更新日:2026年9月17日
【2026年義務化】従業員を守るカスハラ対策、揃えるべき必須アイテム

「お客さまからの理不尽な言動に、どう対応すればいいか分からない」「従業員を守りたいけれど、何から準備すればいいのだろう」そんな悩みを抱える店長・支配人、経営者の方は少なくないのではないでしょうか。2026年10月には、すべての企業にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務づけられます。とはいえ、実際に現場で役立つ「モノ」の備えは後回しになりがちです。この記事では、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策として揃えておきたい必須アイテムを、どんな場面に何が向くのかという視点でご紹介します。
なぜ今、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の準備が急がれるのか
2026年10月1日から改正労働施策総合推進法によって、企業規模を問わずすべての事業主にカスタマーハラスメント(カスハラ)防止措置が義務づけられます。これまで努力義務だった対応が「必ず講じなければならないもの」へと変わるため、飲食・宿泊・運輸・小売をはじめとするサービス業の現場では、いよいよ具体的な準備が求められる段階に入りました。厚生労働省が示す指針では、事業主が講じるべき措置として、
- 事実関係を迅速かつ正確に確認する
- 可能な限り労働者をひとりで対応させない
- 特に悪質なカスタマーハラスメントへ対処できる体制を整備する
といった項目が挙げられています。これらを現場で実現するうえで、録音・録画といった記録手段や、応援を呼べる連絡手段といったアイテムの存在が、実務的に大きな支えになります。
背景にある深刻さは、公的な調査にも表れています。東京都が条例施行後に実施した実態調査では、過去1年間にカスタマーハラスメントの被害にあったと回答した従業員は11.9%にのぼりました。そして注目したいのが、被害にあった場面です。最も多かったのは電話・メールで69.5%、次いで対面(接客時)などが47.9%を占めています。さらに、カスタマーハラスメントにより企業が被った損害としては、従業員の仕事への意欲・やりがいの低下が77.0%で最多でした。つまり、カスハラの多くは「電話」と「対面」という、記録が残りにくい場面で起きているのです。だからこそ、その場のやり取りをきちんと残せる道具を備えておくことが、従業員を守る第一歩になります。
なお、義務化の法的な内容や罰則・リスクについてより詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。本記事ではそこから一歩進んで、実際に何を揃えればよいかに焦点を当ててご紹介します。
<参照>
厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
東京都「カスタマーハラスメントに関する実態調査」
アイテムを選ぶ前に押さえたい3つのステップ

いきなりアイテムを買い揃える前に、次の順番で整理しておくと無駄のない準備につながります。
①会社としての方針を決める
「従業員を守るために毅然と対応する」という姿勢を明確にし、どんな場面で誰が対応するのかを整理しておくと、その後のアイテム選びの軸が定まります。
②自社の現場ではどんなカスハラが起きやすいかを把握する
電話対応が多いのか、窓口での接客が中心なのか、車内でのトラブルが想定されるのかによって、必要なアイテムは変わってきます。先ほどの東京都の調査でも「電話・メール」と「対面」が突出していましたが、業態によって傾向は異なります。
③その現場に合ったアイテムを選ぶこと
職種や現場ごとにカスハラ対策アイテムは異なってきます。次の章で目的別にご紹介します。
目的別・カスタマーハラスメント(カスハラ)対策におすすめのアイテム
電話・窓口の「言った・言わない」を防ぐ|ボイスレコーダー・ICレコーダー
カスハラ被害が最も多い「電話・メール」の場面に、まず備えておきたいのがICレコーダーです。通話録音アダプタと組み合わせれば、電話でのやり取りをそのまま記録に残せます。東京都の調査でも、被害内容として「継続的な、執拗な言動」が61.6%と最多でしたが、こうした繰り返しのやり取りは、音声で残しておくことで後の対応の裏づけになります
近年は、録音した音声を自動で文字起こしできるAIボイスレコーダーも普及してきました。長時間のクレーム対応でも、後から要点を文章で確認できるため、記録の整理や社内共有の手間を大きく減らせます。選ぶ際は、録音時間の長さ、通話録音に対応しているか、文字起こし機能の有無などを比較するとよいでしょう。窓口対応が中心なら胸ポケットに入る小型タイプもおすすめです。なお、相手に無断で録音してよいのか気になる方も多いと思いますが、この点は後述のFAQで触れています。
<参照>
東京都「カスタマーハラスメントに関する実態調査」
常時録画で抑止と証拠を両立|ネットワークカメラ・防犯カメラ
対面での接客時のトラブルには、店内や受付に設置するカメラが有効です。トラブルの一部始終を映像で記録できるだけでなく「見られている」という意識がカスハラそのものを抑える効果も期待できます。とくにネットワークカメラは、離れた場所やスマートフォンから映像を確認できるため複数店舗を運営する場合や、バックヤードから状況を見守りたい場合に便利です。
選ぶ際は顔や状況が判別できる解像度か、録画データの保存方法(本体保存かクラウドか)、暗い場所でも映るかといった点を確認するとよいでしょう。あわせて録画中であることを掲示すると、抑止効果がさらに高まります。
車内外のトラブルに備える|ドライブレコーダー
運輸・運送業や送迎・配達をともなう事業では、ドライブレコーダーが心強い味方になります。車内での乗客とのトラブルや配達先での理不尽な言動など、出先でのカスハラは目撃者が少なく記録が残りにくいものです。車内向けカメラを備えたタイプを選べば、ドライバー自身を守る記録として活用できます。駐車中も録画できるモデルや音声も記録できるモデルなど、用途に応じて選ぶことをおすすめします。
機動的に現場を記録する|ビデオカメラ
受付から離れた場所での対応や、イベント・催事など臨時の現場では、持ち運べるビデオカメラが役立ちます。据え置きのカメラではカバーしきれない場面を、必要なときに手元で記録できるのが利点です。手ブレ補正や長時間バッテリー、暗所性能などを確認しておくと、いざというときに安心です。
「ひとりにしない」を実現する|トランシーバー・インカム
厚生労働省の指針では「可能な限り労働者をひとりで対応させない」ことが求められています。トランシーバーやインカムがあればトラブル発生時にすぐ応援を呼べるため、従業員が孤立せず対応できます。店舗のバックヤードと売り場、フロントと客室といった離れた場所どうしをつなぐのに向いています。通信できる距離、連続使用時間、装着しやすさ(トランシーバーの場合はイヤホンマイクの有無)などを基準に選ぶとよいでしょう。
<参照>
厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
あわせて検討したい関連アイテム
このほか緊急時に音で周囲へ知らせる防犯ブザー、カウンターに設置して物理的な距離を保つパーテーション、従業員の氏名を守るための名字のみ・ニックネーム対応の名札なども、カスハラ対策として役立ちます。従業員のフルネーム表記を避けることは、SNSでの個人特定などのリスクを下げる観点からも注目されています。
掲示物・印刷物でできる「抑止」の工夫

アイテムによる記録と並んで効果的なのが、店舗の方針を見える形で伝える掲示物です。カスハラ対策の基本方針を明文化して掲示することは、厚生労働省が求める「方針の明確化・周知」にもつながります。
具体的にはカスハラに毅然と対応する旨を伝える方針ポスター、「店内は録音・録画を行っています」といった告知の掲示、レジ横やカウンターに置く卓上POPやパネルなどが挙げられます。こうした掲示は来店者への牽制になるだけでなく、従業員に「会社が守ってくれている」という安心感を与える効果も期待できます。東京都の調査で企業が最も多く取り組んでいた対策は「相談窓口の整備」(65.7%)でしたが、掲示による周知はそうした体制を現場で機能させる土台にもなります
<参照>
東京都「カスタマーハラスメントに関する実態調査」
中小・個人経営でも使える東京都の奨励金
対策の必要性は分かるけれど、導入コストが気になる……という方に知っておいていただきたいのが、東京都の支援制度です。東京しごと財団が実施する「カスタマーハラスメント防止対策推進事業 企業向け奨励金」では、対策マニュアルの整備に加えて、録音・録画環境の整備、AIを活用したシステムの導入、外部人材の活用のいずれかを実施した都内の中小企業等に対し、40万円が支給されます。対象は常時雇用する従業員が300人以下の事業者で、個人経営を含む中小規模の事業者も視野に入る制度です
<参照>
公益財団法人東京しごと財団「カスタマーハラスメント防止対策推進事業企業向け奨励金」
よくある質問(FAQ)

Q1.カスハラ対策で相手に無断で録音するのは違法ではないですか?
A.一般に、自分が当事者となっている会話を記録する場合、相手の同意がなくても直ちに違法とはならないと考えられており、裁判でも証拠として扱われた例があります。ただし、設置目的の正当性や運用方法によって判断が分かれることもあるため、「録音・録画を行っている」旨を掲示しておくと、トラブルの予防にもつながり安心です。具体的な運用に不安がある場合は、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
Q2.カスハラ対策グッズは何から揃えればいいですか?
A.まずは自社で起きやすいカスハラの場面を把握し、記録を残せる手段と抑止のための掲示物から始めるのがおすすめです。東京都の調査では被害の約7割が電話・メールで起きているため、電話対応が多い職場では通話録音から、店頭対応が多い職場では防犯カメラと掲示から、というように現場に合わせて選ぶとよいでしょう。
Q3.防犯カメラとICレコーダーはどちらが効果的ですか?
A.どちらか一方というより、組み合わせるのがおすすめです。防犯カメラは店内全体の状況を映像で記録し抑止効果も期待できる一方、ICレコーダーは電話や個別のやり取りを音声で細かく残せます。対応する場面が異なるため、両方を備えておくと安心です。
Q4.小さな店でもカスハラ対策の義務はありますか?
A.はい。2026年10月からのカスハラ対策の義務化は、企業規模を問わずすべての事業主が対象です。個人経営や小規模の事業者も対象に含まれるため、無理のない範囲から準備を進めておくことをおすすめします。
まとめ
カスハラ対策のアイテム選びは、記録する・抑止する・ひとりにしないという3つの視点で組み合わせて考えると分かりやすくなります。被害が集中する電話や窓口の記録にはICレコーダーやAIボイスレコーダー、店内の記録と抑止には防犯カメラ、車内外のトラブルにはドライブレコーダー、応援体制にはトランシーバーやインカム、そして店舗の姿勢を伝える掲示物。これらを自社の現場に合わせて組み合わせることで、従業員が安心して働ける環境づくりにつながります。2026年10月の義務化は、負担ではなく、大切な従業員を守るための後押しと捉えることもできます。東京都の奨励金のような支援制度も活用しながら、できるところから準備を進めてみてはいかがでしょうか。
<参考>
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