更新日:2024年4月30日
清拭(せいしき)とは?必要なものや手順、注意点までわかりやすく解説
清拭は何らかの理由で入浴が困難な場合に、温かいタオルで身体を拭くケアです。皮膚の血行を促し、爽快感を得る効果がある清拭ですが、正しい方法で取り入れると、より効果が得やすくなります。
これから清拭をする人のなかには、清拭に必要なものや正しい手順、注意点を知ってから行いたいと考えている方もいるのではないでしょうか。
この記事では清拭の目的や効果、必要物品、手順、注意点を解説します。あると便利な物品や身体の部位ごとの正しい清拭方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
清拭とは
清拭(せいしき)とは、何らかの理由で入浴やシャワー浴が難しい場合に、入浴の代わりにタオルで身体を拭くことです。介護や看護の現場では、ケガや病気で安静指示がある場合や、入浴により体力が奪われてしまうと考えられる場合に清拭を行います。以下では清拭の目的や効果を詳しく解説します。
清拭の目的
清拭の主な目的は、全身の清潔を保つことと、皮膚トラブルの予防です。
介護や看護の現場では、発熱時や手術後、全身状態が悪く入浴やシャワー浴により体力消耗が考えられる場合に、清拭で全身の清潔を保ちます。家庭でも発熱時など入浴が難しい場合には温かいタオルで身体を拭く場合がありますが、これも清拭です。
清拭は、全身を拭く「全身清拭」と、清拭が必要な部位のみを拭く「部分清拭」に分けられます。
清拭の効果
清拭は身体の清潔を保つ以外にも、以下の効果があります。
- 全身の血行を促す
- 不快感を取り除き、爽快感を得られる
- 温かいタオルでの清拭で、リラックス効果が得られる
- 介護者や看護者にとっては、皮膚状態を観察する機会にもなる
- 清拭と一緒に腹部マッサージも取り入れると、腸の動きが良くなる
清拭を取り入れる際は上記の効果を念頭におき、必要に応じてマッサージを取り入れるなど臨機応変に行うと良いでしょう。
清拭で使用するもの
清拭を行う際には、必要な物品とあると便利な物品があります。病院や介護施設では物品が揃っている場合も多いですが、家庭ではできるだけ少ない物品で効率的に清拭を実施したいものです。以下で解説する物品を参考に準備してください。
清拭に必要なもの
清拭を行う際に必要な物品は、以下のとおりです。
- 清拭用タオル(3~4枚あると良い)
- タオルをあらかじめ温めていない場合はお湯
- 介護用手袋
- 陰部洗浄に使うもの(陰部洗浄用ボトル、便器やオムツ、石鹸)
これらの物品は、清拭を行ううえで欠かせないアイテムです。介護用手袋や陰部洗浄用ボトルなどは、どこで購入すべきか悩んでしまうかもしれません。介護用品を扱うドラッグストアなどが近くにない場合は、オンラインストアを利用すると良いでしょう。
清拭にあると便利なもの
ここからは、清拭時に準備しておくと更にスムーズに実施できる物品を解説します。
あると便利な物品 | 用途 |
---|---|
ウェットシート |
|
ドライタオル・バスタオル |
|
着替え |
|
保湿剤 |
|
沐浴剤 |
|
爪切り・髭剃り |
|
これらの物品を取り入れると、手軽に素早く清拭を実施できます。しかし、清拭以外のドライシャンプーや整容を行う場合は時間がかかるため、患者や利用者の疲労度によっては身体に負担をかけてしまいます。
そのため、時間や日にちを別にして取り入れるなど、患者や利用者の全身状態を考慮して行いましょう。
清拭の事前準備
清拭の物品を準備したら、次は患者や利用者の準備をします。
清拭を始める前に、患者や利用者に排泄を済ませてもらいましょう。そして、清拭中は肌を露出するため寒気を感じやすいことから、室温を23~25℃に設定します。
また、カーテンや窓、ドアは閉めます。すきま風を防いで寒気を予防するだけでなく、プライバシーにも配慮するためです。そのほか、ベッドの上にケガの原因になるものがないかもチェックしましょう。
清拭の手順
清拭の基本的な手順は以下のとおりです。
- 清拭しやすい体勢に体位変換する
- タオルを重ねて手に巻き、患者や利用者の皮膚からタオルが離れないように拭く
- 濡れたタオルで拭いたあとは、すぐに乾いたタオルで水分を拭き取る
- 拭かない部位はバスタオルで隠しながら行う(寒さ対策、羞恥心対策のため)
- 患者や利用者とコミュニケーションを図りながら、状態を常に観察して行う
ほかにも、清拭を行う順番や拭き取る方向など抑えておくべきポイントがあるので、以下で詳しく解説します。
上半身から下半身の順で行う
清拭は基本的に、上半身から下半身を実施します。汚れの少ない部位から順に拭くことを意識しましょう。
上半身では、まず顔を一番に拭き、その後首や腕、手、胸腹部、背部の順に上から下に向かって拭きます。下半身は腰から大腿部、下腿部、足の指、陰部、臀部の順です。臀部は汚れが多い部位であるため、必ず陰部のあとに洗浄します。
末端から中心に向かって行う
清拭の基本的な拭き方は、「末梢から中枢に向かって拭く」ことです。外側から内側へ拭くよう意識すると良いでしょう。
末梢から中枢に向かって拭くのは、血液循環を促すためです。また、末梢から中枢に向かって拭くほうが患者や利用者がより心地良いと感じるといわれています。清拭によって血液循環が促され皮膚が温かくなると、そのとき得た温かさは一定時間保たれます。
清拭の方法
清拭の基本は、一度拭いたタオルの面は使用せず、折り畳んで新しい面を出してから次の部位を拭くことです。汚れを適切に落とし、患者や利用者に爽快感を得てもらうためにも、正しい方法で清拭を取り入れましょう。この項目では部位ごとの正しい拭き方を解説します。
顔回り(顔・耳)
顔は顔専用のタオルを用意します。顔を拭いたタオルで首まで拭いても良いですが、この場合は顔→耳→首の順で拭きます。
目は目頭から目じりに沿って、力を入れずに優しく拭きます。目やにのような汚れが固まっている場合には無理矢理拭かず、温タオルで温めてから拭きましょう。一度で汚れを完全に落とせなくても問題ありません。
前額部は額中心から外側に向かって、頬は口元付近から頬骨付近に向かって下から上に、鼻は上から下に向かって拭きます。顎から首は首のしわを伸ばしながら横に向かって拭きましょう。また、耳のなかや後ろは汚れが溜まりやすい部位です。丁寧に拭きましょう。
なお、身体の清拭は難しいものの、顔の清拭は自分でできる場合、患者や利用者にタオルを渡して自分で行ってもらう方法もあります。
手指・腕
「清拭の手順」で解説したように、末梢から中枢を意識して、手首から肘、肘関節からわきの下に向かって拭きましょう。このとき、肩も忘れずに拭きます。
わきの下や肘関節の内側、指のあいだは汚れが溜まりやすい部位なので、しっかりと丁寧に拭きましょう。
胸腹部
まず、胸部は鎖骨に沿って内側から外側に向かって拭きます。女性の場合、乳房は円を描くように拭きましょう。
腹部はへそを中心に、時計周りに「の」の字を描くように拭きます。時計回りに拭くと腸の走行に沿って拭くことになり、腸の動きを促して便秘改善にも繋がります。女性では乳房の下、腰が曲がっている場合は腹部に汚れが溜まりやすいため、しっかりチェックしてください。
大腿部や下腿部、足の指
膝から下を拭く場合は、ひざを立てた状態で行うと拭きやすくなります。足首から太もも、くるぶし、かかと、足の裏や指のあいだの順に拭きましょう。
足の指のあいだやひざの裏は汚れが溜まりやすい部位であるため、しっかりチェックしてください。また、かかとは寝ている時間が多い場合には褥瘡(とこずれ)ができやすいため、あわせてチェックします。
背部・臀部
背部は、患者や利用者の左右どちらかを下にして横向きの姿勢にします。そして、腰から肩甲骨に向かって、少し力を入れて拭きましょう。このとき、患者や利用者に力加減を確認しながら行います。
背部の清拭は少し力を入れると血行が促され、爽快感を得られやすくなります。しかし皮膚が脆弱化している状態では注意が必要です。
お尻は円を描くように拭きますが、肛門まで拭かないようにしましょう。
陰部・肛門
陰部や肛門はデリケートな部分であることから、可能であれば患者や利用者に拭いてもらいます。トイレ移動が可能な場合には、トイレの温水洗浄便座を使った洗浄を行う場合もあります。
清拭をする場合には、新しいタオルを用意して、陰部から肛門の順に拭きましょう。このとき、肛門部を拭いたタオルで、再び陰部を拭いてはいけません。
男性は陰茎付近のしわ、女性は大陰唇や小陰唇に汚れが溜まりやすいため、丁寧に拭いてください。
清拭の注意点
清拭を行う際は、まず患者や利用者の健康状態をチェックします。バイタルサインを測定し、清拭できる状態であることを確認してから実施しましょう。そのほかに、清拭を行う際は以下の点にも注意してください。
プライバシーに配慮する
清拭は身体の清潔を保ち爽快感を得てもらう援助であるものの、身体の露出を伴うことから、患者や利用者は羞恥心を伴う場合があります。そのため、プライバシーには十分配慮し、カーテンやドア、窓を閉めましょう。そして、現在拭いている部位のみ露出し、拭いていない部位はバスタオルや掛けものを掛けるよう配慮します。
患者や利用者の緊張を解くためにも、しっかりコミュニケーションを図りながら行いましょう。
食前食後を避ける
清拭は、基本的に食前食後の30分から1時間を避けて実施します。清拭により皮膚表面の血行が促進されると胃腸の動きが悪くなり、消化不良に繋がるからです。
また、リハビリなどで体力が消耗している時間帯も避けるようにすると良いでしょう。
肌を強くこすらない
清拭時に肌を強くこすると、汚れだけでなく必要な皮脂も取れます。また強くこすりすぎると痛みを感じる場合もあります。好みの力加減には個人差があるため、患者や利用者に都度確認しながら実施しましょう。
また、高齢者では皮膚が脆弱している場合も多いため注意が必要です。優しく拭いたつもりでも剥離する場合があるため、皮膚状態を日々チェックし把握しておきましょう。
水分をしっかり拭き取る
濡れたタオルでの清拭後は、乾いたタオルで水分を拭き取ります。皮膚表面に水分が残っていると水分の温度が低下し、患者や利用者は寒気を感じるからです。また、皮膚表面に水分が残っていると、皮膚を乾燥させる原因にもなります。
身体を冷やさないように配慮する
室温は23~25℃が適温とされていますが、適温には個人差があります。清拭の最中も患者や利用者に室温を確認しながら実施しましょう。
また、清拭には入浴のように保温効果はありません。そのため拭く部位のみ露出し、拭いたあとはすぐに服を着るなど、保温に努めましょう。
まとめ
清拭は身体の清潔を保持する目的があり、血行を促して爽快感を得られるなど、いくつかの効果があります。タオルやお湯があれば簡単な清拭を実施できますが、そのほかの整容用品も準備しておくと清潔ケアが効率的に実施できます。
いくつかの清潔ケアや整容をあわせて行う場合は、患者や利用者に負担がかかりやすいため、状態を常に観察しながら無理のない範囲で実施しましょう。
そして身体の露出を伴うケアであることからプライバシーや保温には配慮し、患者や利用者が爽快感を得られるようにケアを実施してください。
監修者
福島 実氏
2004年より福祉の職に就き現在は主任介護支援専門員として働きながら、一般社団法人みらいどの代表として共生社会を目的に活動しています。その中で私は「正確な情報を迅速に提供(提案)し回答する」という事を常に心がけることがご利用者様との信頼関係を築く第一歩だと感じました。その為には、社会資源の開拓や福祉にとらわれず様々な知識を深め、地域の方々から信頼される法人になれるよう日々、精進しています。
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