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更新日:2025年4月24日

超音波カッターとは?仕組みや種類、切れるもの、選び方を解説

超音波カッター
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刃先を振動させて物を切断する超音波カッターは、小さな力で綺麗にカットできるため、幅広い分野で活用されています。本記事では超音波カッターの仕組みや種類、適した対象物や選び方、使用時の注意点などについて解説します。切断したい素材や用途に応じた超音波カッターの種類が分かるので、製品選びの参考にしてください。

超音波カッターとは

超音波カッターとは、超音波を使って物を切る道具です。

超音波とは、人間が聞くことのできない高い周波数を持つ音波のことです。音は物体の振動が空気や水に伝わり、その音の波を耳の鼓膜で受けることで認識されます。通常、人間の耳で認識できる周波数は20Hzk以下と言われています。20Hzkとは1秒間に2万回の振動があるということです。つまり1秒間に2万回以上の振動がある音波は、超音波に分類されます。

超音波カッターは発振器・振動子・ホーン(刃物)で構成されており、毎秒2万回以上の細かな振動をホーンに伝えることにより、対象物をカットします。一般的な超音波カッターの周波数は20kHzですが、中には40kHz程度の周波数が高い製品もあります。種類も工場などで使われる大型のカッターから、卓上のコンパクトなタイプまで多岐にわたります。

高周波の振動を用いるため、少ない力で高速で作業が行え、対象物への負荷も軽減できます。刃物に力をかける必要がないため、素材の変形や破損が少なく綺麗に切断できるのがメリットです。また、作業時に切り粉や煙などを発生させないため、作業員の健康面や環境面でも悪影響が少ないでしょう。

超音波カッターの仕組み

超音波カッターを構成するのは前述の通り、発振器・振動子・ホーンの3つです。

超音波カッターを作動させると、まず発振器から高電圧が振動子に送られます。振動子には圧電素子が組み込まれており、発振器から受けた電圧は振動子で振動に変換されます。その振動が増幅されて大きな振動としてホーンに伝わり対象物に接触すると、応力集中や摩擦熱で接触面が融解したり破壊されたりして、対象物が切断されるのです。これが超音波カッターで物を切る仕組みです。

超音波カッターの種類

工業用超音波カッター

工業用の超音波カッターは、一般的な製品より出力が強いため、硬い材料や厚みのある材料でも切れ味よくカットできるのが利点です。厚手のゴムや布、プラスチックなどの切断に使用されるほか、バリ取りにも活用されています。

通常の超音波カッターで切断できるのは厚さ5ミリ程度までですが、工業用では厚さ200ミリ程度までなら一度に切断できます。少ない力で大量にカットでき、切り粉や白化も少ないので、効率的に作業を進めることが可能です。また、構造上パワーが強いのにかさばらないため、ロボットや機械などにも搭載が可能です。

手元スイッチ型超音波カッター

ハンドピース部分にスイッチが付いているタイプの超音波カッターです。手元のスイッチを押している間だけ作動するので細かな調整がしやすく、コンパクトで軽いため小回りもききます。ただ、片手がスイッチの起動とカッターの作業で塞がってしまうため、両手で固定しなければならないような大きな対象物には不向きです。

紙やフイルムといった薄い素材や、片手で固定できる小さな素材、細かな作業が必要な製品などに適しています。また、厚さや硬さに応じて力の調整が必要な場合にも使いやすく、かさばらないので持ち運びにも便利です。

フットスイッチ型超音波カッター

フットスイッチ型は、オンとオフを切り替えるスイッチが足元にあるタイプの超音波カッターです。手元スイッチに比べると直感的な操作性では劣りますが、慣れれば力の調整は難しくはなく、初心者でも使いやすいでしょう。

何より両手が使えるのがメリットで、カットする際に両手を使って角度や位置を変えねばならない、大きな素材の裁断にも適しています。

プラスチックやアクリル、ゴムや革、布など柔らかい素材のほか、カーボンのような複合素材のカットにもおすすめです。

TAF回路搭載型超音波カッター

TAF回路搭載型超音波カッターは、対象の素材にあわせて、自動で振動の強弱を調整できるのが特長です。

TAFとは「トランスアンプフィードバック」の略称です。TAF回路とは、交流回路の電流の流れやすさ(インピーダンス)を測定し、最適な出力と振動数を導き出す回路のことを指します。

TAF回路が搭載されていないと、強い振動が生じて切断面が乱れたり、素材が傷んだりする場合があります。また、熱に弱い素材の場合は、切断面が熱で溶けたり焦げたりする可能性もあります。

TAF回路が搭載されていれば、自動で適した振動や出力に調整してくれるため、均一な切断面を作ることができ、効率的に作業が行えます。また、電力を出力しすぎる心配もないので、コストパフォーマンスやエコの面でも優れています。特に熱に弱い素材や、薄い物をカットする際におすすめです。

超音波カッターで切れるもの

超音波カッターはさまざまな物をカットできるため、幅広い分野で活用されています。

一般的な工業分野ではプラスチックや布、ゴムやアクリル、フイルムや塩化ビニル、紙やダンボールなどの切断に使用されます。ほかにも電子機器の基板や医療に使うマウスピースや石膏の切断に使われる場合もあります。

また食品関係ではパンやケーキ、サンドイッチや寿司、アイスクリームなど、包丁で力をかけると切り口が変形してしまう素材のカットにも重宝する道具です。

一般的に薄い素材や柔らかい素材の切断に適しており、表面がもろく切断すると崩れやすいものや、硬さにばらつきがある素材、粘りがあるものの切断にも活用できます。

超音波カッターでは切れないもの

超音波カッターは、硬くて壊れやすいものの切断には適していません。ガラスや石、金属や陶器、セラミック、凍った肉や魚などへの使用は避けるようにしましょう。また、木材への使用も熱で焦げてしまうため不向きです。

さらに一般的な超音波カッターは、適用できる厚さの限界を3~5ミリ程度に設定している場合が多く、分厚い素材の切断には適していません。ただし、一部の工業用超音波カッターでは、200ミリ程度の分厚い素材までカットできます。

超音波カッターの選び方とは?確認したいポイント

スイッチ

前述したように、スイッチは手元にあるタイプと足元にあるタイプ(フットスイッチ)の2種類があります。

手元スイッチ型は細かい調整ができるため、部品など小さなもののカットも可能で、片手で行える作業に適しています。また、手元スイッチ型の多くは、スイッチを押している間だけ作動するタイプです。対象物をカットしながらスイッチを押し続けなければならない面倒さはありますが、誤作動の可能性が少なく安全性の面で優れています。しかし、スイッチの調整を手で行わなければならないため、作業に集中しにくいデメリットがあります。

一方、足元にあるフットスイッチ型は電源のオン・オフを足で行えるため、手元は作業に集中できるのがメリットです。両手を使えるので、大きな布など両手で対象物を固定したり動かしたりしながら作業を進めたい場合に適しています。広範囲に効率的に作業を進めたいなら、フットスイッチ型がおすすめです。

周波数

周波数とは「○kHz」で表記される値で、1秒間にホーンが何回振動しているかを示しています。

20kHz – 30kHzは低周波、30kHz – 40kHz以上は高周波に分類され、一般的に周波数が高いカッターの方が切断力が高く、切断面を綺麗に仕上げられます。一方で、高周波なほど熱が生じやすいため冷却が必要になったり、切断面が溶けたりする可能性もあります。また、高周波なほど価格も高価になりがちです。

反対に低周波のカッターは発熱が抑えられ、切断力が強いため分厚かったり硬かったりする素材でも切断しやすいのが利点です。反面、切断面が荒くなる傾向があり、粉なども飛び散りやすいのがデメリットです。

20kHz程度の低い周波数のタイプは、プラスチックやゴムなどの切断に適しています。一方、40kHz程度の高い周波数のタイプは、それらに加えてシートや紙などの薄い素材も綺麗に切ることが可能です。

カッターのタイプ別に見ると、強い切断力が必要になる工業用超音波カッターは低周波が多く、素材に応じて振動が変えられるTAF回路搭載超音波カッターは、低周波から高周波まで幅広くカバーしています。

一方、手元や足元にスイッチのあるタイプの超音波カッターは、細かな作業に適しており、30kHz以上の高い周波に対応するモデルが多いようです。切断する素材や作業内容に応じて、適した周波数のタイプを選びましょう。

TAF回路の有無

TAF回路には、切断する素材にあわせて振動数や出力を調整してくれる利点があります。TAF回路がなければ素材に見合わない高速振動によって起こる摩擦熱で、切断面が溶けたり変形したりする可能性もあります。

また、振動数が多ければ音も大きくなるため、振動数の調整ができないカッターの場合、使用する環境によっては周囲に迷惑をかけるかもしれません。切断する素材が決まっておらず、1つのカッターでさまざまな素材を切りたい場合は、TAF回路の機種を選ぶとよいでしょう。

切断時の冷却力

超音波カッターは振動で対象物をカットするため、作動時に熱が発生します。その熱を放置したままにしていると、ホーンの傷みや振動子の故障などにつながりかねません。また、切断面が溶けたり焦げたりする可能性もあります。

多くのメーカーはオーバーヒートを防ぐために、以下のようなさまざまな対策を施しています。

  • 温度センサーを内蔵し、熱が発生しすぎると自動的に停止する
  • 熱が発生しにくい設計になっている
  • 冷却用のエアニップルが付いている

超音波カッターを選ぶ際は、商品説明をよく読んでオーバーヒート対策が施されているかも確認しましょう。ただ、冷却機能があるような高機能な製品は価格も高くなる傾向があるので、予算とのバランスも考慮する必要があります。

超音波カッターを使用する際の注意点

安全性に配慮する

超音波カッターは通常の刃物よりよく切れるため、ちょっとしたミスが大けがにつながる恐れがあります。使用する際は作業者の安全確保のため、保護具の着用を義務づけましょう。

特にプラスチックなどの切れ端が飛んでくる場合もあるため、保護メガネの着用は必須です。ほかにも手を保護するための耐切創手袋や、体を保護するためのエプロンの着用も推奨されます。

作業環境も周囲が散らかっていたり、作業台が密集していたりすると作業がしにくいため、しっかりと作業員どうしの間隔を確保し、作業しやすい環境を整えましょう。また、作業中や移動中に転倒すると危険なため、床などが滑りやすくなっていないか、物が散乱していないかも注意しましょう。作業の前には動線を妨げる物がないよう、周囲を片付けておくことも重要です。

定期的にメンテナンスを行う

安全に長く使い続けるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。特にホーンの部分はしっかりと固定されていなければ切れ味が悪くなり、故障や事故につながります。

また、固定具に汚れや切り粉などがたまっていても、ホーンに振動が伝わりにくくなります。ホーンの固定具に緩みや汚れがないかは、使用前に必ず確認するようにしましょう。もし緩みがあればしっかりと締め直し、汚れや粉などがたまっていれば取り除くようにします。

固定具や刃は消耗品なので、汚れたり変形したり、摩耗したりしていれば、新しいものに交換しましょう。

まとめ

超音波カッターは紙や布、ゴムやプラスチックなど、柔らかく薄い素材を綺麗に切るのに適しています。スイッチの位置や周波数の違い、TAF回路の有無などで適した素材や用途が異なるので、製品選びの際はこれらをよく確認しましょう。また使用時は安全に配慮し、定期的にメンテナンスを行うことも重要です。

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