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更新日:2026年4月13日

年金制度改正2025|企業が対応すべきポイントを分かりやすく解説(人事・労務向け)

3Dの「年金」文字と年金手帳とお金
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少子高齢化や働き方の多様化にあわせ、持続可能な社会保障制度を構築するため、日本の年金制度は転換期を迎えます。企業の人事・労務担当者は、法改正内容を正しく理解し、就業規則改定や従業員への周知など、適切な対応を進めなくてはなりません。

本記事では、2025年成立の改正法の全体像や、項目ごとの具体的な改正内容、企業実務への影響と対策を解説します。

年金制度改正とは?2025年成立の改正法の全体像

年金手帳と国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書

2025年5月16日、年金制度の見直し法案が国会に提出され、6月13日には年金制度改正法が成立しました。年金制度は、社会状況にあわせて改正されます。ここでは、年金制度改正の背景や全体像について解説します。

年金制度改正法の成立と背景

近年、少子高齢化による労働人口の減少により、現状の年金制度の維持は難しくなってきました。現役世代と高齢者のバランスを見直し、負担を公平に分かち合う仕組みが求められています。

また、パートやフリーランスなど働き方が多様化しており、これまでの制度では対応しきれずに保障が手薄となる「制度の谷間」も生まれています。長く働いても年金が減額される仕組みや、家族構成による給付格差もあり、実態に見合った保障の構築が必要です。

多様な働き方に対応し、長期的な就労が報われる納得感のある制度への転換が、今回の改正の目的です。

改正項目の全体像とは

今回の改正は、すでに法律として確定している事項と今後検討が続く課題に分類されます。2025年6月の成立により確定した項目は、以下の通りです。

  • 社会保険106万円の壁の実質的な撤廃
  • 社会保険の適用拡大における企業規模要件の段階的な撤廃
  • 在職老齢年金の減額基準の緩和
  • 厚生年金保険料の上限引き上げ
  • iDeCoや企業型DCなど私的年金制度の拡充
  • 遺族厚生年金制度における男女格差の是正

一方、国民年金の給付水準底上げや、第3号被保険者制度の見直しについては、引き続き検討課題とされています。企業実務においては、確定した項目への対応を優先的に進めましょう。

社会保険加入対象の拡大

デスクに置かれた「社会保険」の文字ブロック

社会保険加入対象の拡大により、厚生年金の加入範囲も広がります。ここでは、具体的な改正内容と企業側の実務影響と対応、働く個人への影響について解説します。

現行制度と改正内容

短時間労働者の社会保険適用範囲は、今後10年間で段階的に拡大されることになりました。現行制度では、従業員数51人以上の企業で以下の要件を満たす場合は、社会保険の加入が義務付けられています。

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること
  • 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
  • 2か月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

改正後は、企業規模要件が以下のように段階的に撤廃され、最終的には全ての企業で社会保険への加入が必要です。

  • 2027年10月:36人以上
  • 2029年:21人以上
  • 2032年:11人以上
  • 2035年:10人以下

また、最低賃金の上昇により、週20時間勤務であれば賃金要件を上回るケースが一般的となり、要件自体が形骸化しています。そのため「月額賃金8.8万円以上」の要件も撤廃される予定です。この「106万円の壁」の解消は、全国の最低賃金引き上げ状況を考慮しつつ、公布から3年以内に実施される見通しです。

<参照>
厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について

企業側の実務影響と対応

企業規模要件の撤廃により、これまで適用外とされていた中小企業や個人事業所も、社会保険の加入義務が生じます。特に2029年10月以降は、従業員5人以上の個人事業所も全業種で適用対象となる見込みです。

短時間労働者を多く雇用するサービス業などでは、新たな保険料負担が発生し、人件費管理や就業規則の見直しが避けられません。対象となる時期を正確に把握し、経営計画に織り込む必要があります。

自社の該当時期を確認し、従業員への周知や保険料負担を見越した人件費の再設計を進めましょう。

働く個人への影響

社会保険への加入は、短期的には手取り額の減少につながりますが、長期的には多くのメリットをもたらします。厚生年金への加入により将来の年金受給額が増加するほか、傷病手当金や出産手当金の受給が可能になり、現役期間の保障が厚くなります。

また、扶養範囲内にとどまる働き方から、キャリア形成を重視した働き方へ転換するきっかけにもなるでしょう。収入の壁を気にせず働く時間を増やすことで、世帯全体の収入増も見込めます。

なお、社会保険に加入することになったパートタイム労働者に対して、国は手取り減少を緩和するための支援策を講じる方針を示しています。しかし、これは制度変更に伴う負担増を和らげるための期間限定の経過措置であり、将来にわたって継続される恒久的な支援ではありません。支援終了後は、保険料負担がそのまま家計に影響することになります。
そのため、企業側としても、目先の手取り減少だけでなく、将来的な保障やキャリアアップの可能性といった中長期的なメリットを丁寧に説明し、従業員の理解と不安の解消につなげていくことが重要です。

在職老齢年金制度の見直し

年金手帳と電卓とお金

在職老齢年金とは、年金の受給対象者に対し、賃金(給与+賞与)と年金の合計額が一定基準を超えた場合に、年金の一部または全額を減額(支給停止)する仕組みです。現行では賃金と厚生年金の合計が月50万円(2024年度の場合)を超えると、超えた分の半額が支給停止となっています。

2026年4月以降は、高齢者の就労意欲を阻害しないよう、62万円が減額されるかどうかの基準ライン(支給停止調整額)となります。なお62万円は2024年度の場合の金額で、賃金変動に応じて毎年度改定される予定です。

在職老齢年金制度の改正ポイント

年金局の調査によると、65歳から69歳の約6割が66歳以降まで働き続けたいと回答しています。しかし、3割以上が年金額が減らないよう就業時間を調整しているのが実情です。人手不足の中で高齢者の活躍が期待される一方、現行制度が就労の抑制要因となっていました。

この課題を解消するため、支給停止調整額が現行の月額50万円から引き上げられることになりました。支給停止調整額は、名目賃金の変動に応じて毎年度改定されます。

これにより、従来は年金の一部が停止されていた層も、満額受給しながら働ける可能性が高まります。

<参照>
厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて

企業・個人の対応ポイント

基準額の引き上げは、高齢社員の働き方を見直すよい機会です。これまで年金減額を避けるために就業調整していた社員に対し、フルタイム勤務や責任あるポストへの復帰を提案しやすくなります。

希望する人材を確保するためには、改正内容を反映した柔軟な制度設計が欠かせません。企業は定年再雇用制度や嘱託規定を確認し、報酬設計や勤務時間の選択肢を再考する必要があります。

年金と給与の関係は複雑なため、誤解を招かないためにも、従業員に対し丁寧な説明が必要です。以下のような対策を講じましょう。

  • 制度改正の概要資料を作成する
  • 社労士等と連携し個別相談の場を設ける
  • 社内ポータルでFAQを公開する

会社が正しい情報を提供し、高齢社員が安心して能力を発揮できる環境を整えることが重要です。

遺族年金等の見直しと標準報酬の上限引上げ

「遺族年金」の文字ブロックと思案する男性

遺族年金とは、国民年金や厚生年金の加入者(被保険者)が亡くなった際に、その人の収入によって生計を維持していた遺族が受け取れる公的年金制度です。

遺族年金制度の見直し

遺族厚生年金は、男女差を解消し、生活再建を支援する制度へと変わります。重要な変更点は、性別問わず原則5年間の有期給付となることです。現行制度では対象外となっている60歳未満の男性も受給できる一方、子のいない60歳未満の配偶者への給付は5年間に限定されます。60歳以上の場合は無期給付です。

給付期間中は受給額が増額され、当面の生活基盤確保が重視されます。また、所得制限が撤廃され、配偶者の死亡時に自身の老齢厚生年金へ記録を上乗せする「死亡分割」が導入されることになりました。

なお、有期給付が終了した場合でも、遺族厚生年金が直ちに打ち切られるわけではありません。就労収入が少ない場合は、5年経過後も継続して支給されます。この改正は、2028年4月以降に順次施行される予定です。

<参照>
厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて

改正項目の趣旨と影響

今回の改正は、共働き世帯の増加という社会変化に対応するものです。かつては「夫が働き、妻が専業主婦」というモデルが主流でしたが、現在は女性の就業率が向上しています。

そのため、配偶者を亡くしたあとも自立して生活できる支援へと舵を切りました。ただし、以下の方は遺族年金改正の対象外です。

  • 現時点で遺族厚生年金を受給している
  • 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する
  • 18歳年度末までの子がいる
  • 2028年度に40歳以上になる女性

今後は公的年金に頼るだけでなく、共働きによるリスク分散やNISA・iDeCoなどの資産形成、民間保険の活用など、自助努力による備えも重要です。

私的年金制度(企業年金・iDeCo等)の改正

「iDeCo」の木のブロックと年金手帳とお札

私的年金制度とは、国民年金や厚生年金などの国が運営する公的年金とは異なり、企業や個人が任意で加入し、上乗せして積み立てる年金制度のことです。私的年金には企業年金と個人年金があり、それぞれ以下のような種類があります。

企業年金
  • 企業型確定拠出年金(DC)
  • 確定給付企業年金(DB)
  • 厚生年金基金
個人年金
  • 個人型確定拠出年金(iDeCo)
  • 国民年金基金
  • 個人年金保険

企業型DCやiDeCoは運用成績によって受け取れる金額が変動するため、受け取り額が掛金元本を下回るリスクがあります。DBは、あらかじめ給付額が決まっているため、リスクを抑えられます。今回の改正では、iDeCo加入年齢や拠出限度額が見直されました。

iDeCo加入年齢・拠出限度額の見直し

2025年度の税制改正により、iDeCoの加入可能年齢が70歳未満まで引き上げられます。これにより、60代でもiDeCoを通じて老後資金の形成が可能になりました。掛金の拠出限度額も以下のように増額されます。

保険者の区分現行(月額)改正後(月額)
第1号被保険者
(フリーランスなど)
6.8万円7.5万円
第2号被保険者
(企業年金加入の会社員)
2万円6.2万円
(iDeCoと企業型DCの合計)
第2号被保険者
(企業年金未加入の会社員)
2.3万円6.2万円

第3号被保険者にあたる専業主婦(夫)には変更がありません。企業年金に加入している会社員の場合、iDeCoと企業型DCの合算枠が拡大され、月額最大6.2万円まで拠出可能となる見込みです。

企業型DCに加えて、従業員自身が掛金を追加できる「マッチング拠出」の上限規制も撤廃されるため、従業員は自身の判断で、より多くの資金を老後への備えに回せるようになります。

<参照>
金融庁「令和7(2025)年度税制改正について
iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等
厚生労働省「令和7年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)

企業年金の運用・開示制度の見直し

加入者の利益を守るため、企業年金の運用状況に関する「見える化」が進められます。これまで企業年金の運用情報は一般に公開されていませんでした。しかし、今後は厚生労働省が情報を集約し公表する仕組みが導入されます。

他社の運用実績との比較が可能になるため、企業には運用の質やガバナンスの向上が求められるでしょう。企業年金の運用状況に関する「見える化」は、2027年度中(令和9年度中)の本格実施を目指して進められています。

企業は情報開示体制を整備するとともに、従業員に対する投資教育や情報提供を強化することが必要です。

年金制度改正に備えた対応とは

「年金制度」の文字ブロックと思案する男性

年金制度改正法は、2026年以降に順次施行されます。施行されれば、従業員の働き方や企業の採用戦略に直接影響を与えるでしょう。ここでは、企業が年金制度改正に備えるべき実務対応について解説します。

就業規則・制度整備の見直し項目

2026年からの順次施行に向け、企業は採用戦略や雇用管理のルールを見直さなければなりません。社会保険の適用拡大により、パートやアルバイトの加入者が増加します。保険料の増加により、既存の人員配置やシフト体制では経営負担が大きくなる恐れがあります。

人件費の負担をシミュレーションした上で、勤務シフトの見直しや、業務委託・シニア人材の活用など、柔軟な雇用モデルの検討が必要です。

また、在職老齢年金の基準緩和にあわせ、高齢社員の賃金規定や再雇用契約の内容も更新する必要があります。既存の就業規則や賃金規程が新制度に適合しているか確認し、必要に応じて改定作業を進めましょう。対象社員と個別面談を実施し、就労意欲を維持しながら勤務条件を決定することが大切です。

システム・社内教育の準備

複雑化する手続きに対応するためには、労務管理システムの改修や社内教育が必要です。社会保険の加入判定や対象範囲が変わるため、給与計算システムや勤怠管理システムをアップデートしなければなりません。人事や給与システムを利用している場合は、システムのベンダーへ対応状況を早めに確認し、改修計画を立てましょう。

また、現場の管理職や労務担当者が改正内容を正しく理解していない場合、手続きミスや従業員とのトラブルにつながりかねません。管理職や現場担当者へ向けた社内研修を実施し、改正のポイントや実務フローを周知徹底することにより、混乱のない移行を目指しましょう。

年金制度改正に関するよくある質問

「FAQ」の文字オブジェを並べる様子

年金制度改正について、一般的に聞かれる質問をまとめました。

2025年の年金制度改正で企業が必ず対応しなければいけないことは?

2025年の年金制度改正へ向けて、企業がやるべき対応は以下の通りです。

  • 65歳以降の再雇用契約や賃金設計の見直し
  • 社会保険適用拡大に伴う対象者の把握と人件費試算
  • 社内規定の整備
  • 従業員への説明会実施や相談窓口の設置

65歳以降の雇用契約の見直しや、パート・アルバイトのシフト調整が必要です。自社のパート・アルバイト従業員の働き方を把握し、新たな加入対象者を特定しておきましょう。その上で、人件費の増加額を試算し、予算計画や採用戦略に反映する必要があります。

あわせて、就業規則の変更箇所を洗い出し、改定準備を進めることが重要です。従業員への制度周知も欠かせません。

パート・短時間労働者への影響は?

週20時間以上働く場合、企業規模にかかわらず社会保険への加入が必要になる方向です。保険料の天引きにより手取り額は減少しますが、将来受給する年金額が増え、傷病手当金や出産手当金などの保障も手厚くなります。

年金制度改正に備えて準備しておくことは?

年金制度改正に備え、以下の準備を進めましょう。

  • 社会保険加入条件の更新
  • 在職老齢年金への対応フローの構築
  • 年金関連手続きの社内ルール化
  • 給与や勤怠システムの改修
  • 管理職や現場担当者への研修

各変更項目への対応フローを構築しておく必要があります。各システムの改修や担当者への教育も事前に進めておきましょう。

まとめ

2025年の年金制度改正は、個人だけでなく企業の労務管理やコスト構造に多大な影響を与えます。社会保険の適用拡大や在職老齢年金の見直しは、人件費の増加要因となる恐れもありますが、シニア人材や短時間労働者の活躍を促進するチャンスでもあります。

企業は制度の趣旨を理解し、早期に社内規定やシステムの整備を進めなければなりません。従業員に対して制度のメリットやデメリットを丁寧に説明し、納得感をもって働ける環境を整えることも大切です。制度改正を前向きな変化と捉え、戦略的な人事施策を実行しましょう。

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