更新日:2026年2月26日
HACCP7原則12手順とは?義務化対応への基本ガイド

HACCPの中核となる「7原則12手順」は、食品安全管理の国際基準として確立された体系的なアプローチです。しかし、その具体的な内容や実践方法について正しく理解している担当者は意外に少ないのが現状です。
本記事では、HACCP7原則の具体的な内容から実践的な導入手順まで、食品関連事業者が知っておくべき基本知識を分かりやすく解説します。
HACCP7原則とは?

HACCP(ハサップ)7原則とは、食品の安全性を確保するための以下の7つの原則のことです。
- 危害要因分析の実施
- 重要管理点(CCP)の決定
- 管理基準(CL)の設定
- モニタリング方法の設定
- 改善措置の設定
- 検証方法の設定
- 記録と保存方法の設定
衛生管理は食品製造において最も重要な要素です。万が一、食中毒や有害物質の混入が発生すると、事業継続が難しくなるばかりか、社会的信用を失い消費者の健康や生命を損なうおそれがあります。
HACCP7原則は、食品の安全性を確保するための指針です。目的や構造を理解し、実践していきましょう。
HACCPの定義と目的
HACCPは「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略称で、「ハサップ」と読み、「危害要因分析重要管理点」と訳されます。安全な食品を消費者に提供する目的で、製造工程ごとに危害要因を排除・低減する仕組みとして構築されました。
従来の衛生管理の手法では最終製品の抜き取り検査をすることが多く、全ての製品の安全性は不透明でした。HACCPでは工程ごとに明確な基準を策定し記録も残すため、経験や直感に頼らず、効率的・合理的な衛生管理を実現できます。
7原則12手順の全体構造
HACCP 7原則12手順は、以下をご覧ください。手順1~5はHACCP導入までの準備、手順6~12はHACCP実行の原則です。
| 手順1 HACCPチームの編成 | 調達や製造などの各部門の担当者で編成 |
|---|---|
| 手順2 製品説明書の作成 | 安全管理上の特徴を整理 |
| 手順3 意図する用途及び対象消費者の確認 | 消費者の特性に合った食品管理指針を作成 |
| 手順4 製造工程一覧図の作成 | 工程ごとの危害要因を分析するための準備 |
| 手順5 製造工程一覧図の現場確認 | 工程に間違いや変更がないか確認 |
| 手順6 (原則1)危害要因分析の実施 | 原材料や製造工程ごとに危害要因を列挙 |
| 手順7 (原則2)重要管理点(CCP)の決定 | 安全管理のための重要なポイントを決定 |
| 手順8 (原則3)管理基準(CL)の設定 | 重要管理点の測定値の限界を設定 |
| 手順9 (原則4)モニタリング方法の設定 | 管理基準の設定方法を設定 |
| 手順10 (原則5)改善措置の設定 | 管理基準を満たさなかった場合の対応を設定 |
| 手順11 (原則6)検証方法の設定 | 設定基準が遵守されているか確認 |
| 手順12 (原則7)記録と保存方法の設定 | 記録用紙と保存期間を設定 |
<参照>
厚生労働省「食品製造におけるHACCP入門のための手引書(清涼飲料水編)」
義務化の背景と対象事業者
HACCPは1970年代にアメリカで発案された食品衛生管理の手法です。原材料の調達から加工、保存などの全ての段階における衛生管理のポイントを可視化し、記録するフローを考案しました。その後、HACCPは先進国を中心に多くの国や地域で義務化され、輸出食品の安全管理にも活用されています。
日本では、2021年6月から、全ての食品等事業者においてHACCPの導入・実施が義務化されました。ただし、以下などの小規模事業者については、HACCPの導入ではなく「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」のみ求められます。
小規模事業者の例
- 食品を製造・加工する施設に併設された店舗で食品の全部もしくは大部分を販売する事業者
- 飲食店や喫茶店で食品を調理・販売する事業者
- 容器包装で包まれた食品のみを貯蔵・運搬・販売する事業者
- 食品を分割して容器包装に入れ、あるいは容器包装で包み小売販売する事業者
- 食品等の取り扱いに従事する物が50人未満である事業場
HACCP導入の準備段階|手順1~5の詳細解説

手順1~5はHACCP導入のための準備段階です。丁寧な準備が衛生管理の精度を高めるため、重要度の高いステップです。順に見ていきましょう。
手順1:HACCPチームの編成
HACCPを運用するチームを編成します。チームで食品製造に関する全ての業務を把握するため、仕入れや貯蔵、加工などの実務に精通した人材を選ぶことが必要です。チーム編成後に意見をまとめるリーダーを任命しましょう。
手順2:製品説明書の作成
製品の情報を整理する「製品説明書」を作成します。以下の情報を含めて作成しましょう。
- 製品の名称、種類
- 原材料
- 添加物の名称、使用量
- 製品規格(成分規格)
- 製品の特性、自社基準
なお、原材料に水が含まれる場合は、水道水や井戸水などの区別も記載します。
手順3:意図する用途及び対象消費者の確認
消費者にとって有益な情報として、以下の要素を確認します。
- 保存方法
- 消費期限もしくは賞味期限
- 消費者
製品を使用する消費者が「一般消費者」か「特定の条件を満たす消費者」か明記しておきましょう。
手順4:製造工程一覧図の作成
製造工程をイメージしやすいよう、順に書き出します。例えば、清涼飲料水の場合は次のように記載できるでしょう。
- 受入
- 保管
- 計量
- 調合
- ろ過
- 冷却
- 密栓
- 箱詰
工程ごとに「清潔区域」か「準清潔区域」を記載しておくと、衛生管理に役立ちます。
手順5:製造工程一覧図の現場確認
手順4の工程が正確か、現場で確認してみましょう。従業員の行動を確認するためにも、製造中にチェックしてみてください。順序が異なる場合や異なる工程が存在する場合は、正確に確認した上で一覧図に反映します。
<参照>
厚生労働省「食品製造におけるHACCP入門のための手引書(清涼飲料水編)」
HACCP7原則の具体的な内容|手順6~12の導入方法

HACCPの導入準備完了後、7原則に基づく手順に進みます。いずれの手順も、安全管理を実施する上で欠かせない要素です。順に解説します。
原則1:危害要因分析の実施(手順6)
工程ごとの危害要因をリストアップします。危害要因は健康に悪影響をもたらす原因になるものです。原材料に由来するもの(寄生虫や自然毒など)や工程で発生するもの(異物混入、微生物の発生など)を列挙し、適切な管理手段を書き出します。
管理手段の一つとして、以下のようなアイテムをそろえておくと、各工程の危害要因への対応がスムーズになります。
原則2:重要管理点(CCP)の決定(手順7)
各工程で病原微生物が発生する場合には、いずれかの工程で殺菌・低減される必要があります。以降の工程で殺菌・低減の工程がない場合は、重要管理点(CCP)としてピックアップしておきます。重要管理点は衛生管理として最後の砦となる工程です。
原則3:管理基準(CL)の設定(手順8)
重要管理点における管理基準(CL)を設定します。管理基準とは、安全確保に必要な温度や速度、時間などの数字です。例えば、微生物の除去に炭酸ガスの圧入を実施する場合なら、「圧力22kPa以上」「液温5℃以下」のように具体的な数値を決定しましょう。
原則4:モニタリング方法の設定(手順9)
管理基準に達しているか確認することを「モニタリング」と呼びます。モニタリング方法を設定し、放射温度計や中心温度計などの必要機材を揃えておきましょう。モニタリング方法は誰が・何を・どのようなタイミングで実施するか、具体的に決めることが重要です。
原則5:改善措置の設定(手順10)
設定した管理基準に達しない場合には、問題点を修正・改善する「改善措置」が必要です。例えば、微生物の除去に必要な圧力の基準を満たさなかったときは、「ラインを止めて圧力不足の製品を区分けする」→「区分けした製品を廃棄する」→「原因を特定する」といった改善措置をあらかじめ設定しておきます。
原則6:検証方法の設定(手順11)
手順10までで策定したHACCPプランが適切なものか、検証するための具体的な方法を設定します。検証する頻度や担当者、記録する内容もあらかじめ決めておきましょう。検証時は日頃の作業が手順通りに実施されているか記録を確認します。
原則7:記録と保存方法の設定(手順12)
HACCPでは正確な記録が重要な意味を持ちます。記録方法や記録した文書を保存する方法を設定しておきましょう。例えば、記録用のフォーマットを作成したり、文書を保存するファイルボックスを新しく設定したりできます。
中小企業でHACCPを導入するポイント

厚生労働省では業種別に「HACCP導入のための手引書」を公開しています。該当する業種の手引書を確認し、自社のケースに当てはめて調整すると、抜け漏れの少ないHACCPプランを作成しやすくなります。
2025年現在、食肉製品や大量調理施設など合計11種類の手引書が公開されています。自社に近い業種の手引書を確認し、記入例に沿って進めてみましょう。まずはHACCPの考え方を理解し、管理方法を参考にすることから始めるのがポイントです。
<参照>
厚生労働省「HACCP導入のための手引書」
HACCP7原則導入のメリットと効果

HACCP 7原則を導入することで、以下のようなメリットと効果を得られます。
- 衛生管理の知識・意欲が向上する
- トラブルが起きた場合もすぐに対応できる
- クレーム・ロス率が下がる
それぞれについて見ていきましょう。
衛生管理の知識・意識が向上する
工程ごとに危害要因を洗い出し、管理方法や管理基準などを見直すため、社員の衛生管理の知識が向上します。今までの衛生管理を見直すきっかけになるでしょう。また、毎日衛生管理を実施することにより、食品の安全性に対する意識も向上します。
トラブルが起きた場合もすぐに対応できる
HACCPでは工程ごとに衛生管理を実施するため、万が一トラブルが起こったときも、どの工程に問題があったのかすぐに判明し、改善措置を実施できます。また、迅速にトラブル対応ができるようになることで、通常の業務に復旧するまでの時間を短縮できます。
クレーム・ロス率が下がる
製造工程ごとに安全管理を強化することで、クレームや不良品が減少し、廃棄ロスも少なくなります。また各工程を誰でも同じ水準で作業できるようになり、生産性の向上も期待できます。
HACCPと従来の検査の違い

従来の抜き取り検査では、衛生管理の対象となる製品は全体のごく一部でした。また、検査対象となった製品に問題がない場合はそのまま出荷・販売されるため、衛生面に問題がある製品が出回るリスクがありました。
HACCPは全ての製品を対象とした衛生管理方法で、食品事故を起こさないように事前に危害要因を想定し、対策をしています。また、工程別にチェックするため見落としが少なく、安全上問題がある製品が市場に出回る可能性の低減を図れます。
まとめ
食品製造に関わる全ての事業者は、安全面に十分な注意を払うことが求められます。
HACCPは体系的な衛生管理を実現する手法です。工程ごとに危害要因を洗い出し、適切な検査方法や対策を構築します。安心して食べられる食品を提供するために、また、取引先や消費者からの信頼を獲得するためにも、HACCPを導入・実施していきましょう。


















