更新日:2024年11月28日
購買とは? 調達との違いと業務の流れ、よくある課題

企業にとって欠かせない業務のひとつに購買があります。購買業務の管理は企業の生産活動に強い影響を及ぼすため、事前の計画に沿って進める必要があります。本記事では購買の意味や似ている言葉との違い、具体的な流れに加え、購買が企業の生産や成長に与える影響や課題について詳しく解説します。
購買とは

購買とは、企業が事業運営や生産活動を行う上で必要な製品やサービスを外部から調達することです。
JIS規格(日本産業規格)では「生産又は営業に必要な設備、原材料、部品、消耗品などを購入する活動」と定義されています。また、購買に関わるプロセスを管理する購買管理については、「生産活動に当たって、外部から適正な品質の資材を必要量だけ、必要な時期までに経済的に調達するための手段の体系」と定義されています。
参照:日本工業規格「生産管理用語」
業種や業界を問わず、購買はあらゆる企業にとって欠かせない業務です。製造業において製品を生産するための資材の仕入れだけでなく、その他の業種でも社内の備品や消耗品などさまざまなものの調達が発生します。
購買は調達を外部に頼ることから、コスト管理や供給の安定性に大きく影響を及ぼします。企業の生産活動やサービス提供を継続していく上で、非常に重要な要素です。
購買と調達の違い
購買と似た言葉に「調達」があります。購買と調達は、どちらも企業が必要とするものやサービスを手に入れるための業務という点では同じですが、その内容には明確な違いがあります。具体的な違いは次の通りです。
物品の入手方法が違う
購買業務の主な役割は、当面の生産計画に必要なものやサービスを必要なタイミングで調達することです。原材料やオフィス用品といった特定のものを決まった目的のために調達するのが特徴で、業務範囲は購入手続きが中心となります。調達と比較すると、視点はより短期的です。
一方、調達業務では企業全体の戦略に基づき、中長期的な視点からあらゆるもの(ヒト・モノ・カネ)を入手するのが目的です。単に購入するだけではなく、それらのリソースを調達するにあたり、さまざまな手段を検討・実行することも含まれます。
例えば、特定の期日までに必要な資材があるものの資金的な理由ですぐに購入するのが難しい場合、リースやレンタルなど購入以外の手段で必要なものの調達を検討することもあります。業務範囲は購入手続きにとどまらず、納品までのプロセス全体を管理するところまでを含みます。
納品物の品質・期日管理の有無が違う
購買は、すでに定められた基準や契約に基づいてサプライヤーから物品を購入するため、品質や期日管理に関しては比較的シンプルです。契約通りに納品された購入品を受領すれば問題ありません。
一方、調達業務では、物品やサービスが期日通りに納品されるかどうかに加え、品質に問題がないかまでを最終確認する責任があります。調達担当者は、納品後の物品が実際に使用可能な状態であることを保証しなくてはなりません。
購買管理の基本的な業務の流れ

1.計画を策定する
購買活動の第一歩は、必要な資材やサービスの計画を立てることです。企業の生産計画や販売予測に基づき、どの程度の量を、いつまでに、どのように調達するかを決定します。その後、計画に基づいて調達可能なサプライヤーを選定し、各社を比較します。
購買で重要なのは、できる限り安く、より高品質な商品を入手することです。そのため、市場動向や商品の製造コストに関する知識なども必要になります。この段階で将来の調達ニーズを可能な限り正確に予測し、過剰発注や不足が発生しないようにすることが、購買管理の鍵です。
2.見積書作成を依頼する
次のステップでは、複数のサプライヤー間で価格や条件を比較するために見積書を依頼することです。まず、何を、どれだけ、いつまでに購入すべきかを関係部門と調整し、サプライヤーに見積書の作成を依頼します。
提示された見積りをもとに、品質、コスト、納期(QCD)の観点から最もコストパフォーマンスの高い取引先を選定し、価格や条件について交渉を行います。コストパフォーマンスを比較するポイントとしては、例えば大量購入や継続利用で値引きが適用されるといった条件の有無などが挙げられます。
ただし、各社の中でコストパフォーマンスが高い商品が、必ずしも現場の求めている商品と一致しているとは限りません。実際に商品を使用する部門の意見を取り入れて取引先を決定することが重要です。
3.商品を発注する
最終的な見積りが企業内で承認されたら、正式に商品やサービスを発注します。発注書には、数量、価格、納期、支払い条件などの詳細を記入し、記載漏れやミスがないように注意する必要があります。万が一の際にトラブルを防止するためにも、記入後は一人で対応するのではなくダブルチェックする、上司の承認を得るなどの工程を挟むようにします。
発注書の送付が遅れると、その分納期も後ろ倒しになる可能性があるため、迅速な送付と確認を心がけます。また、発注後は必要に応じて発注内容の管理と納期のフォローアップをし、発注物が確実に納品されるようにします。
4.納入品を検収する
商品が納入されたら、発注内容と一致しているかを確認します。品質に問題がある場合や不足品がある場合は、サプライヤーと調整して迅速に対処することが重要です。
なお、場合によっては購買部だけでは品質の問題に気づけないこともあります。例えば、見た目が同じでもコストの安い原材料が使用されている場合、現場で問題が生じることがあります。このようなトラブルを防ぐために、品質保証のための取引先とのルール構築や現場との連携も大切にしましょう。
5.在庫を管理する
納入された商品は、実際に使用されるまで適切な環境で保管し、在庫を管理する必要があります。温度や湿度、通気性、日射などの条件を適切に維持するほか、振動対策や害虫対策、衛生管理の実施なども必要になります。商品ごとに保管条件が異なるため、それに合わせた管理が求められます。
不適切な環境で在庫を保管していると商品の変質を招き、結果的に破棄や買い直しなどでコスト増につながることがあります。また、在庫システムと実際の在庫数が合わなくなるリスクを防ぐため、入出庫時の情報の正確な記録も必要です。定期的な在庫チェックとシステム化した管理によって、効率的な購買活動を行い、過剰在庫や欠品によるリスクを最小化します。
購買管理に必要な「購買管理5原則」
購買活動を効率的に進め、企業のコスト削減や安定供給を実現するためには、購買管理において重要な5つの原則を理解することが不可欠です。購買管理における5つの原則について詳しく解説します。
1.取引先管理
取引先管理は、信頼できる供給業者を選定し、長期的な関係を築くことを目的として行う業務です。
具体的には取引先への与信管理を行い、倒産により供給が断たれる懸念がないかを確認します。また、取引先の調達方法に問題がないかも確認が必要です。仮に取引先の調達プロセスに違法性がある場合、自社商品の品質が低下する、発覚時にブランドイメージが損なわれる、安定した供給先にならないなど、さまざまなリスクが生まれます。こうしたリスクを避けるためにも、取引先選びの段階において入念な事前調査が重要です。
また、安定した供給とコスト削減を実現するためには、取引先と良好な関係を築くことが求められます。互いの関係が良好であれば、価格交渉や緊急時の対応にも有利に働く可能性があります。なお、取引先を取り巻く状況は常に変化していくため、定期的に経営状況などをチェックすることも必要です。
2.品質管理
品質管理では、納入される商品やサービスが企業の品質基準を満たしているかどうかをチェックします。品質管理の結果に基づき、新規のサプライヤーと今後も取引を継続するかどうかを判断したり、既存の取引先であれば過去に納品した製品の品質と比べて変化がないかなどを確認したりします。商品の変質を防ぐために、取引先の品質管理体制がしっかり整っているか確認するのも重要なポイントです。
また、品質のばらつきを防ぐため、サプライヤーとは品質基準を共有することが必須です。仮に短期で納品してくれる取引先だったとしても、スピードを重視するあまり、製品やサービスの品質を犠牲にしているケースもあります。この場合、最終的な製品の品質および顧客満足度にも悪影響を及ぼすほか、不良品の取り替えにもコストがかかり余計なコスト増につながります。
安定した品質を保ち、万が一不良品が発生した場合は原因分析と改善策の話し合いに協力的なサプライヤーを選ぶことが重要です。
3.数量管理
数量管理は、必要な量を適切に調達し、過剰在庫や不足を防ぐためのプロセスです。発注量が多過ぎると保管コストや劣化時の処分費用が増加してしまいます。反対に発注量が少なくても生産やサービス提供に支障をきたすため、需給のバランスを正確に見極めなければなりません。
また、生産に必要な数量と、自社で適切に保管できる量が必ずしも一致しているとは限りません。あるいは、取引先の供給能力が限られており、安定して自社に必要な数量の全てを納品できない場合は、複数社からの購入を検討する必要があります。自社の保管体制や取引先の供給能力も加味して、適切な数量を判断しましょう。
短期的なニーズだけでなく、長期的な需要予測に基づく数量管理も必要です。将来的な需給のバランスも考慮した発注が、企業の資金効率を上げるためには欠かせません。
4.納期管理
納期管理は、商品やサービスが必要な時期に確実に納入されるようにするためのプロセスです。過不足のない適切な数量を常に確保しておくためには、発注から納品までのリードタイムと、納品から現場で使用するまでのリードタイムがあることを理解する必要があります。
発注から納品までのリードタイムが長いと在庫が足りなくなり、納品から現場使用までのリードタイムが長いと過剰在庫や保管費用が発生してしまうため注意が必要です。また、納期に遅延が発生した場合も同様に、在庫不足やその対応のためのコスト増を引き起こし、企業の生産やサービス提供に影響を及ぼす可能性があります。
このようなネガティブな影響を避けるためにも、商品やサービスを必要なタイミングで確実に調達することが求められます。さらに、あらかじめサプライヤーと話し合い、納品の遅延や短納期発注が必要になった場合などにどのように対応するか、ルールと対策を決めておきましょう。複数のサプライヤーを選定しておくことも、緊急時に対応するための有効な手段です。
5.コスト管理
コスト管理は、購買にかかる費用を最小限に抑えるためのプロセスです。常に価格交渉やコスト分析を行い、コスト削減に努めます。また、コストを考える上では購入にかかる直接コストと管理や保管にかかる間接コストを分けて把握する必要があります。短期的な価格だけでなく、長期的な取引関係や安定供給の観点から総合的にコストを管理することが大切です。
なお、安く購入するほど企業の利益率は向上しますが、安さと品質はトレードオフの関係になりやすいです。安さだけにこだわらず、コスパを重視するようにしましょう。
購買管理でよくある課題
購買管理は企業の運営や生産活動に直結するため、管理にあたってさまざまな課題が発生することがあります。そこで、購買管理でよく見られる課題について詳しく解説します。
情報共有ができず重複購入してしまう
情報共有が不十分な場合、誰が何をいつ購入するのかが明確にされていないため、異なる部署や担当者が同じ商品を重複して購入してしまうことがあります。このような状況は無駄な在庫の増加や予算の浪費につながります。できるだけ情報を迅速に共有し、避けなければなりません。
また、情報共有が適切にされていないと、私物の購入や着服といった不正行為を引き起こす可能性もあるので、透明性の高い管理とルールづくりが重要です。
例えばリアルタイムで在庫状況や発注情報を共有できる購買システムや、ツールを導入して情報の一元管理を実現するなど環境の整備が求められます。
発注書や管理が複雑になって時間がかかる
発注書の作成や管理が複雑化すると、プロセスに遅延が生じ、業務全体の効率が低下します。特に、手作業での管理はヒューマンエラーが発生しやすくリスキーです。できるだけシステム化や自動化を検討し、発注や在庫管理の仕事を簡素化することが鍵です。
また、業務が煩雑化すると、発注や調達を急いでいる場合でも時間がかかり、生産やサービス提供に支障をきたすことがあります。プロセスを見直し、シンプルかつ効果的な管理手法を導入してリードタイムの短縮を図れば、購買活動のスピードアップと効率化が期待できます。
購買管理の効率化なら購買管理システム「ソロエルアリーナ」「ソロエル」がおすすめ
「購買業務が複雑化している」「トラブルが多く改善したい」という企業は、購買管理に特化したシステムを導入するのがおすすめです。アスクルが運営する購買業務のサポートサービス「ソロエルアリーナ」は、各部署が個別に行っていた発注業務を一括管理することで、購買プロセスを「見える化」できるのが特長です。
また、消耗品をはじめとした「間接材」の購買管理についてプロセス全体を支援する「ソロエル」も有用です。見積もりから発注まで「ソロエル」のシステムで行えるため、取引先別に対応する必要がなく、コミュニケーションコストを削減できます。
また各部門、各担当者で不揃いだった間接材の購買手段をまとめることで、企業全体の購買を見える化し、業務効率化のほか不正防止等のコンプライアンス強化が可能です。
購買業務の効率化を目指す担当者の方はぜひ一度、お気軽にご相談ください。
<参考>
まとめ
購買は、商品やサービスをできるだけ安価かつ高品質な状態で購入するというシンプルな業務ではありますが、企業にとってはコスト管理の要です。取引先の選定や在庫管理も、コストに大きな影響を与えます。適切な購買管理によりコストを最適化して利益率を高め、企業の成長や競争力維持につなげていきましょう。


