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更新日:2024年4月30日

熱電対とは?特徴や種類などの基本情報から選び方までわかりやすく解説

2種類の異なる金属で作られている熱電対は、幅広い温度が測定できる温度センサーです。使用されている金属によって特徴や測定できる温度が異なるため、正確に温度を測定するには用途に適したものを選ぶことが大切です。

しかし、熱電対の種類は多くあるため、購入を検討していても選び方がわからない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、熱電対の原理や金属の種類などの基本情報から、熱電対を選ぶときのポイントまでわかりやすく解説します。更に、熱電対で正確に測定するために知っておきたい注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

熱電対とは?

熱電対とは、2種類の異なる金属で作られた温度センサーのことです。金属の組み合わせによってさまざまな種類があり、工業用として広く使われています。

ここでは、熱電対の特徴と温度が測定できる原理をわかりやすく解説します。

熱電対の特徴

熱電対と他の温度計を比べたとき、熱電対にはどのような特徴があるのでしょうか。長所と短所をそれぞれ解説します。

まず、熱電対の長所として、下記の4つが挙げられます。

  • 耐熱性が高く、高温から低温まで広範囲の温度を安定して測定できる
  • 比較的手に入れやすい価格帯である
  • 耐食性が高く、ガスにも対応できる
  • 応答が早く、温度情報が解析しやすい

一方で、熱電対の短所には下記の2つがあります。

  • 常温付近の温度測定が苦手
  • 測温抵抗体より精度が劣る

熱電対は温度を安定して測定できるうえに比較的手に入れやすい価格帯であるため、幅広いシーンの温度測定に使用できます。ただし、常温付近を測りたいときや、精度を求めるときは違う方法での測定も検討しましょう。

熱電対の原理

熱電対は、2種類の金属線で1つの回路を作り、2種類の金属線をそれぞれ異なる温度にさらすことによって電圧が生じる仕組みを活かしたものです。この原理によって生じた電圧の差を測定することで、温度差を測定できます。

この原理はドイツの物理学者であるトーマス・ゼーベックによって発見され、ゼーベック効果と呼ばれています。

熱電対の金属の種類

熱電対の金属の種類は数多くありますが、ここではJIS規格で規定しているもののなかから一般的なものを下記の表にまとめました。

記号の種類構成材料(+脚/-脚)基準熱起電力が定義される温度範囲特長
Bロジウム30%を含む白金ロジウム合金/ロジウム6%を含む白金ロジウム合金0℃/1820℃JISに規定されたなかではもっとも使用温度が高い
Rロジウム13%を含む白金ロジウム合金/白金-50℃/1768.1℃精度が良くてばらつきや劣化が少ない
Sロジウム10%を含む白金ロジウム合金/白金-50℃/1768.1℃精度が良くてばらつきや劣化が少ない
Nニッケル、クロムおよびシリコンを主とした合金/ニッケルおよびシリコンを主とした合金-270℃/1300℃広範囲にわたって熱起電力が安定している
Kニッケルおよびクロムを主とした合金/ニッケルを主とした合金-270℃/1372℃熱起電力の直線性が高く、多く使われている
Eニッケルおよびクロムを主とした合金/銅およびニッケルを主とした合金-270℃/1000℃JISに定められた熱電対のなかでは、もっとも熱起電力が大きい
J鉄/銅およびニッケルを主とした合金-210℃/1200℃E熱電対に次いで熱起電力が大きい
T銅/銅およびニッケルを主とした合金-270℃/400℃低温での測定に広く使われている

金属の種類によって、測定できる温度や特長が大きく異なります。選び方を間違えると正しく測定できないことがあるので注意しましょう。

熱電対の選び方

ここからは、熱電対の選び方を解説します。正しく測定するために、熱電対を購入する前にぜひチェックしてください。

熱電対の選び方のポイントは下記の3つです。

  • 熱電対の測定できる温度をチェック
  • 熱電対の線径をチェック
  • 熱電対の精度をチェック
  • シース熱電対の構造をチェック

順番に解説します。

熱電対の測定できる温度をチェック

先ほど紹介したように、熱電対の金属にはさまざまな種類があり、それぞれ測定できる温度範囲が異なります。測定対象が正確に測れるように、熱電対が何度から何度の範囲で測定できるのかをチェックしましょう。

金属の種類のなかで工業用として多く使われているものはKとJですが、測定対象に合わせて適切な種類を選ぶことが大切です。

熱電対の線径をチェック

熱電対は、線径の太さによって測定時間や耐久性が異なります。

線径が太い場合は耐久性が高くなりますが、温度が変化しやすいので測定までに時間がかかります。一方、線径が細い場合は測定までの時間は早くなりますが、細いため強度が弱く寿命が短い傾向にあります。

測定対象や環境を考慮して、必要に応じて選びましょう。

熱電対の精度をチェック

熱電対は金属の種類によって精度が異なるため、許容できる範囲に応じて選ぶことが大切です。

熱電対に使用される代表的な金属の精度について、下記の表にまとめました。

種類クラス1クラス2クラス3
R±1.0℃/±1.5℃-
K±1.5℃±2.5℃±2.5℃
J±1.5℃±2.5℃-
T±0.5℃±1.0℃±1.0℃

もっとも精度が高いのはクラス1ですが、その分高価になるため、クラス2が多く使われています。精度と価格のバランスを考慮して選びましょう。

シース熱電対の構造をチェック

熱電対の素線は、耐久性を持たせるために外気から遮断して使います。素線に加工したものをシース型熱電対と呼び、主に下記の3種類の構造があります。

  • 接地型:シースの先端部分に直接溶接したもので、応答が早い
  • 非接地型:素線とシースを絶縁したもので、ノイズに影響されにくい
  • 露出型:素線がシースから露出したもので、応答は早いが耐久性が低い

それぞれメリット・デメリットがあるので、使用条件に応じて構造を選びましょう。

熱電対を使用するときの注意点

ここからは、熱電対を使用するときの注意点を紹介します。正確に温度を測定するために、必ず確認しておきましょう。主な注意点は下記の3つです。

  • 熱電対と測定対象を正しく設置する
  • 延長するときは補償導線を使用する
  • 定期的に熱電対の校正を行う

順番に解説します。

熱電対と測定対象を正しく設置する

測定対象に対して熱電対が正しく設置されていないと、正確な温度を測定できないことがあります。貼りつけられる熱電対を使用するか、耐熱性のあるテープや接着剤で固定しましょう。

また、熱電対は周囲の環境による影響を受けない場所に設置することも大切です。

延長するときは補償導線を使用する

熱電対と温度測定器に距離がある場合は、補償導線を使用して延長します。正確に温度を測定するために、補償導線の対応温度に注意して使いましょう。

もし違う種類の導線を使った場合、誤差が生じる可能性があります。

定期的に熱電対の校正を行う

正確な温度を測定するためには、定期的に熱電対の校正を行うことが必要です。校正とは、熱電対の示す温度と測定対象の温度が合っているかチェックする作業のことをいいます。校正の頻度は、半年に1回程度を目安にすると良いでしょう。

専用の機器で校正して、計測した温度が違っていれば補正しましょう。

まとめ

高温から低温まで広範囲の温度が安定して測定できる熱電対は、温度測定が必要なシーンでとても役立ちます。正確に温度を測定するためには、熱電対の選び方はもちろん、熱電対と測定対象を正しく設置することも大切です。

金属の種類によって測定できる温度範囲や精度が異なるので、この記事で解説した選び方を参考にしながら測定対象に適したものを選びましょう。

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