更新日:2026年2月12日
【2026年施行予定】労働施策総合推進法の改正内容!カスハラ対策が義務化

2026年に施行予定の労働施策総合推進法の改正により、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が全ての事業主に義務付けられることになりました。従業員の精神的負担や離職の増加といった深刻な状況を背景に、企業には防止策の強化や相談体制の構築など、より具体的な取り組みが求められています。
本記事では、労働施策総合推進法改正の背景やカスハラ対策をはじめとする改正内容、企業が今後備えるべき対策のポイントについて詳しく解説します。
労働施策総合推進法の基本

労働施策総合推進法は、正式名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」と呼びます。
この法律は、労働市場の多様化や少子高齢化といった社会変化を背景に、労働者が安心して就業を継続できる社会の実現を目的として制定されました。具体的には、長時間労働の是正、キャリア形成支援、職場環境の改善、そして生きがいのある働き方の促進などを柱としています。
パワハラ防止法と呼ばれる理由
2018年の法改正により、パワハラの定義が明確化され、企業の防止義務が法律上定められました。企業は職場でのハラスメント防止に向けた方針の明確化や相談窓口の設置など、具体的な対策を講じることになりました。
この改正によって、労働施策総合推進法は一般的に「パワハラ防止法」と呼ばれるようになった経緯があります。法律の適用範囲はパワハラにとどまらず、セクシュアルハラスメント(セクハラ)や妊娠・出産・育休・介護休暇などに関するハラスメント防止措置も含まれています。
つまり、働く全ての方が尊重される職場環境の整備を促す包括的な枠組みといえるでしょう。
2022年には中小企業もパワハラ対策が義務化
パワハラ防止措置の義務化は、2020年6月から大企業を対象に先行施行されました。その後、2022年4月には中小企業にも同様の義務が拡大され、全ての事業主がハラスメント防止措置を講じることが求められるようになりました。
この流れは、企業規模を問わず「人を大切にする経営」を社会全体で実現していくという国の方針を示しています。
<参照>
e-Gov法令検索 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
労働施策総合推進法の改正 (パワハラ防止対策義務化 )について
2026年には一部改正によってカスハラ対策が義務化

2026年に施行予定の労働施策総合推進法の一部改正では、顧客や取引先からの暴言・威圧的な言動・過剰な要求など、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策が全ての事業主に義務付けられることが明確に定められました。そのため、企業は従業員を守るための方針策定や相談体制の整備など、組織的な対応を行う必要があります。
カスハラはこれまで、労働基準法や労働安全衛生法などで明確に定義されておらず、行政指導の範囲にとどまっていました。しかし、社会問題として深刻化したことを受け、厚生労働省は行政指導の一環として「職場におけるハラスメント対策に関する指針」において、防止すべき行為の一つとして位置付けています。
今回の法改正は、カスハラへの取り組みが努力義務から法的義務へと格上げされ、大きな転換点といえます。
カスハラとは
カスハラとは、顧客や取引先など事業活動に関わる外部の相手方から、従業員に対して行われる著しく不当な要求や言動を指します。代表的な例として、暴言・威嚇・過剰なクレーム、長時間の拘束、SNS上での名誉毀損などが挙げられます。
これらの行為は従業員の心身に深刻な負担を与えるだけでなく、離職や労災認定につながるケースも少なくありません。
カスハラ対策が義務化される理由について
近年、従業員への暴言や不当要求によるメンタルヘルス不調・退職・労働災害認定などが相次いでいます。カスハラは職場の安全衛生にも直結する問題であり、放置すれば企業の生産性やブランド価値にも大きな影響を及ぼします。
厚生労働省が令和5年度に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に顧客などから著しい迷惑行為を受けたと回答した労働者は10.8%に上りました。また、同調査では企業の27.9%が従業員からカスハラに関する相談を受けた経験があると回答しており、そのうちの85%超が「ハラスメントに該当すると判断した」としています。
接客業・医療・介護などの分野を中心に、カスハラ被害を訴える労働者は年々増加傾向にあります。こうした背景から、2026年改正では事業主に対して「カスハラ防止方針の明確化」「相談窓口の設置」「被害発生時の迅速な対応」を義務として求めています。今回の法改正は、同法が掲げる「全ての労働者の職業生活の充実」という理念を、顧客対応領域にも広げたものです。
全ての事業者が対象になる
今回の改正の特徴は、企業規模を問わず全ての事業主が対象となる点です。大企業だけでなく、中小企業や個人事業主であっても、従業員を雇用している場合にはカスハラ防止措置を講じなければなりません。
取り組み内容は企業の実情に応じた対応が想定されており、企業規模や業種に合わせた方針策定や体制づくりが求められます。
さらに、附則第8条の2では、特定受託事業者(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、いわゆるフリーランス法で保護対象とされる個人事業者等)に対しても、顧客や取引先からの不当な言動によって就業環境が害されることのないよう、必要な施策を検討し、必要がある場合には措置を講ずることが明記されました。
そのため、現時点では検討段階にとどまりますが、今後はカスハラ防止の枠組みが労働者に限らず、フリーランスを含む多様な働き方全体へと広がっていく可能性がある点にも留意しておきましょう。
<参照>
厚生労働省 令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について
厚生労働省 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)
企業がカスハラ対策として導入するべき対策

2026年の法改正により、カスハラ対策は努力義務ではなく全ての事業主に課される法的責務となります。企業は、顧客や取引先などからの不当な言動に対して、従業員が安心して対応できるような体制を構築しなければなりません。
ここでは、企業が具体的に取り組むべき主要な施策を解説します。
企業としてのカスハラの明確な定義付けと周知徹底
まず必要なのは、自社におけるカスハラの定義を明確にし、全従業員へ周知することです。どのような行為をカスハラと見なすのか、基準をあいまいにしたままでは現場対応がばらつき、被害の見逃しにつながります。
企業は、社内規程やコンプライアンス方針に「顧客等からの不当な言動の禁止」などを明文化し、定期的に研修や掲示等を通じて浸透させる必要があります。また、従業員に「理不尽な要求には応じなくてもよい」ことを明確に伝え、心理的安全性を確保することも重要です。
組織としての方針を明示することで、現場担当者が一人で抱え込むことを防げます。
現場対応の手順・マニュアルの整備
カスハラが発生した際の対応フローをマニュアルとして体系化しておくことも不可欠です。担当者の判断基準やエスカレーション手順、記録・報告の方法、二次被害防止の措置などを定め、実際の事例を踏まえた運用を行います。
こうした手順が明確であれば、現場での迷いや属人的対応を減らし、迅速かつ一貫した対応が可能になります。特にカスハラが発生しやすい顧客対応部門やコールセンターでは、録音・記録の活用や「対応を打ち切る判断基準」の設定も視野に入れた対策を行いましょう。
相談体制の整備と適切な対応の実施
被害を受けた従業員が安心して相談できる窓口を整えることも、重要な義務の一つです。相談窓口は人事・総務部門だけでなく、外部専門機関を活用することも想定されています。
相談を受けた場合は、事実関係の確認・迅速な対応・再発防止措置の提示の三段階を原則とし、個人情報の保護と秘密保持を徹底する必要もある点に注意しましょう。
また、相談窓口の対応者も精神的な負担を抱えやすいため、カウンセリングスキルや傾聴姿勢の研修を実施し、相談体制全体の運用品質を高めることが重要です。
事実確認とリスク評価の実施
カスハラの訴えがあった場合は、感情的な判断を避け、客観的事実の確認とリスク評価を行います。顧客とのやり取りを記録し、第三者の視点で検証することで、事案の再発防止につながります。
同時に、顧客との関係維持を目的に過度に従業員を犠牲にする対応を取らないよう、企業としての一線を明確にしましょう。被害が長期化する恐れがある場合には、適切な人員配置や勤務調整を行うなど、職場環境面でのリスク低減などの措置を併せて実施する必要があります。
従業員の安全確保と心身へのケア
カスハラ被害により心身に不調を抱えた従業員には、医療機関やカウンセリング機関との連携による支援が必要です。企業は、労働安全衛生法に基づき、メンタルヘルスケアや職場復帰支援を行う体制を整えておきましょう。
また、ほかの従業員や管理職などが被害者を責めるような二次被害を防止し、再発防止策を共有するなど、職場全体で支える姿勢を示すことが信頼回復につながります。
従業員教育・研修の実施
定期的な教育・研修も、カスハラ対策に欠かせません。管理職や現場担当者を対象に、カスハラ事例の共有や対応演習を行い、実践的なスキルを養う機会を設けましょう。
教育は単発ではなく、継続的に実施することが重要です。社会情勢や顧客行動の変化に応じて内容を更新し、企業全体のリスクマネジメント力を高める必要があります。
2026年改正で追加されるその他の主なポイント

2026年に施行予定の改正労働施策総合推進法では、カスハラ対策の義務化に加え、働く全ての方の就業機会の拡大と職場環境の改善を目的とした改正が行われます。
改正の方向性は、単なるハラスメント対策の強化にとどまらず、多様な人材が安心して働き続けられる社会の実現を目指す点にあります。以下で詳しく見ていきましょう。
多様な人材の活躍促進
労働市場における「機会の不均衡」を是正し、より多様な人材が活躍できる環境づくりを目指すことが、今回の改正の柱のひとつとなりました。就職氷河期世代や子育て世代、高齢者など、労働参加が課題とされてきた層に対し、企業が積極的に雇用の場を提供できるよう支援する方向性が示されています。
この背景には、人口減少による労働力不足と、多様な就業ニーズへの対応が急務となっている現状があります。厚生労働省は、キャリア形成支援や職業訓練、リカレント教育などの推進を通じて、世代・性別・立場を問わず働ける仕組みづくりを求めており、こうした流れを踏まえた社内教育制度の拡充や柔軟な働き方の導入が求められるでしょう。
職場環境改善の推進
改正法では、メンタルヘルス対策やハラスメント防止などを含む、働きやすい職場環境整備が重要な柱として位置付けられました。長時間労働の是正や柔軟な働き方の推進だけでなく、相談窓口の整備や職場内コミュニケーションの改善など、企業文化そのものの見直しが求められています。
また、労働者一人ひとりが自らの健康やキャリアを意識しながら働ける環境を整備することも課題とされています。
事業主責務の明確化
今回の改正では、労働者の職業生活全般を支えるため、企業が主体的に果たすべき責務がこれまで以上に明確化されました。これは、単に法令遵守にとどまらず、企業として社会的責任を果たす姿勢を法的にも明文化するものです。
例えば、企業は法令対応のみならず、職場の実態に即した労務管理やキャリア支援、教育体制の整備などを通じ、従業員が長期的に安心して働ける仕組みを構築することが求められます。
改正労働施策総合推進法は、労働安全衛生法や男女雇用機会均等法などと並び、包括的な「働き方法制」の基幹法としての性格を強めつつあるといえるでしょう。
<参照>
厚生労働省 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の概要
労働施策総合推進法に違反した場合のリスク

労働施策総合推進法では、パワハラやカスハラを防止するための措置義務が明確に定められています。
防止措置を講じていない場合、労働局からの助言や指導、勧告が行われる場合があります。これらは刑事罰に直結するものではないものの、行政記録として残るため、企業にとって大きなリスクといえるでしょう。さらに、改善が見られない場合には企業名が公表され、事実上の制裁として機能するケースも想定されます。
また、ハラスメント対応を怠った結果、労働者から損害賠償を請求されるケースも増加しています。相談対応の記録や再発防止策が不十分な場合には、企業の管理監督責任を問われるリスクがある点も理解しておきましょう。
こうした対応不足は、企業ブランドの毀損や採用難につながるリスクもあります。場合によってはSNSなどでの情報拡散により、短期間でイメージが損なわれることもあり、一度失った信頼を回復するには長い時間とコストが必要です。
企業としては、コンプライアンス体制を整備し「ハラスメントを許さない」という姿勢を明確に打ち出すことが重要です。
よくある質問(FAQ)

改正労働施策総合推進法に関しては、「自社も対象になるのか」「罰則はあるのか」など、具体的な対応を検討する上で疑問を持つ方も多いでしょう。
ここでは、2026年施行予定の改正内容に関する代表的な質問を取り上げ、企業が押さえておくべきポイントを紹介します。
Q1. 労働施策総合推進法の改正により、カスハラ対策はどの規模の会社でも必要になりますか?
A. 2026年施行予定の改正では、カスハラ防止措置が全ての事業主に義務付けられます。これまで努力義務にとどまっていた中小企業も対象となり、企業規模を問わず、明確なルール整備と従業員保護の体制づくりが求められます。
Q2. 労働施策総合推進法の改正では、カスハラ以外にどんな改正点がありますか?
A. 改正では、カスハラ防止以外にも「多様な人材の活躍促進」や「職場環境の改善」などが追加されました。特に就職氷河期世代や子育て・介護と仕事を両立する層、高齢者の就労支援など、ライフステージに応じた安定的な雇用確保が重視されています。
Q3. 労働施策総合推進法の改正に違反した場合、罰則はありますか?
A. 改正法には直接的な刑事罰は定められていませんが、行政指導や勧告、企業名の公表といった措置を受ける可能性があります。また、ハラスメント対応を怠った結果、従業員から損害賠償を請求されるなど、民事上の責任を問われるリスクも否定できません。
Q4. 労働施策総合推進法の改正で、企業はどんな対策から始めるべきですか?
A. まず社内でのハラスメント防止方針を明文化し、カスハラを含むあらゆるハラスメントの定義と対応手順を整理することが重要です。その上で、従業員が安心して相談できる窓口の設置や、管理職向けの研修実施を優先的に進めるとよいでしょう。
まとめ
2026年施行予定の労働施策総合推進法の改正は、カスハラ対策の義務化をはじめ、企業の責務をより明確化する重要な転換点です。企業規模を問わず、全ての事業主が働く方の安全と尊厳を守る体制を整えることが求められています。
法改正を契機に、ハラスメント防止を一時的な対応にとどめず、組織文化として根付かせる取り組みが今後の企業価値を左右するといえるでしょう。
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