更新日:2026年8月17日
会社の防災対策、規模でどう変わる?中小・零細・個人経営の始め方

防災が大事なのはわかるけれど、小さな会社やお店は大企業と同じことは難しいのではないか……そんなふうに感じて、なかなか一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。防災には、会社やお店の規模に合ったそれぞれのやり方があります。この記事では、中小・零細企業や個人経営の方に向けて、限られた予算と人手のなかで、何から始めればよいのかをご紹介します。
防災対策は、会社の規模でやり方が変わる
まず、大前提としてお伝えしておきたいことがあります。それは規模によって防災対策の内容が変わるのではなく、やり方やその優先順位です。どんなに小さな会社やお店でも、「従業員(そして自分自身)の命を守る」という目指すゴールは大企業と変わりません。すべての事業者に共通する、いちばん大切な目的です。ただそこにたどり着くまでの道のりが、規模によって少しずつ違ってくるということです。
大企業には専任(もしくは担当)部署が設けられていて、予算も確保されているケースが多いですが、小規模な会社やお店では総務担当の方が他の仕事と兼任していたり、防災にかけられる予算やスペースが限られていたりするのが現実でしょう。だからこそ小規模な事業者ほどあれもこれもと欲張らず、優先順位をつけることが何より大切になります。「うちにできる範囲で、いちばん効果の高いものから」そんな考え方で進めていけば大丈夫です。
実際、中小企業では防災の備えがまだ十分に進んでいないのが実情です。各種の調査でも、中小企業のBCP(事業継続計画)の策定率は決して高いとはいえない水準にとどまっています。裏を返せば、少し備えておくだけでも、いざというときに大きな差が生まれるということでもあります。
<参照>
東京商工会議所「会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート 2025年調査結果について」
規模別・防災対策の目安
では、規模によって具体的にどう変わるのでしょうか。おおまかな目安を一覧にまとめてみました。自社やお店がどこに当てはまるか、見当をつけながら確認してみてください。
<企業規模別の防災対策目安>
| 規模の目安 | 防災の体制 | まず優先したいこと | コスト感・進め方 |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 専任(または担当)部署・BCP策定 | 全社的なBCP、大規模備蓄、訓練 | 計画的に予算化 |
| 中規模企業 | 防災担当者を配置 | 備蓄+簡易BCP、連絡体制 | 段階的に整備 |
| 小規模・零細企業 | 総務等が兼任 | まず命を守る防災(備蓄・避難・固定) | 少額から優先順位をつけて |
| 個人経営(店舗など) | 経営者本人 | 自分と少人数の安全、初期消火・避難 | 日用品と兼用で無理なく |
大企業や中規模企業では専任の担当者や部署を置き、本格的なBCPの策定や大規模な備蓄まで計画的に進めていくのが一般的です。一方、小規模・零細企業や個人経営では、そこまで手を広げるのは現実的ではありません。だからこそ、小規模な事業者は「まず命を守る、基本の防災」から。少額でできることを優先順位の高いものから一つずつ整えていくのが、いちばん無理のない進め方です。個人経営のお店であればふだん使っている日用品を防災用に兼ねるなど、工夫しだいでコストを抑えることもできます。次の章から、具体的に見ていきましょう。
小さな会社・お店が「まず」やるべき3つのこと

何から手をつければいいのかわからない——そんなときは、まず次の3つに絞って取り組んでみてはいかがでしょうか。あれこれ考えるより、この3つから始めるのが近道です。
1:命を守る最低限の備蓄を揃える
最初に揃えたいのが、水・食料・簡易トイレです。人数分の最低3日分を目安に用意しておきましょう。少人数の会社やお店なら必要な量もその分少なく済み、置き場所にもそれほど困らないはずです。少人数向けのコンパクトな防災備蓄セットを活用するのもまとめて揃えられて便利です。何をどれだけ揃えればよいかは、こちらで詳しくご紹介しています。
2:「倒れない・逃げられる」環境をつくる
次に取り組みたいのが、環境そのものを安全にすることです。特に地震で家具や什器が倒れてくると、大きなけがにつながりかねません。棚やキャビネットを固定金具や耐震ジェルマットで留めておくだけでも、リスクをぐっと下げられます。
あわせていざというときにすぐ逃げられるよう、避難経路に荷物を置かないように気をつけましょう。消火器を使いやすい場所に備えておくことも大切です。これらは比較的少ない費用で始められて、効果の大きい対策です。まずはここから、といえるでしょう。
3:連絡と役割を決めておく
意外と見落とされがちですが、とても大切なのが「決めごと」です。災害が起きたときどうやってお互いの安否を確認するのか、誰が何をするのかなど、あらかじめ決めておきましょう。少人数の会社やお店なら、大がかりなマニュアルは必要ありません。「連絡はこのアプリのグループで」「まずは○○さんが避難誘導」といったように、口頭で共有しておくだけでもいざというときの動きが大きく変わります。小回りが利くのは小さな組織ならではの強みです。ぜひ活かしていきましょう。
個人経営・お店ならではの防災のヒント
個人経営のお店や、数名で切り盛りしている事業所には、その規模ならではの防災の工夫があります。ここでは、そんなヒントをいくつかご紹介します。
まず意識しておきたいのが、お客様の安全です。店舗や飲食店では従業員だけでなく、来店中のお客様の安全にも配慮が求められます。地震や火災が起きたときに、お客様をどう安全に外へ誘導するか、その流れを頭の中だけでもよいのでイメージしておくと安心でしょう。この点についてはこちらで詳しく解説しています。
<参考>
会社の防災どこまでやれば大丈夫?安全配慮義務の範囲をわかりやすく解説
もう一つ考えておきたいのが、「もし営業を止めることになったら、どうやって再開するか」という視点です。大げさなBCPを作る必要はありませんが、「これだけは早く復旧させたい」ということを自分の中で決めておくだけでも、いざというときの立ち直りが早くなります。いわば小さなお店のためのミニBCPです。また防災グッズは、ふだんの日用品やお店の在庫と兼用するのが賢いやり方です。飲料水や食品などを少し多めに買っておき、使った分を買い足していく「ローリングストック」という考え方なら、無駄なく備えられて経済的でしょう。
<参考>
食べて、使って、また買い足す。無理なく続く職場のローリングストック入門
そして、ひとりで抱え込まないことも大切です。近隣のお店や商店街、地域の人たちといざというときに助け合える関係を築いておくととても心強いです。自分たちを守る「自助」に加えて、地域で支え合う「共助」の視点も、ぜひ大切にしてください。
小規模事業者が使える公的支援・制度

防災対策を進めるうえで予算も人手も厳しいと感じている方に、ぜひ知っておいていただきたいのが、公的支援を活用するという選択肢です。小規模な事業者を支えてくれる支援や制度が、いくつも用意されています。代表的なのが、中小企業庁の「事業継続力強化計画」認定制度です。これは、防災・減災の事前対策に関する計画を国が認定してくれるもので、取り組みやすいBCPとも位置づけられています。認定を受けると税制の優遇や金融支援、補助金の加点といったメリットも受けられます。専門的な計画をゼロから作るのはむずかしそう、という場合の入口としておすすめです。
特に小規模事業者の方には、身近な相談先として商工会や商工会議所があります。これらの団体は、市町村と連携して小規模事業者の防災の取り組みを支援する仕組み(事業継続力強化支援計画)を整えており、気軽に相談に乗ってくれます。また、災害で被害を受けた際には「小規模事業者持続化補助金」の災害支援枠といった補助金が用意されることもあり、こうした制度は個人事業主も対象になり得ます。
何から相談すればいいかわからないというときは、まず地元の商工会・商工会議所の窓口をたずねてみるとよいでしょう。制度の内容は変わることもありますので、最新の情報は各機関の公式サイトや窓口で確認してみてください。BCPそのものの作り方については、こちらも参考になります。
<参照>
中小企業庁「事業継続力強化計画」
よくある質問(FAQ)

Q1. 従業員が数名の会社でも、防災対策は必要ですか?
A. はい、規模の大小にかかわらず必要です。従業員を雇っている以上、その命を守る配慮はどんなに小さな会社にも求められます。むしろ少人数だからこそ、ひとりが動けなくなると事業への影響が大きくなりがちです。まずは水・食料・簡易トイレといった基本の備蓄から、無理のない範囲で始めていきましょう。
Q2. 予算をあまりかけずに防災を始めるには?
A. まずは少額で効果の高いものから取り組むのがおすすめです。什器の転倒防止グッズや消火器などは、比較的低コストで大きな効果が期待できます。また飲料水や食品は日用品と兼用してローリングストックで備えれば、防災のための出費を最小限に抑えられます。日常の延長で備えるのが、コストを抑えるコツです。
Q3. 個人経営でも、BCPのようなものは作ったほうがいいですか?
A. 本格的なBCPでなくてかまいませんが、「もしのときにどう立て直すか」を少しでも考えておくことをおすすめします。「これだけは早く再開したい」という優先順位を決めておくだけでも、いざというときの復旧がスムーズになります。より本格的に取り組みたい場合は、商工会・商工会議所に相談すると、支援制度を案内してもらえるでしょう。
まとめ
防災において、目指すゴールは会社の規模で変わりません。変わるのは、そこへ向かうやり方と優先順位です。大企業と同じことをする必要はまったくなく、小さな会社やお店にはその規模に合った防災のやり方があります。まずは、命を守る最低限の備蓄、倒れない・逃げられる環境づくり、そして連絡と役割の取り決め——この3つから始めてみてください。日用品との兼用や公的支援も上手に頼りながら、無理なく続けていけば大丈夫です。できることから一歩ずつが、なによりの近道です。















