の視点で従業員を支えることです。
乾燥は冬本番になってから慌てて対策しても、なかなか追いつきません。流行期を迎える前の今のうちに、湿度計の設置や加湿器・関連備品の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。
<参考>
加湿器の種類を徹底解説!オフィスに最適な加湿器と選び方
オフィス加湿器の種類と特徴を知ろう。目的別の選び方と快適環境づくり
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