更新日:2026年1月28日
飲食店でのノロウイルス対策完全ガイド!感染症予防法も解説

ノロウイルスは、飲食店で特に注意が必要な感染症の一つです。わずかなウイルス量でも感染し、秋から春にかけて飲食店での発生が増える傾向にあります。発生すると営業停止や損害賠償など経営への影響も大きく、日頃の衛生管理が欠かせません。
本記事では、ノロウイルスの特徴や食中毒の発生件数、飲食店で食中毒が発生した時の対処法、予防方法を解説します。
ノロウイルスの特徴と基礎知識

ノロウイルスは、感染性胃腸炎の主な原因物質です。年間を通して発生しますが、特に秋から春にかけて多発する傾向があります。ノロウイルスに感染した時の症状は比較的軽症なことが多く、通常であれば2~3日で回復します。しかし、感染力が強いため、わずかな量のウイルスが体内に入るだけで発病するケースは珍しくありません。
ノロウイルスの特徴は以下の通りです。
- 年齢問わず、少量で人に感染するほど感染力が強い
- 人の腸管内でのみ増える
- 食品のなかでは増殖しないため、食品の鮮度に関係なく感染する
- 効果のある治療薬がなく、何度も感染する
ただし、以下のように食中毒はウイルスだけでなく、細菌や化学物質、自然毒からも起こりえます。そのため、幅広い対策が必要です。
| 原因 | 主な微生物や寄生虫 | 発症までの時間 | 主な症状 |
|---|---|---|---|
| 細菌 |
| 数時間~数日 |
|
| ウイルス |
| ノロ:24~48時間 |
|
| 化学物質 |
| 数分~数時間 |
|
| 自然毒(動物性・植物性) |
| 数分~数時間 |
|
| 寄生虫 |
| 数時間~数日 |
|
<参照>
農林水産省「食中毒の原因と種類」
厚生労働省「食中毒」
ノロウイルスによる食中毒の症状
ノロウイルスに感染すると、24~48時間程度の潜伏期間の後に症状が表れます。主な症状は以下の通りです。
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 発熱
- 頭痛
- 咽頭痛
- 食欲不振
- 筋肉痛 など
嘔吐は、突然急激に強く起こる場合があります。いずれの症状も、通常は3日以内で自然に回復します。ただし、乳幼児や高齢者、免疫不全など抵抗力の弱い方は重症化する恐れがあるため、注意が必要です。
一方で、症状が全くない、もしくは軽い症状しか表れない不顕性感染の場合もあります。不顕性感染の方も体内にノロウイルスを保有しており、ウイルスを排出しているため、感染源となる可能性があります。
ノロウイルスによる食中毒の原因
過去の調査結果をみると、食品から原因となるウイルスを検出するのは難しく、事例の約7割で原因となる食品が特定できていません。原因として多いのは、感染した食品取扱者によって食品が汚染されるケースです。
カキをはじめとする二枚貝の喫食による事例も報告されています。ノロウイルスは貝の体内では増殖しないため、人の体から排出されたウイルスが河川から海へ流れ込み、二枚貝の体内に蓄積されると考えられています。
感染者の手指を介して食材が二次汚染され、食中毒につながる事例もあります。
ノロウイルスの主な感染経路は以下の通りです。
- 人のふん便や吐ぶつに含まれる大量のウイルスが、手指から二次感染する
- 人と人との接触機会が多い場所で飛沫感染により直接感染する
- 食品取扱者を介して汚染された食品を食べる
- 汚染された二枚貝を、生または十分に加熱しないで食べる
- 汚染された井戸水や簡易水道を、消毒が不十分なまま摂取する
ノロウイルスによる食中毒の発生件数

ノロウイルスによる食中毒の発生件数は、年や季節、施設によって異なります。ここでは、年や月、原因施設ごとの発生件数について解説します。
年ごとの発生件数
厚生労働省の調査によると、平成27年~令和6年までの、ノロウイルスによる食中毒の発生件数は、以下の通りです。
| 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 事件数 | 481 | 354 | 214 | 256 | 212 | 99 | 72 | 63 | 163 | 276 |
| 患者数 | 14,876 | 11,397 | 8,496 | 8,475 | 6,889 | 3,660 | 4,733 | 2,175 | 5,502 | 8,656 |
※事件数:件 患者数:人
<参照>
厚生労働省「食中毒統計資料」
令和6年の統計では、事件数は総事件数1,037件のうち276件で、その割合は26.6%でした。患者数では総患者数14,229名のうち8,656名で、その割合は60.8%です。事件数割合に対する患者数割合を比較すると、患者数は決して少なくないことがわかります。
月ごとの発生件数
厚生労働省の調査によると、令和2年~令和6年までの、ノロウイルスによる食中毒の月ごとの発生件数は、以下の通りです。
| 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 令和2年 | 事件数 | 35 | 32 | 18 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 | 2 | 5 |
| 患者数 | 1,205 | 1,119 | 371 | 6 | 156 | 0 | 0 | 0 | 58 | 19 | 28 | 698 | |
| 令和3年 | 事件数 | 6 | 12 | 12 | 10 | 4 | 5 | 1 | 1 | 1 | 0 | 4 | 16 |
| 患者数 | 282 | 294 | 328 | 2,891 | 87 | 159 | 31 | 165 | 7 | 0 | 102 | 387 | |
| 令和4年 | 事件数 | 18 | 9 | 12 | 5 | 3 | 1 | 3 | 0 | 0 | 2 | 3 | 7 |
| 患者数 | 868 | 162 | 367 | 140 | 63 | 3 | 193 | 0 | 0 | 127 | 54 | 198 | |
| 令和5年 | 事件数 | 24 | 28 | 34 | 13 | 9 | 4 | 2 | 1 | 5 | 2 | 11 | 30 |
| 患者数 | 884 | 1,344 | 1,111 | 512 | 301 | 38 | 20 | 13 | 130 | 17 | 190 | 942 | |
| 令和6年 | 事件数 | 58 | 70 | 59 | 27 | 11 | 7 | 4 | 4 | 2 | 2 | 7 | 25 |
| 患者数 | 2,393 | 1,929 | 1,447 | 727 | 267 | 182 | 114 | 715 | 35 | 76 | 210 | 561 |
※事件数:件 患者数:人
<参照>
厚生労働省「食中毒統計資料」
一年を通して発生はみられますが、11月頃から発生件数が増加しはじめ、12月から翌年1月が発生のピークになる傾向があります。
食中毒発生の原因施設で最も多いのは飲食店
厚生労働省「過去の食中毒事件一覧」によると、過去5年間(2020年~2024年)で食中毒が発生した609件のうち、原因施設として最も件数が多いのは、飲食店でした。次いで仕出屋が53件、旅館が38件となっています。

引用:町田予防衛生研究所「ノロウイルス食中毒の症状と予防方法5つ」
全体の70%以上が飲食店であり件数としても400件を超えています。そのため、飲食店に携わる方は十分な対策が必要です。
飲食店で食中毒が発生した時の対応

万が一、お店で食中毒が発生してしまった場合、被害を抑えるために迅速な対応が求められます。対応を誤ると、お店の評判を落とし、経営に影響を与えかねません。ここでは、飲食店で食中毒が発生した場合の対応について解説します。
保健所への連絡
お客様から「お店の料理が原因で食中毒になった」と連絡があった場合は、すぐに保健所に連絡しましょう。お客様がまだ医療機関を受診していない場合は、原因特定のために医師の診察が必要であることを伝え、受診を勧めましょう。
保健所に報告すると、厨房の拭き取り調査や従業員の細菌検査、検便などが実施され、商品の仕入れ状況や調理マニュアルの提出を求められることもあります。
ノロウイルスによる食中毒と正式に認定されると、食品衛生法に基づき3日間程度の営業停止処分、または営業禁止処分を受けるのが基本です。営業停止処分を受けると、期間中の売上がなくなるだけでなく、停止処分後もお客様から敬遠される恐れがあります。
<参照>
「食品衛生法」
お客様への損害賠償
提供した料理が原因で食中毒が発生した場合、お客様に治療費や慰謝料などの損害賠償を支払わなければなりません。医療機関での支払いに加え、通院にかかった交通費や休業による損害なども支払いの対象です。そのため、ひとり当たりの損害賠償は数万円にのぼることもあります。
パーティーや懇親会など、大人数への料理の提供で食中毒が発生した場合、損害賠償金はより高額になります。閉店に至る飲食店も珍しくありません。
スタッフが感染した場合の対応
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」によると、ノロウイルスの症状がない場合でも、検査で陽性と判明した調理従事者は、陰性が確認されるまで食品に直接触れる調理作業を控えることが望ましいとされています。出勤停止の日数に法的な定めはありません。キッチンスタッフは、検便で問題ない結果が出るまで調理作業を控えたほうがよいでしょう。
ノロウイルスの症状は2~3日で治まりますが、発症後1週間ほどは自宅で安静にすることが望ましいです。症状が治まってから少なくとも数日間は様子をみて、検便で問題がないことを確認してから出勤してもらいましょう。
迅速検査キットを使用すれば、15分程度で検査結果が判明します。
<参照>
厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」
ノロウイルスによる食中毒の予防方法

ノロウイルスによる食中毒は、日々の基本的な衛生管理を徹底することで予防できます。お店の信頼を守るためにも、スタッフ全員で予防意識をもつことが大切です。ここでは、ノロウイルスによる食中毒の予防方法について解説します。
食品の加熱処理
ノロウイルスは食品の中心部まで加熱すると死滅します。85~90℃で90秒間以上加熱しましょう。ノロウイルスに汚染されやすい二枚貝を扱う時や、大人数に食事を提供する施設の場合は、十分な加熱が重要です。生での食事提供は、できるかぎり避けましょう。
手洗いの徹底
調理や料理を提供する前はもちろん、トイレや吐瀉物(としゃぶつ)を処理した後も、手洗いを徹底しましょう。消毒用エタノールによる手指消毒だけでは除菌の補助にしかなりません。石けんと流水を使った手洗いをしましょう。
手洗いの際は常に爪は短く保ち、指輪を外して洗います。石けんを十分に泡立て、ブラシなどを使用してすみずみまで洗いましょう。温かい流水で洗い流した後、清潔なタオルやペーパータオルで水分を拭き取ります。
手洗い後にアルコール手指消毒剤を使用すると、より効果が高まります。塩素系消毒剤は手指に使用すると手荒れの恐れがあるため、手指を保護する意味でも、アルコール消毒のほうが好ましいでしょう。
手洗いの際は、以下の部分を特に重点的に洗うことが大切です。
- 指先
- 指の間
- 親指の周り
- 手首
- 手のしわ
調理台や調理器具の消毒
ノロウイルスは、高温での加熱や次亜塩素酸ナトリウムで失活化できます。調理器具は洗剤で十分に洗浄し、次亜塩素酸ナトリウムを用いた消毒液で浸すように拭きましょう。まな板や包丁、食器、ふきんなどは、85℃以上の熱湯で1分以上の加熱によりウイルスは死滅します。
二枚貝を扱う際は、調理器具をその都度洗浄・消毒し、ほかの食材への二次汚染を防ぎましょう。二枚貝専用の調理器具を用意することも有効です。
施設内の衛生管理
従業員同士の感染防止のため、日頃からトイレの清掃を徹底しましょう。便座だけでなく、ドアノブやレバーなど、手指が触れる場所も忘れずに消毒することがポイントです。トイレに行く際はエプロンを外す、タオルの共用は避けるなどの衛生管理も大切です。
以下の場所についても消毒を徹底しましょう。
- 客席
- ドアノブ
- 水道の蛇口
- トイレのスリッパ
- 床
- テーブル
- イス
- 引出しの取っ手 など
人が触る場所は、0.02%の次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。客席などで下痢や嘔吐があった場合、または感染が疑われる従業員がいる場合は、0.02%~0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使い、普段より頻繁に消毒しましょう。嘔吐物の処理が不十分な場合、室内にウイルスが拡散する恐れがあるため、注意が必要です。
スタッフの健康管理
食中毒の症状がある場合の勤務条件を、全従業員に周知することも重要です。調理従事者は、日頃から自身の健康状態を確認し、異変がある場合は責任者に報告することを徹底しましょう。
また、ノロウイルスに感染していても症状が出ないケースもあります。厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、10月~3月は月1回以上のノロウイルス検便検査が推奨されています。定期的なノロウイルスの検便も実施しましょう。
<参照>
厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」
まとめ
ノロウイルスは感染力が強く、飲食店で発生すると食中毒の原因になりやすいウイルスです。食中毒が発生すると、営業停止処分や損害賠償だけでなく、お店の信頼を失う恐れもあります。
ただし、食品の加熱処理や手洗いの徹底、施設内の衛生管理など、適切な予防策を講じれば感染を防げます。スタッフ一人ひとりの衛生意識を高め、お客様に安全な食事を提供しましょう。












