更新日:2026年2月26日
消毒に使える次亜塩素酸ナトリウムとは?用途別の濃度と注意点を解説

飲食店や商業施設、保育園、介護施設など、人が集まる現場で働いている場合、日頃から感染症対策に細心の注意を払うことが欠かせません。そのなかでも、適切な消毒液の選定と正しい使い方は衛生管理の質を大きく左右します。
本記事では、消毒液として広く利用されている「次亜塩素酸ナトリウム」の希釈方法や使用時の注意点、次亜塩素酸ナトリウムを現場に導入する際のポイントを解説します。
安全で適切な感染症対策を実施したい方は、ぜひ参考にしてください。
次亜塩素酸ナトリウムとは?

次亜塩素酸ナトリウムは、医療機関や介護施設、飲食店、保育園などで広く使われている消毒剤です。感染症対策や衛生管理への高い効果が期待できる一方で、正しい使い方を理解していないと効果が不十分になったり、素材を傷めたりすることもあります。
ここではまず、次亜塩素酸ナトリウムを含めた塩素系漂白剤の基本事項を解説し、次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水の違いも紹介します。
強力な除菌・漂白作用を持つ塩素系消毒剤
次亜塩素酸ナトリウムは、塩素系消毒剤の一つです。強力な殺菌力と除菌力を持っており、大腸菌や黄色ブドウ球菌、インフルエンザ、サルモネラ菌などはもちろん、一般的な薬剤では効き目が薄いノロウイルスへの効果も期待できます。
次亜塩素酸ナトリウムは、高い除菌力や殺菌力がある一方で、食品衛生法によって食品の殺菌・洗浄用途として認められています。そのため、医療や介護、食品業界などで幅広く使用される薬剤です。
「次亜塩素酸水」との違い
次亜塩素酸ナトリウムと名前が似ているため混同されがちですが、性質や使用用途は大きく異なります。主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 次亜塩素酸ナトリウム | 次亜塩素酸水 |
|---|---|---|
| pH | 弱アルカリ性 | 弱酸性 |
| 効果 |
|
|
| 手指への使用 | 不可 | 原則不可 |
| 金属への使用 | 不可 | 可能 |
| 長期保存 | 原則不可 | 原則不可 |
※上記表では、「原則不可」と「不可」を以下の考え方で使い分けています。
「原則不可」は、条件や使い方を限定すれば使用できるケースがあるものの、保存期間の短さや実務上の管理の難しさ、安全性・有効性が十分に評価されていない点から、日常的・一般的な使用は推奨しにくいものを指しています。
一方、「不可」は、素材への悪影響や安全面のリスクが明確で、基本的に使用を避けるべきものとして分類しています。
次亜塩素酸ナトリウムは、弱アルカリ性の薬剤です。皮膚に付着するとやけどのようになるため、手指の消毒などには使用できません。
次亜塩素酸ナトリウム消毒液の希釈方法

次亜塩素酸ナトリウムを消毒に使用するには、原液を希釈する必要があります。ここでは、用途別に推奨される濃度と、希釈方法を見ていきましょう。
嘔吐物、糞便が付着した床やおむつ
嘔吐物や糞便が付着した床やおむつなどを処理する際に推奨される、次亜塩素酸ナトリウムの濃度は0.1%です。嘔吐物や糞便には、ノロウイルスなどのウイルスが多く含まれるおそれがあるため、濃度が高い消毒液が必要になります。
原液濃度が5%の次亜塩素酸ナトリウムの場合、1Lの水に20mLの原液を混ぜて作りましょう。
衣服や器具などのつけ置き、トイレの便座やドアノブ、手すり、床等
衣服や器具が汚れたときには、つけ置きによる消毒が必要です。また、トイレの便座やドアノブ、手すり、床など、不特定多数が触れる場所の消毒も日常的に求められます。
これらのつけ置きや拭きあげに使用する次亜塩素酸ナトリウム消毒液の適切な濃度は、0.02%です。原液濃度が5%の次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、1Lの水に対し5mLの原液を混ぜて準備しましょう。
なお、薬剤が残っていると、金属の錆びや素材の変色を招くおそれがあります。トイレやドアノブ、手すりなどを消毒した際に金属部分が含まれる場合は、消毒後に必ず水拭きし、薬剤を残さないようにすることが重要です。
ペットボトルを使用した希釈方法
次亜塩素酸ナトリウムを希釈するには、500mLのペットボトルが便利です。
500mLのペットボトルは、キャップ(ふた)の用量が約5mLです。500mLのペットボトルを利用して、0.1%と0.02%の消毒液を作る方法を以下で確認しましょう。
| 次亜塩素酸ナトリウム消毒液の濃度 | ペットボトルに入れるキャップの杯数 |
|---|---|
| 0.1% | 2杯 |
| 0.02% | 0.5杯 |
ペットボトルを使って消毒液を作る場合は、誤飲防止のため薬剤名を大きく記入しておくことが重要です。希釈した次亜塩素酸ナトリウムは、時間の経過とともに効果が落ちるため、短い期間で使い切れる量を作りましょう。
次亜塩素酸ナトリウムを使用する上での注意事項

殺菌力や除菌力に優れる次亜塩素酸ナトリウムですが、安心安全に使用するには、気を付ける点がいくつかあります。
ここでは、次亜塩素酸ナトリウムを使用する上での注意事項を4つ見ていきましょう。
皮膚に対する刺激が強い
注意点の一つが、皮膚に対する刺激が強い点です。そのため、手洗いや手指の消毒など、人に対しては使用しないようにしましょう。
消毒に使用するときには、消毒液が直接皮膚に触れないように、ビニールなど樹脂製の手袋を着用してください。消毒液が皮膚や衣服についた場合は、直ちに多量の水で洗い流します。皮膚に異常が残ったときには、速やかに皮膚科医に相談しましょう。
濃度が高すぎると素材を傷める
注意点の2つ目は、濃度が高すぎると素材を傷める点です。
次亜塩素酸ナトリウムをステンレスや衣類、床材などの素材に使用すると、腐食や変色のリスクがあります。
初めて使用する際は、目立たない場所に薄めの濃度の消毒液で試してみると安心です。また、消毒後は、薬剤が残らないよう水拭きをして拭き取りましょう。
他の洗剤と混ぜない
注意点の3つ目は、他の洗剤と混ぜないことです。
次亜塩素酸ナトリウムを酸性の強い洗剤や漂白剤などと混ぜたり、一緒に使用したりすると、塩素ガスが発生します。塩素ガスを吸い込むと、場合によっては甚大な健康被害を生じるおそれがあります。
従って、次亜塩素酸ナトリウムを使用するときは、他の洗剤と混ざらないよう注意を払い、十分に換気をすることが大切です。
保存と廃棄のポイント
注意点の4つ目は、保存と廃棄に気を配ることです。
次亜塩素酸ナトリウムは、直射日光や高温を避け、冷暗所で密閉保存しましょう。ペットボトルに残った次亜塩素酸ナトリウム消毒液は、アルミホイルなどで包むことで、光を遮断できます。開封後や希釈後は効果が落ちるため、短期間で使い切ってください。
次亜塩素酸ナトリウムは、少量であれば生活排水として廃棄可能ですが、高濃度のまま流すと、配管などの腐食を招くおそれがあります。捨てる際は、濃度を薄めた上で、水道を流しながら廃棄しましょう。
多量の場合や事業用は産業廃棄物処理事業者へ依頼が必要になる場合があります。
施設・現場での導入時のポイント

施設や現場で次亜塩素酸ナトリウムを安全に導入するには、使用ルールを明確化し、周知することが重要です。
ここでは、次亜塩素酸ナトリウムの使用手順のマニュアル化や、他の消毒剤との使い分けについて詳しく見ていきましょう。
使用手順のマニュアル化
次亜塩素酸ナトリウムによる消毒は、強い殺菌力で感染症対策に高い効果が期待できる一方で、使用方法を間違えると健康被害を招く恐れがあります。施設や現場で導入するにあたっては、安全に使用できるよう手順のマニュアルを作成し、スタッフ全員に周知しましょう。
マニュアルには、使用目的に合わせた希釈表を記載します。人的ミスを防ぐには、職員が見やすい場所に、希釈表を掲示すると安心です。
誤用や誤飲などを防ぐには、保管場所を決め、使用後は元の場所に戻すことを徹底しましょう。また、容器のラベルを明確化することも、誤用の防止につながります。
他の消毒剤との使い分け
次亜塩素酸ナトリウムを使用する際は、他の消毒剤との使い分けの周知も非常に重要です。
手指に使用するのは「アルコール消毒」、物に使用するのは「次亜塩素酸ナトリウム」との使い分けを徹底しましょう。
次亜塩素酸ナトリウムを手指に使うと、皮膚が荒れたり傷ついたりするおそれがあるため、誤用を防ぐためのルール作りが重要です。
次亜塩素酸ナトリウムの消毒液に関するよくある質問

最後に、次亜塩素酸ナトリウムの消毒液に関するよくある質問を紹介します。
次亜塩素酸ナトリウムは、介護施設や飲食店などで広く使われている薬剤ですが、導入にはいくつかの注意点があります。
よくある質問を参考に、次亜塩素酸ナトリウムの安心で安全な使用を目指しましょう。
次亜塩素酸水と何が違いますか?
次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水は、性質や用途が異なります。
次亜塩素酸ナトリウムは弱アルカリ性の薬剤で、除菌や殺菌、漂白などの効果があります。皮膚に対する刺激が強いため、手指の消毒には使用できません。また、腐食や変色のおそれがあるため、使用した場所は水拭きするといった注意が必要です。
次亜塩素酸水は、弱酸性の薬剤で、除菌や殺菌、消臭などの効果があります。金属にも使える一方で、長期保存には向かないことを覚えておきましょう。
手指消毒には使えますか?
次亜塩素酸ナトリウムは皮膚に対する刺激が強いため、手指消毒には使用できません。
また、物の消毒に使用する際は手袋を使用し、皮膚に直接つかないようにしましょう。万が一皮膚に触れた場合は、大量の水で十分に洗い流すことが肝心です。違和感が残るときには、速やかに皮膚科医の診察を受けてください。
使用中は換気が必要?
次亜塩素酸ナトリウムは、使用方法を間違えると人体に有害な塩素ガスが発生するおそれがあります。使用中の事故を防ぐためにも、使用中は換気を徹底しましょう。
塩素ガスの発生を防ぐには、他の薬剤と併用しないことが重要です。特に、酸性の強い洗剤や漂白剤と混ざると塩素ガスが発生するため、十分に注意しましょう。
まとめ
次亜塩素酸ナトリウムは強力な除菌効果や漂白力を持つ塩素系の消毒液です。用途に合わせて適切に希釈して使用する必要があります。一方で皮膚への刺激が強い点や、素材の腐食や変色を招く可能性がある点、塩素ガスが発生するおそれがある点など、扱いに注意しましょう。
現場に次亜塩素酸ナトリウムを導入する際は、使用手順や注意事項をマニュアル化し、注意点と合わせて周知することが重要です。明確なルール作りを行い、安心で安全な次亜塩素酸ナトリウムの使用を目指しましょう。

監修者
岡本 妃香里氏
2014年に薬学部薬学科を卒業し、薬剤師の資格を取得。大手ドラッグストアに就職し、調剤やOTC販売を経験する。2018年にライター活動を開始。現在は医薬品や化粧品、健康食品、美容医療など健康と美に関する正しい情報を発信中。医療ライターとしてさまざまなジャンルの記事執筆を行っている。
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