更新日:2026年2月26日
インバウンド(外国人観光客)対策強化に使用可能な補助金について解説

訪日外国人観光客の増加に伴い、インバウンド対策の重要性がますます高まっています。国や自治体では、多言語対応や受入環境の整備、人材育成、オーバーツーリズム対策など、さまざまな分野で補助金制度の拡充も進められています。
本記事では、観光庁や自治体の最新補助制度の内容と申請のポイント、実際の活用事例まで詳しく解説します。
※本記事で紹介する補助金の一部は、公募が終了している場合があります。最新の募集状況は各自治体・省庁の公式サイトをご確認ください。
【観光庁】インバウンド対応に使える補助金

観光庁は、訪日外国人観光客の受入拡大と地域振興を目的として、施設やサービスの環境整備、新規観光コンテンツの開発、人材育成など多岐にわたる補助事業を展開しています。
ここでは、観光庁がインバウンド対策向けに実施している主な事業を見ていきましょう。
インバウンド受入環境整備高度化事業
インバウンド受入環境整備高度化事業は、訪日外国人観光客の利便性向上を目的として、多言語サイン、キャッシュレス決済、バリアフリー化などに活用できる補助制度です。
補助率は1/2以内で、設備導入費や改修費が対象となります。観光地の受入品質を底上げする制度として位置づけられており、申請期間も決まっているため、活用を検討する場合は早めの情報収集が必要です。
地域観光魅力向上事業
地域観光魅力向上事業は、地域の観光資源を活かした新たな体験プログラムの開発や観光施設のリニューアル、PR強化など、地域の魅力を高める取り組みを支援する補助金です。地域独自の強みを活かした企画が重視され、観光消費の拡大や中長期に販売可能な事業が対象となります。
地方公共団体や民間業者、DMO(Destination Management / Marketing Organization:観光づくり法人)が対象です。
<参照>
観光庁 地域観光魅力向上事業
観光地・観光産業における人材不足対策事業
観光地・観光産業における人材不足対策事業は、宿泊業を中心に深刻化する人手不足に対応するため、設備投資による作業効率化や人材育成の取り組みを支援する制度です。自動チェックイン機器や予約管理システム、配膳ロボットなどの効率化機器の導入、AIやデジタル技術を活用した配置最適化の仕組みづくりなどに活用できます。
宿泊サービスの質を維持するための環境整備に重点が置かれており、採択されると上限500万円、補助率1/2の補助金を受けられます。
オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業
オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業は、観光地の混雑や環境負荷の増加を抑え、地域住民と旅行者が共存できる観光地運営を目指す制度です。
混雑状況を可視化するデジタルツールの導入、受入導線の見直し、パークアンドライド整備、周遊バスの実証運行など、多様な施策が対象になります。観光需要の集中によって生じる課題を早期に解決し、持続可能な観光モデルの構築を目指す地方公共団体やDMO、民間事業者に適した制度です。
各自治体によるインバウンド対策補助金の例

都道府県や市区町村でも、インバウンド対策として独自の支援制度が設けられています。自治体によって制度の内容や募集要項、対象などは異なるため、活用する際には対象となる自治体の最新情報の確認が必要です。
ここでは東京都や大阪府など、いくつかの自治体のインバウンド対策を例として紹介します。
【東京都】インバウンド対応力強化支援補助金
東京都のインバウンド対応力強化支援補助金は、都内の宿泊施設、飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設(中小企業のみ)などを対象に、外国人旅行者の受入環境の質を高める取り組みを支援する制度です。
トイレの多機能化、多言語対応、キャッシュレス決済の導入、公衆無線LAN整備、ベジタリアン・ムスリム対応など幅広い事業に利用できます。都市部ならではの多様なニーズに応え、インバウンドの利便性向上やサービス品質の底上げにつなげることが可能です。
【大阪府】宿泊施設の環境整備促進事業
宿泊施設の環境整備促進事業は、府内の宿泊事業者を対象に実施している支援制度です。多言語案内の整備や設備改修など、インバウンドが利用しやすい環境づくりに向けた費用に充てられます。
国際観光都市としての受入基盤を強化するとともに、地域の宿泊事業者が継続的にサービス改善を進めるための支援策として位置づけられているのです。
【弘前市】インバウンド対応強化事業費補助金
弘前市では、インバウンドの利便性向上や観光消費額の増加を目指す取り組みを支援しています。インバウンド対応強化事業費補助金は受入環境整備から誘客促進まで幅広い事業が対象で、地域資源を生かした観光地づくりを進めたい事業者に適した制度です。
電子決済システム導入や多言語翻訳機の導入といったインバウンド受入環境整備事業のほか、旅行代理店などへの訪問、観光コンテンツの開発など誘客促進事業などに利用できます。
<参照>
弘前市 外国人観光客の受入環境整備や誘客促進に関する補助金のご案内【令和7年度 インバウンド対応強化事業費補助金】
【上越市】インバウンド推進事業補助金
上越市のインバウンド推進事業補助金は、外国人観光客の誘客や受入態勢の整備を支援する制度です。
対象となる経費は、ホームページやパンフレット、看板などの外国語翻訳料、多言語翻訳機の導入、インバウンド誘致のための営業活動に関係する交通費などがあります。
【仙台市】宿泊促進・滞在延長に繋がるコンテンツ創出事業補助金
仙台市が実施する補助金で、インバウンドの宿泊促進事業や観光消費の拡大につながる滞在延長事業を支援する制度です。
観光コンテンツの企画や備品の導入、アドバイザーへの委託料などが対象となり、地域らしさを活かしたコンテンツを育てることが目的とされています。仙台市内の魅力を深く知り、滞在を楽しんでもらうための事業づくりに活用可能です。
【その他】インバウンド対策強化にも使用できる補助金の例

インバウンド向けの制度でなくても、設備投資やITツールの導入、販路開拓を目的とした補助金を活用することでサービス向上につなげられる場合があります。ここでは代表的な制度を取り上げ、インバウンド対策としてどのように応用できるのかを見ていきましょう。
なお、制度ごとに公募要項や申請要件が異なるため、最新の募集情報は公式ページで確認してください。
ものづくり補助金(グローバル枠)
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業の生産性向上や新製品・新サービス開発を支援する国の補助制度です。主な区分は「高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2種類で、事業内容に応じて申請類型を選択する仕組みとなっています。ただし、区分は募集のタイミングによって変わるため、最新の公募要項の確認をすることが重要です。
グローバル枠では、インバウンド向けサービスの強化を視野に入れた取り組みなどが対象となります。具体的には、インバウンド需要の獲得を目的としたサービス開発や商品改良、海外市場展開に向けた設備投資などが対象に含まれます。
過去には、伝統工芸を活かしたインテリア雑貨のグローバル展開や、中華圏のインバウンド向けの式場マッチングシステムなどの採択例があります。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が業務効率化や生産性向上を目的にITツールを導入する際に利用できる制度です。対象となるソフトウェアは、会計・予約管理・受付システムなど、事業運営に必要なものが対象で補助枠は機能や導入目的・申請方式に応じて区分されています。
インバウンド対策の観点では、多言語対応の予約システムや、キャッシュレス決済端末の導入といった取り組みが具体的な例です。ただし、PC・タブレットなどのハードウェアは特定枠(インボイス枠など)のみ補助対象となるため、公式要項で区分を確認する必要があります。
インバウンドの利便性を高めるための仕組みづくりに活用でき、特に宿泊業や飲食業では導入効果が大きい制度です。
<参照>
IT導入補助金2026
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務改善を支援する制度です。チラシやWEBサイト制作、店舗改装、設備導入まで幅広い経費が対象となります。
商店、飲食店、宿泊施設など、インバウンド需要と日常的に接する業種でも活用事例が多く、多言語対応WEBサイト制作、外国語表示メニュー、店舗改装、SNS広告など、受入環境の改善や訪日外国人向けプロモーションにも活用されています。
小規模店舗や個人事業者でも利用しやすく、地域の魅力発信や観光消費拡大などにも適した制度です。申請に際しては、地域の商工会議所・商工会に相談し、事業計画の策定・確認が欠かせません。
インバウンド急増に伴う課題とは

インバウンドの増加は地方経済の活性化につながる一方で、事業者や観光地の現場には新たな負荷がかかります。特に、人材の確保、多言語対応、決済手段の整備といった分野では、需要に追いつかないケースが増えており、サービス品質を保ちながら受入体制を整えることが大きな課題です。
- 人材不足
- 多言語対応
- キャッシュレス対応
ここでは、この3点について見ていきましょう。
人材不足
インバウンド需要の拡大に伴い、人手不足は宿泊業や飲食業、交通事業者、地域の小売店など多くの分野で深刻化しています。企業がインバウンドの受入れを進めたくても十分な人材を確保できない場合があり、スタッフ一人ひとりの負担が増えることが課題となっています。
業務が逼迫すると、サービス品質の低下につながるおそれがあるほか、労働環境の悪化や、顧客・スタッフ双方の安全管理への影響も懸念されます。そのため、人材確保と業務効率化の両面での対策が重要です。
多言語への対応
インバウンド対応を進めるうえで、多言語で情報を提供できる体制づくりは欠かせません。しかし、語学力を持つスタッフを十分に確保できないケースも多く、担当者に負担が集中することや、対応品質が安定しないといった課題が生じやすくなります。
館内案内やメニュー、Webサイトの多言語化が追いつかない施設もあり、利用者の不安や案内ミスにつながるおそれもあります。そのため、翻訳ツールの導入といった人的リソースに依存しない多言語化を進めることが求められています。
キャッシュレス対応
インバウンドの多くはキャッシュレス決済を前提としている一方、日本では小規模事業者を中心に導入が遅れています。決済手段が限られると購入見送りや他店への流出が起こり、結果として機会損失を招くおそれがあります。しかし、初期費用や手数料を理由に導入をためらう事業者は少なくありません。
また、現金管理はスタッフの負担が大きく、人材不足の現場では作業時間を圧迫されやすいです。キャッシュレス環境を整えることによって、利用者の利便性向上に加え、現場の業務負荷を軽減する効果も期待できます。
まとめ
インバウンド需要の拡大は、受入体制の整備や業務負荷の増加など、事業者が向き合う課題は多岐にわたります。補助金を活用することで、現場に必要な改善策を進めやすくなり、サービス品質の維持・向上にもつなげられるでしょう。
制度の内容や募集条件は公募のタイミングごとに変わる場合があるため、最新の情報を確認しながら、自社に適した支援策を計画することが重要です。
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