更新日:2025年5月15日
タイヤのひび割れの原因は?交換目安・予防策について解説

ゴム製品であるタイヤはその特性からひび割れを起こす可能性があります。ひび割れの症状が進行すると、空気漏れやバーストの危険性が高まり、重大な事故につながる恐れがあり注意が必要です。
この記事では、どのようなときにタイヤのひび割れが起こるのか、またどんな対策をすれば良いのか解説します。交換の目安となるひび割れの症状についても紹介しますので、走行の安全性向上にぜひ役立ててください。
タイヤにひび割れがあっても大丈夫?
タイヤのひび割れが表面だけの浅いものであれば、すぐに交換する必要がないものもあります。しかし、ひび割れを放置したままにするとひび割れが深くなり、空気漏れが発生して空気圧が低下し、さらにひび割れが進行する場合があります。
このような状態では、パンクやバースト(破裂)のリスクが高まり、高速道路や混雑した道路で重大な事故につながる可能性があります。万が一の事故を防ぐためには、日頃からタイヤの状態を定期的に点検し、安全を確保することが重要です。
JAF(日本自動車連盟)の2023年度データによると、高速道路での救援要請の理由第1位が「過放電バッテリー」、第2位が「タイヤのパンクやバースト」です。これは高速走行時のタイヤへの負荷が大きいため、一般道よりも発生しやすいことを示しています。
パンクやバーストは他の車を巻き込むなど大きな事故につながる危険があるため、定期的な点検を行い必要な対策を取ることを心がけましょう。
参照:JAF「JAFロードサービス 主な出動理由TOP10 2023年度 年間(四輪)」
タイヤのひび割れが確認できる場所

ひび割れが発生しやすい箇所は、地面と接する「トレッド面」と、タイヤ側面の「サイドウォール」の2箇所に分かれます。
路面と直接触れるトレッド面は、走行中の摩擦で損傷を受けやすい箇所です。小さな傷や亀裂が発生しやすく、また、溝の部分にひび割れが見られることもあります。
一方、タイヤの側面にあたるサイドウォールは、通常の使用では地面と接しないため損傷しにくい部分です。しかし、経年劣化によるひび割れが生じる場合があります。また、段差に乗り上げるなどの強い衝撃を受けると、破損する恐れがあり危険です。衝撃を感じた場合には、目視で確認することも大事です。
このように、タイヤのひび割れを点検する際には、トレッド面とサイドウォールをそれぞれ小まめにチェックしてください。
タイヤが受けるダメージの種類
走行や環境の影響でタイヤはさまざまなダメージを受けます。これらのダメージは走行性能や安全性に関わるため、ダメージの種類ごとに、適切に対処することが大切です。以下では、起こりやすい主なダメージの種類をそれぞれ詳しく解説します。
1. ひび割れ(クラック)

タイヤのひび割れは、一般にはクラックと呼ばれる現象です。接地面(トレッド)や側面のゴム部分(サイドウォール)に細かいひびが発生することがあります。
クラックは、使用頻度や経年劣化、外的要因などさまざまな問題により進行します。タイヤの性能や安全性に影響を及ぼす場合があるため、症状に合わせた適切なメンテナンスや早期のタイヤ交換が必要です。
2. 剥離(セパレーション)

セパレーションとは、タイヤの一部分が剥がれてくる現象のことです。特に外側の層であるトレッド部分が剥がれることが多く、安定性が損なわれ、車両を制御するのに支障が出す場合があります。
代表的なものは、「トレッドセパレーション」と「ヒートセパレーション」です。トレッドセパレーションは、タイヤが路面と接するゴムの表面のトレッドが、波打つように変形しタイヤの内部が剥離する現象です。ヒートセパレーションは、熱によってトレッド部分に剥離が起こる現象を指します。
見た目のひび割れのほか、運転中にハンドルがブレるなどを感じたら、タイヤ交換が必要な場合もあるため、点検や確認が必要です。
3. 傷(カット)

タイヤは、障害物などに接触することで傷(カット)が発生します。この傷は、トレッド部やタイヤ側面のサイドウォール部、またショルダー部(トレッドとサイドウォールをつなぐ肩の部分)に現れ、症状は切り傷や擦り傷などさまざまです。
深い傷はタイヤ表面の亀裂を招き、最悪のケースではバーストを引き起こす恐れがあります。またタイヤを軽くこすってできる傷もダメージのひとつとなります。
傷ができる主な原因は、縁石や障害物との接触、石の噛み込み、空気圧不足、鋭利なものへの接触や悪路での走行などです。発生状況によって傷の程度や形状は異なるため、日常点検で早期に傷を発見することが重要です。
4. コード切れ

タイヤのコードとは、ゴム層の内部でタイヤの強度や形状を支える補強材で、繊維や金属で構成されます。コード切れは、外部からの衝撃などによってコードが断裂する現象で「C.B.U.(Code Breaking Up)」とも呼ばれます。主な種類として「ブリーディングC.B.U.」「ショックC.B.U.」「パンク引きずり」などがあります。以下でそれぞれの特徴を詳しく解説します。
ブリーディングC.B.U.:空気が徐々に漏れ、極端に低い空気圧のまま走行を続けると、タイヤのショルダー部やサイド部のコードが片面または両面で円周方向に破断します。さらにひどい場合には、サイド部が完全に外れ、タイヤが輪切りのような状態になることを指します。
ショックC.B.U.:タイヤ側面のコード層が、路面の障害物との接触などによる衝撃を受けて損傷し、その部位が膨らんで突出したり、コードが部分的に切れて繊維が露出したりする状態のことです。
パンク引きずり:空気圧不足の状態で走行を続けることで、コードが損傷してばらばらになったり、内面に大きなシワが形成されたりする状態のことです。
これらの損傷はタイヤの安全性を損なうため、発見次第、速やかにタイヤを交換する必要があります。
タイヤの交換目安となるひび割れのレベル

タイヤのひび割れは経年劣化などで発生し、小さなものから深いものまで段階があります。タイヤの交換が必要となる目安はひび割れのレベルによって判断します。一般社団法人日本自動車タイヤ協会では、ひび割れの進行度を以下の5段階に分類しています。
小さなひび割れ(レベル1・2)
経年劣化によるものが多く、タイヤの骨格を支えるコードに達していなければタイヤ自体は無事なので引き続きの使用は可能です。これは、ひび割れの許容範囲とされ、特に問題視はされません。
深いひび割れ(レベル3・4)
タイヤのひび割れが進行すると目立つようになり、タイヤの表面にひび割れが広がります。日常的な点検が必要で、ひび割れの進行状況を確認しながら使用を続けることが推奨されます。
タイヤコードに達するひび割れ(レベル5)
ひび割れがタイヤの内部構造にまで達している場合、非常に危険な状態です。バーストの危険性が非常に高まっているため、直ちにタイヤ交換を行ってください。
タイヤのひび割れを見つけた際は、その深さと進行度を確認し、適切な対応を取ることが重要です。特にレベル5のひび割れが生じた場合には、走行を中止し、速やかに点検を行い交換しましょう。
参照:一般社団法人日本自動車タイヤ協会「タイヤ安全ニュースNo.72 タイヤのクラック(ヒビ割れ)ここまで来たら要注意」
タイヤのひび割れの原因
タイヤのひび割れが起きる原因を5つ紹介します。
経年による劣化
タイヤはゴムでできているため、時間の経過とともに劣化し、性能が低下します。一般的に、使用開始から4~5年が経過すると、ゴムの劣化が顕著になり、ひび割れが生じやすくなります。
劣化したタイヤで走行を続けると、最悪の場合、バースト(タイヤの破裂)といった重大な事故につながる危険があります。安全に走行するためには、ひび割れの程度や使用年数に合わせてタイヤを交換することが重要です。
使用年数に関わらず、ひび割れがなくても定期的に交換しておくと安心です。
過負荷
タイヤは、車体と車に乗っている人、また荷物の総重量を支える重要な役割を担っています。
しかし、タイヤと路面との接地面積は、わずか手のひらほどしかありません。その限られた接地部分で、常に車全体の重さを支えています。そのため、過度な負荷がかかるとタイヤは変形しやすくなります。
過負荷の状態が続くと、タイヤの寿命が短くなるだけでなく、破損する危険性が高まります。安全で快適なドライブのためには、規定されている積載量を守り、急ブレーキや急発進はなるべく避けて運転してください。
油性タイヤワックスや艶出し剤の使用
タイヤワックスや艶出し剤には、油性と水性の2種類があります。油性タイプは、石油系溶剤を含むことがあり、この成分がタイヤのゴムを劣化させ、ひび割れの原因となる場合があります。
一方、水性タイプのタイヤワックスは、油性に比べて価格が高い傾向にありますが、タイヤの劣化を防ぐ効果が期待できます。タイヤを長持ちさせる目的でタイヤワックスを選ぶのであれば、水性タイプのタイヤワックスを使うことをおすすめします。
車の使用頻度
車の使用頻度が低い場合、タイヤが劣化したりひび割れが進行したりすることがあります。タイヤには劣化を防ぐための薬剤が配合されており、通常は走行によってこの薬剤が表面に浸透し、ひび割れを抑制する役割を果たします。
しかし、車を走らせる頻度が少ないと、本来タイヤの劣化を防ぐはずの薬剤が十分に浸透せず、タイヤが硬化してひび割れが発生しやすくなります。また、長期間同じ場所に駐車し続けている場合にも、タイヤの一部分に継続的な負荷がかかり、その部分からひび割れが生じる場合もあります。
タイヤのひび割れを防ぐためにも、定期的に車を走行させ、タイヤ全体に劣化防止剤が浸透するのを促すことが大切です。
紫外線による劣化
ゴム製のタイヤは紫外線によって劣化が進み、ひび割れを起こしやすくなります。特に、野外で保管している車は、紫外線による「日焼け」でタイヤの硬化や変質が進行します。特に紫外線が強くなる3月から夏にかけては、屋外駐車中のタイヤの劣化には注意が必要です。
未使用のスタッドレスタイヤも直射日光にさらされると、ひび割れを起こす可能性があります。できる限り日陰で保管し、タイヤカバーを使用するなどの対策が効果的です。
タイヤのひび割れの予防策

タイヤのひび割れ対策は、安全な走行を守る上で必要不可欠です。日頃の点検や適切なメンテナンスが欠かせません。
以下では、ひび割れを予防する具体的な対策方法について解説します。
空気圧を適正に管理する
タイヤの寿命を延ばし、安全な走行を行うためには、適切な空気圧の維持が欠かせません。空気圧が低下すると、ひび割れが発生するリスクが高まるため、月に1度は空気圧を点検し、必要に応じて充填しましょう。
空気圧の点検は、エアゲージを使用することで簡単に行えます。エアゲージはガソリンスタンドで無料で使えたり、カー用品店で購入したりできるため、手軽に手に入ります。
特に高速走行をする前には、適正な空気圧であるかを確認することが重要です。適切な空気圧はタイヤの負担を軽減し、たわみを抑えることで、ひび割れの進行を防ぎます。また、空気圧の管理を習慣づけることは、タイヤの偏摩耗(片側だけが早く摩耗すること)を防ぐだけでなく、燃費の向上にもつながります。
運転時はタイヤに負担をかけない
運転時には、タイヤへの負担を軽減することが大切です。急な発進や急ブレーキ、急カーブなどの無理な操作は、タイヤの摩耗を早め、ひび割れが発生する要因のひとつとなります。運転する際には、緩やかな発進や、段階的にブレーキを踏むことを心がけましょう。
特に、停車時にハンドルを回す「据え切り」はタイヤへの負担が大きいため、できる限り避け、低速で走行しながらハンドル操作を行うようにします。普段から「いたわり運転」を意識することで、タイヤの寿命を延ばし、安全性を維持できます。
不要な荷物は車から降ろす
車内に積んでいる不要な荷物を降ろすことはタイヤへの負担を軽減するために大切です。積載できる重量と乗車定員が定められているため、規定内で走行することもタイヤのひび割れや摩耗を防ぐことにつながります。
一般的な乗用車の場合、積載重量の目安として「55kg×乗車定員数」とされています。使用頻度の低い荷物は、多少面倒でも、必要なときだけ車に積み込みましょう。定期的に車内の荷物をチェックし、適切な重量管理を心がけることで、タイヤの寿命を延ばし、快適な走行を維持できます。
タイヤスタンド/ラックを利用する
タイヤの保管には、タイヤスタンドやラックの利用がおすすめです。これらはタイヤへの負担を軽減し、コンパクトに収納できるメリットがあります。
基本的な保管方法は、ホイール付きタイヤは横置き、タイヤのみの場合は縦置きです。
ホイール付きの場合
横にして置くことで、タイヤにかかる荷重が均一になり、変形を抑えられます。タイヤスタンドやラックを使用することで、より安定した状態での保管が可能です。
タイヤのみの場合
縦置きが適しており、変形を防ぎながら保管できます。
タイヤスタンドやラックには、横置き用と縦置き用の両タイプがあるので、タイヤの状態にあわせて選びましょう。
タイヤカバーなどを使い紫外線を避ける
保管時にはタイヤカバーを使って紫外線や雨風から守ることが重要です。理想は屋内保管ですが、屋外でもタイヤカバーを使えば劣化を抑えるのに効果的です。
保管前にはタイヤをしっかり洗い、乾燥させた上で、直射日光を避けた場所に保管するのがおすすめです。
なお、装着中のタイヤにはタイヤカバーは利用できません。車全体を覆う車カバーを使用すれば、紫外線や雨風を防げるだけでなく、防犯対策にもなります。
まとめ
タイヤのひび割れは、紫外線、空気圧の低下、経年劣化など、さまざまな要因で発生します。ひび割れが浅い場合は、通常の使用に問題はありませんが、過度なひび割れが発生した場合は、速やかにタイヤを交換しなければなりません。
日頃からタイヤの状態をチェックし、適切な対策をし、安全走行に備えましょう。


