更新日:2026年10月19日
グリストラップとは?構造・設置義務・清掃方法まで完全解説

飲食店の厨房に欠かせない設備のひとつに、グリストラップがあります。開業準備を進めるなかで名前を目にしたものの、何をする装置なのか、本当に必要なのか、どうやって掃除すればよいのかがよく分からない、という方も多いのではないでしょうか。
グリストラップは、簡単にいえば厨房から出る排水に含まれる油脂や生ゴミを分離し、そのまま下水に流さないようにするための装置です。飲食店では実質的に欠かせない設備でありながら、仕組みや設置のルールが正しく理解されていないことも少なくありません。本記事では定義や構造から、設置にかかわる法令、清掃の方法や頻度、汚泥・廃油の処理の注意点までをまとめてご紹介します。
グリストラップとは
グリストラップとは、厨房から出る排水に含まれる油脂や生ゴミや残渣を一時的に分離・貯留し、下水道へそのまま流れ出るのを防ぐための業務用厨房設備です。グリース(油)をトラップ(捕まえる)という言葉のとおり、油分をせき止める役割を担っています。読み方は「グリストラップ」で、「グリーストラップ」と表記されることもあります。正式には「グリース阻集器(そしゅうき)」と呼ばれ、東京都下水道局などの資料でもこの名称が使われています。油脂は水より軽く水面に浮き上がる性質があり、その性質を利用して油分の少ない排水だけを下水へ流すしくみです。
飲食店の厨房では、揚げ物や食器洗いなどで日常的に油分が排水に混ざります。これをそのまま流すと、排水管の詰まりや下水環境の悪化につながります。グリストラップは、そうした油脂や汚れを一度受け止める関所のような存在といえるでしょう。
グリストラップの構造としくみ

グリストラップは、一般的に3つの槽(そう)に分かれた構造をしています。それぞれの槽が役割を分担し、段階的に油脂やゴミを取り除くしくみです。上の図とあわせて見ると理解しやすいでしょう。
第1槽
生ゴミや残渣を受け止める場所です。バスケットと呼ばれるカゴが設置されており、野菜くずや食べ残しなどの固形物をキャッチします。ここで大きなゴミを取り除くことで、後の槽に汚れが流れ込みにくくなります。
第2槽
油脂を分離する中心的な役割を担います。ゴミを取り除かれた排水がここに入ると、水より軽い油脂が時間をかけて水面に浮き上がってきます。この浮いた油の層(スカム)が、下水へ流れるのを食い止める要のポイントです。
第3槽
トラップ管と呼ばれる管で、油脂を除いた水だけを下水へ流します。ポイントは、この管が槽の下のほうから水を引き込む構造になっていることです。油は水面に浮いているため、下から水を取り込めば油を含まないきれいな水だけを流せます。油は水に浮くという性質を、そのまま装置のしくみに活かしているわけです。各部材の役割を理解しておくと、清掃時にどこをどう手入れすればよいかが分かります。
グリストラップの役割と設置する理由
グリストラップを設置する理由は、大きく2つあります。
一つ目は、排水詰まりの予防です。油脂を含んだ排水を流し続けると油が冷えて固まり、排水管の内側にこびりついていきます。これが積み重なると管が狭くなり、詰まりや逆流を引き起こします。油をあらかじめ取り除くことで、こうしたトラブルを防ぎやすくなります。
二つ目は、下水環境の保全です。大量の油脂が下水道に流れ込むと、下水道管の詰まりだけでなく、河川や海の水質悪化にもつながります。グリストラップは店舗の衛生を守ると同時に、地域の水環境を守る役割も担っているのです。
グリストラップに設置義務はある?
結論からいうと、グリストラップの設置そのものをダイレクトに義務づけた法律はありません。ただし、実質的にはほとんどの飲食店で必要になると考えておくのが良いでしょう。
というのも、下水道法や水質汚濁防止法では、下水に流してよい排水の基準(水質基準)が定められています。油脂を多く含む厨房排水をそのまま流すと、この基準を満たせないケースが出てきます。基準をクリアするための現実的な手段がグリストラップであるため、事実上、設置が求められることになるのです。建築基準法関係の規定でも、阻集器の設置に関する基準が示されています。
さらに、自治体の条例による指導もあります。たとえば東京都下水道局は、飲食店などに対してグリストラップの設置と適正な維持管理を求めています。コーヒーだけを出すカフェや調理をほとんど行わないバーなど、油をあまり扱わない軽飲食では求められないこともありますが、一般的な飲食店では事実上必須と考えておくとよいでしょう。具体的な基準は自治体によって異なるため、店舗が所在する自治体や保健所、下水道局に事前に確認しておくと安心です。
<参照>
東京都下水道局「飲食店のみなさまへお願い」
清掃を怠るとどうなるか

グリストラップは設置して終わりではなく、日々の清掃・維持管理があってはじめて本来の役割を果たします。放置してしまうと、さまざまなトラブルが起こりやすくなります。
まず目立つのが悪臭です。溜まった生ゴミや油脂が腐敗すると、厨房内はもちろん、お客様のいる空間にまで嫌なにおいが広がることがあります。次に、油脂や汚泥が蓄積すると排水詰まりが起こりやすくなり、排水が流れにくくなったり逆流したりすることもあります。さらに、放置されたグリストラップは、害虫が発生する温床にもなりがちです。においや害虫は近隣トラブルの原因にもなり、店舗の評判にも影響しかねません。加えて、水質基準を満たさない排水が流れ続ければ、保健所や行政からの指導につながるリスクもあります。
グリストラップの清掃方法と頻度
グリストラップの清掃は、槽ごとに手順を分けて行うと効率的です。
清掃の基本的な手順
まず第1槽のバスケットに溜まった生ゴミや残渣を取り除きます。カゴを引き上げて中身をゴミ袋に移し、必要に応じてネット(ゴミ受け)を交換すると手入れが楽になります。次に、第2槽の水面に浮いている油脂(スカム)を、ひしゃくやスコップですくい取ります。油脂吸着材や吸着シートを使うと効率よく回収できて便利です。続いて、槽の底に溜まった汚泥を除去し、専用洗剤や除菌剤で槽内を洗浄します。最後にトラップ管の状態を確認し、詰まりや汚れがないかをチェックします。清掃の際は、衛生面への配慮として使い捨て手袋を着用しておくと安心です。
清掃頻度の目安
第1槽のバスケットの生ゴミは、腐敗による悪臭を防ぐため毎日取り除くのが基本です。第2槽の浮上した油脂は週に1回程度、槽の底に溜まる汚泥は月に1回程度が目安とされています。槽全体の本格的な洗浄は、月1回から3か月に1回ほどを目安に行うとよいでしょう。ただしこれは一般的な目安で、油の使用量や営業規模によって必要な頻度は変わります。油を多く使う店舗ほど、こまめな清掃が必要になると考えておくとよいでしょう。
自分で行う場合と業者に依頼する場合
日常的なバスケットの掃除や油のすくい取りは、店舗のスタッフで対応できる範囲です。一方、汚泥が溜まった状態での本格的な清掃や、大量の汚泥・廃油の処理をともなう作業は、専門業者に依頼するのが安心です。日々の手入れは自分たちで、定期的な本格清掃は業者に、と切り分けると無理なく続けやすくなります。
清掃の各ステップには、次のような道具や消耗品があると作業がスムーズになります。第1槽のゴミ受けにはグリストラップ用ネット、浮上油の回収には油脂吸着材・吸着シート、槽の洗浄には専用洗剤・除菌剤、そして使い捨て手袋・ゴミ袋・ひしゃく・スコップなどをそろえておくと安心です。
回収した廃油・汚泥の処理の注意
清掃で見落とされがちなのが、回収した油脂や汚泥の処理方法です。グリストラップから出た汚泥や廃油は、廃棄物処理法上の「産業廃棄物」にあたります。そのため、下水にそのまま流したり、家庭ゴミや一般ゴミと一緒に捨てたりすることはできません。適正に処理しなかった場合、排出した事業者(店舗)側が責任を問われることもあります。
正しく処理するには、都道府県などの許可を受けた産業廃棄物処理業者に回収・処分を委託する必要があります。定期清掃を業者に依頼する場合は、汚泥・廃油の処理まで含めて対応してくれるかを確認しておくと安心です。「掃除して終わり」ではなく、「回収したものをどう処理するか」までがワンセットとなります。
よくある質問(FAQ)

Q1.グリストラップの掃除は誰がやるのですか?
A.日常的なバスケットの生ゴミ除去や油のすくい取りは、店舗のスタッフが行うのが一般的です。汚泥がたまった状態での本格的な清掃や、産業廃棄物としての汚泥・廃油の処理をともなう作業は、専門業者に依頼するケースが多くみられます。
Q2.臭いの原因は何ですか?
A.多くの場合、原因は溜まった生ゴミや油脂の腐敗です。生ゴミを長く放置したり、浮いた油脂を取り除かずにいたりすると、においが発生しやすくなります。まずは日々の清掃を見直し、それでも改善しない場合は槽の底の汚泥やトラップ管の汚れも確認してみるとよいでしょう。
Q3.放置するとどうなりますか?
A.悪臭や排水詰まり、害虫の発生、近隣トラブル、さらには保健所や行政からの指導につながるおそれがあります。こうしたリスクの多くは日々の清掃で防げるため、無理なく続けられる清掃の習慣を整えておくことが大切です。
まとめ
グリストラップは厨房排水の油脂や生ゴミを分離し、排水詰まりや下水環境の悪化を防ぐための大切な設備です。3つの槽がそれぞれ役割を分担し、油は水に浮くという性質を活かして、きれいな水だけを下水へ流すしくみになっています。
設置そのものを直接義務づける法律はないものの、水質基準を満たすうえで実質的に欠かせず、自治体の指導もあることから、一般的な飲食店では必須の設備と考えておくとよいでしょう。設置後は正しい頻度での清掃と、回収した汚泥・廃油の適正な処理が欠かせません。構造と役割を理解し、日々の手入れを無理なく続けていくことが、厨房の衛生と安定した店舗運営を守ることにつながります。
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