更新日:2026年9月17日
飲食・スーパー・ホテル・タクシー・介護|業種別カスハラ対策の手引き書

現場でどんなカスタマーハラスメント(カスハラ)に気をつければよいのか――ひとくちにカスハラといっても、飲食店のホールで起きることと、タクシーの車内や介護の訪問先で起きることは、場面もリスクもずいぶん違います。厚生労働省も、業種ごとに被害の実態や必要な対応が異なるという考え方のもと、業界別のマニュアルを作成しています。この記事では、飲食・スーパー・ホテルや旅館・タクシーや宅配・介護という5つの現場それぞれについて、起きやすいカスハラと備えとしておすすめのアイテムをご紹介します。
カスハラ対策は「業種によって違う」のが前提
2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法によって、企業規模を問わずすべての事業主にカスハラ防止措置が義務づけられます。ここで押さえておきたいのが、「どの業種にも同じ対策」というわけではないという点です。
厚生労働省の指針でも、「業種・業態等によりその被害の実態や必要な対応も異なると考えられることから、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めることも効果的」とされています。実際に厚労省は、業界団体と協議のうえで「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(スーパーマーケット業編)」を作成するなど、業種ごとの対策を後押ししています。東京都の実態調査でも、カスハラ防止対策に取り組む企業の割合は業種によって差がみられると報告されています。だからこそ自社の業態ではどんなカスハラが起きやすいかを知り、それに合った備えを選んでいくのがおすすめです。
なお義務化の法的な内容や罰則・リスクについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。また具体的にどんなカスハラ対策アイテムがあるかを一覧で知りたい方は、こちらもおすすめです。
<参照>
厚生労働省「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(スーパーマーケット業編)」
東京都(TOKYOはたらくネット)「カスタマーハラスメントに関する実態調査」
<参考>
【2026年施行予定】労働施策総合推進法の改正内容!カスハラ対策が義務化
【2026年義務化】従業員を守るカスハラ対策、揃えるべき必須アイテム
飲食店のカスハラ対策

飲食店で起きやすいカスハラ
飲食店では予約電話での一方的な要求や、ホールでの暴言、料理の提供時間をめぐる過度なクレーム、酔ったお客さまによる威圧的な言動などが起きやすい傾向があります。忙しい時間帯に、スタッフがひとりで対応を抱え込んでしまう場面も少なくないでしょう。
飲食店におすすめの備え
電話予約のやり取りが多いお店では、通話を記録できるICレコーダーやAIボイスレコーダーがあると安心です。ホールでのトラブルに備えるなら、店内に防犯カメラを設置しておくと状況を映像で残せるうえ、抑止効果も期待できます。あわせて厨房とホール、スタッフ同士をつなぐインカムやトランシーバーがあると、困ったときにすぐ応援を呼べるため、ひとりで対応させない体制づくりに役立ちます。レジ横やレジ前に「迷惑行為はお断りしています」といった卓上POPを置くのもよいでしょう。
スーパー・店舗(小売業)のカスハラ対策
スーパーや店舗で起きやすいカスハラ
スーパーや小売店舗では、レジでの返品・交換をめぐるトラブル、値引きの強要、レジ待ちに関する苛立ちからの暴言などが起きやすいといわれます。不特定多数のお客さまが訪れるぶん、対応する場面も多くなりがちです。
スーパーや店舗におすすめの備え
厚生労働省のスーパーマーケット業向けマニュアルでは、業界共通の方針として、カスハラには毅然と対応し従業員を守るという考え方が示されています。この方針を店舗で実践するうえで、防犯カメラによる記録や、レジ周りでの録音が支えになります。また、従業員の名札をイニシャル表記にするなどして個人が特定されにくくする工夫も、SNSでの中傷などを防ぐ観点からおすすめです。店内に対応方針を伝えるポスターを掲示しておくと、お客さまへの牽制と従業員の安心感の両方につながります。
<参照>
厚生労働省「業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(スーパーマーケット業編)」
ホテルや旅館のカスハラ対策

ホテルや旅館で起きやすいカスハラ
ホテルや旅館ではフロントでの長時間にわたるクレーム、過剰なサービスの要求、SNSへの投稿をちらつかせた脅しなどが起きやすいとされます。おもてなしを大切にする現場だからこそ、対応に苦慮しやすい面もあるでしょう。
ホテルや旅館におすすめの備え
心強い後押しとなるのが、2023年12月に施行された改正旅館業法です。この改正により宿泊施設に過重な負担となる要求を繰り返すいわゆる迷惑客に対して、営業者が宿泊を拒むことができるようになりました。土下座などの社会的相当性を欠く謝罪の要求や、長時間にわたる不当な要求の繰り返しなどが、新たな宿泊拒否事由の例として挙げられています。こうした対応を落ち着いて行うためにもフロントでの録音や、館内の防犯カメラ、スタッフ間をつなぐインカムやトランシーバーを備えておくとよいでしょう。やり取りの記録が残っていれば、事実関係の確認もスムーズになります。なお、障害のある方が合理的配慮を求めることや施設側の過失への正当な対応を求めることは、カスハラには当たりません。何が正当な要望で何がカスハラなのかを、スタッフ間で共有しておくことも大切です。
<参照>
厚生労働省「令和5年12月13日から旅館業法が変わりました!」
タクシー・宅配などドライバーのカスハラ対策
タクシーや宅配の現場で起きやすいカスハラ
運輸・運送の分野、とくにタクシーや宅配などのドライバーは車内や配達先という「密室」や「1対1」の状況でカスハラに直面しやすい立場にあります。タクシーでは酔客からの暴言や威圧、宅配では謝罪文などの理不尽な要求など、目撃者が少ない場面で起きるトラブルが課題となっています。
タクシーや宅配ドライバーにおすすめの備え
車内向けのカメラを備えたドライブレコーダーは、ドライバー自身を守る記録として頼りになります。音声も記録できるタイプを選ぶと、暴言などのやり取りも残せます。配達先での対応には、持ち運べるビデオカメラや、緊急時にすぐ連絡できる手段があると安心です。何よりも、悪質なカスハラに対してはドライバー個人に対応を押しつけず、会社が前面に立って対応する姿勢が大切です。記録があることは、そうした会社としての対応の裏づけにもなります。
医療・介護現場のカスハラ(ペイハラ)対策

医療・介護現場で起きやすいカスハラ
医療機関や介護の現場で、患者さんやご利用者、そのご家族から受ける迷惑行為はペイシェントハラスメント(ペイハラ)と呼ばれることがあります。過度な要求や暴言、訪問介護での密室化したやり取りなどが課題として挙げられます。ここで大切にしたいのは、正当な要望や相談と、カスハラはまったく別のものだという点です。病気や不安を抱えた方が助けを求めることは、当然の権利です。また認知症などの症状によって、悪意なく生じてしまう言動もあります。そうした背景に配慮しながら、社会通念上許容される範囲を明らかに超えた言動に対して、職員を守るための備えを整えていくという考え方がよいでしょう。
医療・介護現場におすすめの備え
記録を残せるICレコーダーは、事実確認の助けになります。訪問介護など職員がひとりになりやすい場面では、緊急時に音で周囲へ知らせる防犯ブザーや、すぐに連絡できる手段を持っておくと安心です。施設内であれば、受付や待合への防犯カメラの設置も選択肢になります。あわせて、対応方針を職員間で共有し、ひとりで抱え込まない体制をつくっておくことがおすすめです。
業種を問わず共通してできる備え
ここまで業種ごとに見てきましたが、現場が違っても、備えの考え方には共通点があります。それは記録する、抑止する、ひとりにしないという3つの視点です。やり取りを記録できる録音・録画機器、方針を伝える掲示物、そして応援を呼べる連絡手段。この3つを、自社の現場に合わせて組み合わせていくのがおすすめです。
具体的にどんなアイテムがあり、どう選べばよいかについては、こちらで詳しくご紹介しています。また、イニシャルのみの名札や対応方針のポスターや「録音・録画中」の告知といった掲示物は、印刷サービスを利用すればテンプレートから手軽に作成できます。
<参考>
カスタマーハラスメント対策用品特集
【2026年義務化】従業員を守るカスハラ対策、揃えるべき必須アイテム
カスハラ対策法への準備はお済みですか?(パプリ)
よくある質問(FAQ)

Q1.飲食店でカスハラを受けたら、まず何をすればいいですか?
A.まずはスタッフをひとりにせず、複数人で対応することがおすすめです。やり取りを録音・録画で記録しておくと、後の事実確認に役立ちます。暴力や脅迫など悪質な場合は、無理をせず警察へ相談することも選択肢に入れておくとよいでしょう。
Q2.タクシーや宅配のドライバーを守るカスハラ対策には何がありますか?
A.車内向けカメラ付きの音声も記録できるドライブレコーダーがおすすめです。密室や1対1になりやすい現場では記録が特に重要になります。あわせて、悪質なケースは会社が前面に立って対応する体制を整えておくとよいでしょう。
Q3.介護現場のカスハラ(ペイハラ)にはどう対応すればいいですか?
A.正当な要望と、許容範囲を明らかに超えた言動を切り分けて考えることが出発点になります。記録を残せるICレコーダーや訪問介護時の緊急連絡手段を備えつつ、職員がひとりで抱え込まない体制づくりを進めるのがおすすめです。認知症などの背景がある場合の配慮もあわせて共有しておくとよいでしょう。
Q4.スーパーで悪質なクレームに毅然と対応してもよいのですか?
A.はい。厚生労働省のスーパーマーケット業向けマニュアルでも、カスハラには毅然と対応し従業員を守るという業界共通の方針が示されています。方針を店舗で掲示し、記録を残せる環境を整えておくと、落ち着いて対応しやすくなるでしょう。
Q5.ホテルや旅館は迷惑客の宿泊を断ってもよいのですか?
A.2023年施行の改正旅館業法により、過重な負担となる要求を繰り返す迷惑客に対しては、宿泊を拒むことができるようになりました。ただしまずは要求に応じられない旨を説明したうえで、それでも繰り返される場合に拒否できる、という流れが示されています。
まとめ
飲食店、スーパー、ホテルや旅館、タクシーや宅配、そして医療・介護。それぞれの現場でカスハラの起きやすい場面は異なりますが、記録する、抑止する、ひとりにしないという備えの考え方は共通しています。まずは自社の業態でどんなカスハラが起きやすいかを見つめ、その場面に合ったアイテムから揃えてみてはいかがでしょうか。2026年10月からのカスハラ防止措置の義務化は、大切な従業員を守るための後押しでもあります。東京都の奨励金のような支援制度も活用しながら、できるところから少しずつ準備を進めていきましょう。
<参考>
カスタマーハラスメント対策用品特集
【2026年施行予定】労働施策総合推進法の改正内容!カスハラ対策が義務化
カスハラ対策法への準備はお済みですか?(パプリ)
あわせて読みたい!関連&新着記事
【2026年義務化】従業員を守るカスハラ対策、揃えるべき必須アイテム
オフィス・職場の乾燥対策|湿度20%の職場を快適にする10の工夫













